26 / 39
×獣人
しおりを挟む
森に入ってきた人間の後をこっそり追う。木の陰に隠れてるからきっと気づかれてない。しっぽを揺らしながら慎重に気配を殺してついて行く。
「なぁ、ミモザ。もう帰ろーぜ」
「だって」
「ちび達も飽きたみたいだしさ」
そう言われて一緒に来た仲間たちを見る。確かにもう興味なさそうだ。僕はぷくっと頬を膨らませてそっぽ向く。
「みんなは先に帰ってて」
「暗くなる前に帰ってこいよ」
僕の頭を頭ぐしゃりと撫でて、友だちは仲間を連れて村に帰っていった。
僕はじっと人間の背中を見つめる。耳も欹てて心の中まで聞くように真剣に。あんなに綺麗な生き物は見たことがないんだ。大人たちは人間は怖い、悪い生き物だっていうけれど、それでも心惹かれる。
ざわりと森の空気が揺れた。良くないものの臭いがする。人間は気づいているだろうか? 再び様子を窺うが表情までは見えない。
ふと人間がこちらを見た。
『××××!』
何かを叫んでいるけれど、よくわからない。そちらに注意を払っていたから気づけなかった。真後ろから獣の息遣い。振り返ったときには大きな口が迫っていて、全部がゆっくりに見える。
ぐいと強い力で後ろに引っ張られた。ざしゅっと目の前で獣が貫かれる。
『×××××××?』
言葉尻から何かを確認されたんだと思う。何を言っているのかわからないから頷いておく。恐る恐る獣の方を見れば、すでに絶命していた。
「助けてくれてありがと」
人間は首を傾げて、僕の頭を撫でた。人間は僕に怪我がないことを確認して離れていった。
「僕はミモザだよ」
『×××ヴァイン』
「ゔぁいん?」
尋ねるとヴァインは首を縦に振ってまた歩き出した。なんとなく離れがたくて、追いかけてヴァインの服を握る。ヴァインは苦笑して僕の手をとった。
二人で並んで歩く。幼い子みたいに腕をぶんぶん振ってご機嫌に歩く。ヴァインは優しく笑っている。
「ヴァインは何がほしいの? この森に何をしに来たの?」
『××××。××××××××××××』
何かを言おうとしているけれど、やっぱりわからない。ヴァインは困ったように笑って森の奥を指差す。
「森の奥に行きたいの? あっちには生命の樹しかないよ。あ、生命の樹の実がほしいの? 昼の間に行かないといけないんだよ」
訪ねてみるけどヴァインは首を傾げるだけ。僕は勝手にそうだと決めつけて、森の奥へヴァインを引っ張っていく。
奥へ行くに連れてどんどん夜が近づいてくる。急がないと。僕が走り出したからヴァインも一緒に駆け出した。人間がついてこれるスピードで急ぐ。
生命の樹の前に到着したのは空が赤くなり始めた頃だった。よかった、間に合った。僕は樹に登って1番ツヤツヤした実と2番目に光ってる実をもぎとる。するすると降りてヴァインに綺麗な方を差し出した。
「この樹の実は夜になると死者の実になるから良くないんだって。朝まで待たなきゃいけないところだった」
『×××××』
ヴァインは驚いた顔で実を受け取ると、とても嬉しそうに笑った。僕の頭を撫でて、実を袋に収めてしまう。
「食べないの?」
ちょっと残念に思って、自分の手の中にある実を見た。もしかして毒でも警戒してるのかな。自分の実を半分に千切って彼の目の前で食べる。
残りの半分を差し出せば彼はまた笑って僕の頭を撫でた。
そうじゃないと僕は、首を振って彼の口元に実を近づける。しゃくりと涼しい音を鳴らしながら彼が食いついた。僕はそれに満足して並んで樹の実を食べた。
空には一番星が輝いていた。
「なぁ、ミモザ。もう帰ろーぜ」
「だって」
「ちび達も飽きたみたいだしさ」
そう言われて一緒に来た仲間たちを見る。確かにもう興味なさそうだ。僕はぷくっと頬を膨らませてそっぽ向く。
「みんなは先に帰ってて」
「暗くなる前に帰ってこいよ」
僕の頭を頭ぐしゃりと撫でて、友だちは仲間を連れて村に帰っていった。
僕はじっと人間の背中を見つめる。耳も欹てて心の中まで聞くように真剣に。あんなに綺麗な生き物は見たことがないんだ。大人たちは人間は怖い、悪い生き物だっていうけれど、それでも心惹かれる。
