ゲームランカーのスパダリ彼氏

真義あさひ

文字の大きさ
27 / 90
第一章「最強ランカーのリアル彼氏はスパダリ覚醒する」二条泰然編

怜司の要求

しおりを挟む
 怜司は泰然を押さえ込んだまま、ゆっくりと微笑んだ。

「僕の要求は一つだけ」
「………………」
「わかってるだろ? ゲーム恋人たちを切ってくれ。今すぐ。ここで」

 その言葉に、一瞬、泰然の思考が止まった。

(今すぐ?)

 ベッドの上にいる今ここで? と思っていたら、怜司がすっと泰然の上から退いた。
 ベッドの下に落とされていた泰然の服を探り、ジャケットからすんなりスマホを見つけ出している。

「ほら。簡単だろう? ね、早く」

 裸のままの泰然にそっとスマホを渡してきた。そのまま後ろから抱きしめて泰然の指を操り、スマホの指紋認証を解除させる。
 ホーム画面のLOIアプリをタップさせ、ログインまでさせてきた。

(俺は怜司だけでいい。怜司しかいない。それは……もうわかってる)

 だが、それでも泰然は怜司の要求に素直に従えない何かがあった。

(怜司から離れられなくなる。それが……怖い)

 ステータス画面まで進めさせられた。
 バディの項目をタップ。ピンクのハートで装飾された〝恋人契約〟が表示されたところで、泰然の指を操る怜司の手が離れた。ここから先は泰然自身が行えということだろう。

 けれど、そこで泰然の指は止まってしまった。

 泰然が沈黙したのを見て、怜司がわざとらしく溜息をついた。

「何でそんなに悩むかな。君には僕だけでいいだろう?」
「……怜司」

 泰然は顔を上げて怜司を見た。怜司は面白そうに笑っている。
 泰然が、ごちゃごちゃした気持ちで頭が一杯になってることなどお見通し、の顔だ。

(この野郎)

 なんでこんなに余裕なんだ。

 睨むと、怜司はそのまま泰然の黒髪をくしゃっと撫でてきた。
 そのまま首筋にちゅ、と小さくキスされた。
 ビクッと泰然が震えるのを愛おしそうに見つめる怜司の緑の目だけは、やはり笑っていない。

「君、僕なしじゃ生きていけないだろう?」

 怜司の言葉が、泰然の胸に突き刺さった。

「そんな、わけ」

 ない、と言いきるのも、その通りだ、と認めるのもどちらも苦しかった。
 だから泰然はそのまま口を閉ざすことを選んだ。

「ふうん?」

 怜司は泰然の沈黙を楽しむように、また髪を撫でた。
 それから、ゆっくりと指を滑らせ、先ほど口づけた泰然の首筋に触れる。
 優しく、ゆっくりと。むずがる子供を宥めるような動きだ。

「まあ、君が逃げようとしても、絶対逃さないけど」

 その囁きが耳に注がれた瞬間、泰然は完全に言葉を失った。

(うれしい。もっと言って。怜司)

 怜司の指先が、ゆっくりと肌をなぞってくる。
 触れるか触れないかの曖昧な距離で、じわじわと動く。
 泰然の反応を確かめるように、時間をかけて。いつものように。

「……っ、おまえ……」
「ん?」

 掠れた声を聞きながら、怜司は楽しそうに微笑んでいる。

「ね、僕はちゃんと君を追ってLOIに行ったよ。ランク1位の強いプレイヤーにもなった。ご褒美は?」

 耳元で囁かれた瞬間、背筋が震えた。
 ――歓喜にだ。

 だがすぐに唇を噛んで堪えた。
 怜司はそんな抵抗すら楽しむように、更に意地悪く指を滑らせてくる。

「僕もね、最初は思ってたよ。『リアルとゲームは別物』って。でも有名なハリウッド俳優に……デスメリーなんてあんな不気味な男までゲーム恋人って、やりすぎだろ?」

 ほら、と手から落ちかけていたスマホをしっかり握り直させられた。

「ね? ここで、僕の目の前であの男たちを切って。君の愛を証明して」

 言いながら、怜司の手が喉元をなぞってくる。

「いや、それは、ほんとに……」

 勘弁してくれ、と言おうとしたら脇腹を手のひらで撫でられた。泰然の弱いところだ。思わずスマホをシーツの上に落としてしまった。

(こ、こいつ、話し合いなんかする気ないだろ!?)

 意地悪な恋人は、最初から泰然を陥落させるつもりでホテルの予約を取っているのだ。



「僕はこれでも、君をとても大事にしてる」

 囁きながら、怜司は泰然の肌を軽くなぞる。言葉の意味を刻み込むような、じれったい動きだ。

「それは、……知ってる」
「だよね。でも」

 怜司の声は楽しげだった。だが後ろから自分を抱き締める腕は、手は、容赦がない。

「限度はあるって、教えてあげる」

 怜司の大きな手が泰然の下腹部に伸びた。鼠蹊部の際どいところを指先がなぞる。
 息を呑む間もなく、怜司の指が更に意地悪に動き、泰然の息は浅くなる。

「あ、……あっ」

 反対側の手は泰然の喉元、そして胸元へと滑らせていく。弱い胸の突起はあえて触れない。期待感だけを煽っていく。
 泰然の身体がもっと強い刺激を求めて身を捩るが、あえて応えない。

「おまえ、やだ……意地悪、するな」
「意地悪なのは君のほうだ。この、――浮気者」
「!?」

 泰然の身体が驚きに跳ねる。まさか直球で言われるとは思わなかった。

 見るからに動揺しているのがわかる。
 怜司は少しだけ残酷な気分に高揚しながら、泰然の顎を指先で掴んで後ろを振り向かせた。

「もっとよく考えて」
「なに、を?」

 泰然の視線が揺れる。

「僕のことを、どうしたいのか」

 そう言うと、泰然の指が一瞬シーツをぎゅっと握った。赤い目もぎゅっと瞑られる。

「……っ」

 焦燥が滲む仕草だ。
 だが、怜司はそれをすぐには救わない。

「ゲームも僕も両方、なんて許さない。選ぶならどちらかだ」

「……っ」

 泰然の喉が、ごくりと鳴った。赤い瞳も揺れている。

 怜司の問いに、泰然はまだ答えを出せない。付き合いが長いだけあって、泰然の動揺は自分のことのようにわかる。

 そう、いま怜司は睦み合っているように見せかけて、泰然と別れるか別れないか瀬戸際の話をしているのだ。

「……僕を選ぶんだよね?」

 静かに問いかけると、泰然は唇を噛んだ。

「……だから。それは、簡単に決められないって……」
「泰然」

 怜司は泰然の髪を指に絡め、ゆっくり囁いた。

「僕には君しかいないよ?」

 泰然の指がシーツをぎゅっと握る。

「そんなの。俺だって」

 怜司はふっと微笑み、泰然の喉元を指先でくすぐった。

「……っ」
「君さ。悩むのもいいけど、……僕から逃げられるとか、まだ思ってる?」

 泰然の呼吸が一瞬止まった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

優しく暖かなその声は(幽閉王子は最強皇子に包まれる・番外編)

皇洵璃音
BL
「幽閉王子は最強皇子に包まれる」の番外編。レイナード皇子視点。ある日病気で倒れたレイナードは、愛しいアレクセイに優しくされながら傍にいてほしいとお願いしてみると……?

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

処理中です...