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「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
ようやく父が話してくれたこと
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それから、エスティアはサロンに移動して父テレンスと話をした。
セドリックと楽しむはずだったアフタヌーンティーは残念ながら父とになった。
「………………」
「………………」
濃いミルクティ色の髪と緑の目。
色だけは同じだが、エスティアは母譲りの少し冷たい容貌。父テレンスは文句なしの西洋画系の美男子だ。
互いにお茶を一杯と、スタンド下部のサンドイッチを食べ終わり、エスティアが中段のスコーンに手を伸ばしたところで父テレンスがおもむろに話し始めた。
それは、これまでエスティアが友人のサンドローザ王女や、伯爵家に帰ってきてから幼馴染みのカーティスやセドリックが言葉を選びながら伝えてくれていたことを裏付けるものだった。
親世代の頃に勃発した黒ドラゴンや瘴気被害の真実。
この国は国のトップの心が乱れたときに瘴気が発生して、その瘴気が魔物を呼び寄せて国内を汚染する。
王族や貴族たちは魔物討伐が可能な高い魔力をどの家も代々伝えてきている。
先代国王のときは、王家の正統問題が炎上して当時の国王に深い心痛を与えていた。
「王女殿下が仰ってました。お父様のご実家のモリスン子爵家が本当は王家の正統なのだと」
「そうだ。おまえの祖父で、私の父マーリンから数えて五代前の当主が当時、王族の中で最も魔力の高い人物だった」
なぜ魔力優先かといえば、先日アヴァロン山脈の山頂で対峙した黒い羽竜のような、瘴気を放つ魔物たちを抑えられる強さが条件のためだ。
「本来、プリズム王家は長子相続でもなければ嫡子相続でもない。次世代の血族の中から最も魔力の高い者を王太子に選定する。ところが……」
「王家の決まりが守られず、本来正統な後継者だった者が王家を出奔して臣下に下り、ご先祖様になったのですよね」
「ああ。しかもわざわざ、高位貴族ではない下位貴族の子爵位を賜って権力から遠いところに逃げた。だがそれでも王位継承権争いから逃げられなかった」
王家は正統の血を王家に戻したかったようだが、ここ何代も王家もモリスン子爵家も男子ばかりで政略結婚ができなかった。
「それでも近縁遠縁に関わらず王家の一族はそれなりに友好関係を保っていた。だが、私たち親世代が子供の頃に、ある事実が発覚した。……当時、王家に唯一の王子で王太子だったアーサー様が、王妃様の不義の子だと」
ぴた、とエスティアはスコーンを割ってクロテッドクリームを塗ろうとした手を止めた。
(サンドローザ! これ、あなたが平民の母親を持ってるとかより、もっと重大な話じゃない!?)
前国王の血を引いていない不義の子だった現国王と、平民を母に持つその娘サンドローザ。
ならばどちらにしろ、今のサンドローザ王女に王家の血は流れていないということだ。
彼女は何があっても絶対に、自分を守るためには王族の親戚のノア公爵令息ヒューレットと結婚しなければならない。
そして彼女を失脚させたくなければヒューレットは相手の不貞を飲み込まねばならなかった。
(彼はそういう不快感を表に出す人じゃないから、本心はわからないけど。)
「単純に血の濃さだけなら、王家に最も近い一族のノア公爵家から次期国王を出せばいい。 だが、本来の王家の正統は我が実家モリスン子爵家にある。当主マーリンはどうしたと思う?」
「別に王位に野心などは持たなかった……のですよね?」
「ああ。父マーリン本人は魔法騎士団の団長で満足していた。生まれた長男も次男も三男も魔力はあったが突出するほどじゃなかった。だけどそこで打ち止めにしておけばいいのに父は更に子供を作った。それが」
会ったことはないが伯父は三人と聞いていた。
「お父様、確か四男でしたね。王女殿下からお聞きしました。今、王族の血筋の中で一番魔力が高いのはお父様なのだと」
「そうだ。だが、格別強い魔力を持って生まれた私を、父はあえて、ほとんど放置していた。王都学園にだけは進学させて、……学園で私はアーサー様に出会った。そこで初めて王家のことやアーサー様が国王の実子でないことを教えられて」
それでも自分の運命に折れず、ひたむきに立ち向かおうとする当時のアーサー王太子に惹かれて、学生時代の〝テレンス君〟は王太子の世話役となった。
「そうしたら私とアーサー様が恋愛関係などと変な噂が流れたりしてな。私は魔力はあっても実家では怠けて勉強してなかったから、ずっと宿題や試験の面倒を見てもらってた。それが誤解を生んだらしい」
恥ずかしそうに告白する父が言うには、当時はアーサー王太子の寮の部屋に入り浸りで、二人きりになることもしょっちゅうだったそうだ。
(ああああ。乙プリのライトなBLモードにありましたね、そういう感じのシーンたくさん!)
新規スチルで、必死に宿題に取り掛かるテレンス君を見て『可愛いやつだ』と述懐するシーンがあった。
しかも背景には乙女ゲーム的演出で花が咲いていた。美形と美少年の取り合わせに、テレンス君最推しの前世のミナコは、BLが苦手なのに開発会社に全力で感謝を捧げたものだった。
セドリックと楽しむはずだったアフタヌーンティーは残念ながら父とになった。
「………………」
「………………」
濃いミルクティ色の髪と緑の目。
色だけは同じだが、エスティアは母譲りの少し冷たい容貌。父テレンスは文句なしの西洋画系の美男子だ。
互いにお茶を一杯と、スタンド下部のサンドイッチを食べ終わり、エスティアが中段のスコーンに手を伸ばしたところで父テレンスがおもむろに話し始めた。
それは、これまでエスティアが友人のサンドローザ王女や、伯爵家に帰ってきてから幼馴染みのカーティスやセドリックが言葉を選びながら伝えてくれていたことを裏付けるものだった。
親世代の頃に勃発した黒ドラゴンや瘴気被害の真実。
この国は国のトップの心が乱れたときに瘴気が発生して、その瘴気が魔物を呼び寄せて国内を汚染する。
王族や貴族たちは魔物討伐が可能な高い魔力をどの家も代々伝えてきている。
先代国王のときは、王家の正統問題が炎上して当時の国王に深い心痛を与えていた。
「王女殿下が仰ってました。お父様のご実家のモリスン子爵家が本当は王家の正統なのだと」
「そうだ。おまえの祖父で、私の父マーリンから数えて五代前の当主が当時、王族の中で最も魔力の高い人物だった」
なