異世界ダンジョンの地下第7階層には行列のできるラーメン屋がある

セントクリストファー・マリア

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ダンジョンマスター 聖龍

ラーメン試食会

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毎月恒例となった新作ラーメン試食会。
聖龍軒本店は本日営業のため、本店の二人は欠席した。また、ギルドダルゴニア支所長のセシルも、本所での仕事があり欠席。我とニャティリ、イリス、マリアの四人で、試食会をすることとなった。

ギルドダルゴニア支店は、セシル不在でも通常営業しているため、聖龍軒ダルゴニア支店がある地下第7階層のセーフティエリアには何人かの冒険者が来ていた。しかしながら、試食会に参加する4人以外は結界魔術によって聖龍軒の部分に壁が見えるようになっているので、冒険者の乱入を心配する必要はなかった。
そのような訳で、おいそれと人前に姿を現してはならない我も参加することができるのだ。新作ラーメン試食会は、我がラーメンを食べることのできる月に一度の貴重な一日であり、我が人間たちと変に気を遣わずコミュニケーションが取れる大事な機会だった。

「それで、今回はどんなラーメンなのだ?」

部屋に入った瞬間に、ツンと鼻につくような獣臭が漂ってきていた。明らかに今までのラーメンとは異なる匂いだ。

「豚骨ラーメンよ。本店では出していないのだけれど、わたしがラーメン研究していたらタイショーが試しに作ってくれてね、これが美味しくって」

スープは純粋に豚骨のみを使って煮出したスープなのだそうだ。これに「かえし」と呼ばれるラーメン醤油ダレを合わせていくのだが、これが絶品なのだという。この臭いでそんな馬鹿なことがあるかと思ってしまうが、それはそれは美味なのだそうだ。俄には信じがたい。

「私は大好きだなぁ、豚骨ラーメン。ワイルドなのにクリーミーっていうか、こっちにはどこ行ってもない味なんだよね」
「わたしはちょっと苦手でしたけど、今回ニャティリさんもちょっとアレンジを加えてくれたみたいなんで楽しみですね」

イリスもマリアも食べたことがあるそうだが、イリスは大絶賛だ。一方でマリアの口には合わなかったようだ。万人が好む味ではないらしい。
しかし、マリアの反応も見て万人受けする豚骨ラーメンを作りたいと、次々と改良を加えていったのだそうだ。そうしてタイショーとニャティリが日夜研究を重ねて完成させたのが今の味だということである。

「えっと、このラーメンは麺の硬さが選べるのだけれど、聖龍はどうする?オススメはカタメかな」

麺の硬さは、バリカタ・カタメ・普通・ヤワメと選べる。店によっては、これに粉落としやらハリガネあるいはバリヤワなどもあるらしい。とりあえず我は、ニャティリのオススメに従ってカタメにした。

「カタメね、了解。今回は試食会ということで、ニンニクと赤いタレは別添えにしておくわね」

ニャティリはそれだけ言い残し麺を茹で始めた。と思ったら、丼ぶりにかえしとスープを入れ、サッと麺を湯の中から取り出して湯を切ると、スープの中に入れる。その上にネギやチャーシューをトッピングしてあっという間にラーメンが出来上がった。流れるような手捌きについ見惚れてしまった。

「驚くのはまだ早いわよ。さて、食べた人から感想を聞かせてね」

カウンターに座った我も含めた三人に豚骨ラーメンが出される。そして、ニャティリも厨房に自分の分のラーメンを用意して、皆で一斉に食べ始めたのだった。
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