ざわりと森の空気が揺れた。良くないものの臭いがする。人間は気づいているだろうか? 再び様子を窺うが表情までは見えない。
ふと人間がこちらを見た。
『××××!』
何かを叫んでいるけれど、よくわからない。そちらに注意を払っていたから気づけなかった。真後ろから獣の息遣い。振り返ったときには大きな口が迫っていて、全部がゆっくりに見える。
ぐいと強い力で後ろに引っ張られた。ざしゅっと目の前で獣が貫かれる。
『×××××××?』
言葉尻から何かを確認されたんだと思う。何を言っているのかわからないから頷いておく。恐る恐る獣の方を見れば、すでに絶命していた。
「助けてくれてありがと」
人間は首を傾げて、僕の頭を撫でた。人間は僕に怪我がないことを確認して離れていった。
「僕はミモザだよ」
『×××ヴァイン』
「ゔぁいん?」
尋ねるとヴァインは首を縦に振ってまた歩き出した。なんとなく離れがたくて、追いかけてヴァインの服を握る。ヴァインは苦笑して僕の手をとった。
二人で並んで歩く。幼い子みたいに腕をぶんぶん振ってご機嫌に歩く。ヴァインは優しく笑っている。
「ヴァインは何がほしいの? この森に何をしに来たの?」
『××××。××××××××××××』
何かを言おうとしているけれど、やっぱりわからない。ヴァインは困ったように笑って森の奥を指差す。
「森の奥に行きたいの? あっちには生命の樹しかないよ。あ、生命の樹の実がほしいの? 昼の間に行かないといけないんだよ」
訪ねてみるけどヴァインは首を傾げるだけ。僕は勝手にそうだと決めつけて、森の奥へヴァインを引っ張っていく。
奥へ行くに連れてどんどん夜が近づいてくる。急がないと。僕が走り出したからヴァインも一緒に駆け出した。人間がついてこれるスピードで急ぐ。
生命の樹の前に到着したのは空が赤くなり始めた頃だった。よかった、間に合った。僕は樹に登って1番ツヤツヤした実と2番目に光ってる実をもぎとる。するすると降りてヴァインに綺麗な方を差し出した。
「この樹の実は夜になると死者の実になるから良くないんだって。朝まで待たなきゃいけないところだった」
『×××××』
ヴァインは驚いた顔で実を受け取ると、とても嬉しそうに笑った。僕の頭を撫でて、実を袋に収めてしまう。
「食べないの?」
ちょっと残念に思って、自分の手の中にある実を見た。もしかして毒でも警戒してるのかな。自分の実を半分に千切って彼の目の前で食べる。
残りの半分を差し出せば彼はまた笑って僕の頭を撫でた。
そうじゃないと僕は、首を振って彼の口元に実を近づける。しゃくりと涼しい音を鳴らしながら彼が食いついた。僕はそれに満足して並んで樹の実を食べた。
空には一番星が輝いていた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
アダルトチルドレン
こじらせた処女
BL
きょうだい児として生まれた凪は、小さい頃から自由が無かった。朝も、学校から帰っても、暴力的な兄を宥めたり、散らかしたものを片付けたり、時には殴られたり。介護要員として産んだ、進路選択の時に初めて反抗して喧嘩になった時にそう言われた凪は、我慢の糸が切れてしまい、高校卒業と共に、家を出た。
奨学金を借りて大学に通っていた時代にコンビニのアルバイトで出会った先輩に告白され、それが今の同居している彼氏となる。
ゲイでは無かった凪であるが、自立していて自分を大切にしてくれる彼に惹かれ、暮らし続けている。
ある日、駅のトイレでトイレの失敗をしている子供を見かけ、優しくしてもらっている姿に異常なまでの怒りを覚えてしまう。小さな時にしてもらえなかった事をしてもらっている子供に嫉妬して、羨ましくなって、家の廊下でわざと失敗しようとするが…?
可愛い男の子が実はタチだった件について。
桜子あんこ
BL
イケメンで女にモテる男、裕也(ゆうや)と可愛くて男にモテる、凛(りん)が付き合い始め、裕也は自分が抱く側かと思っていた。
可愛いS攻め×快楽に弱い男前受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる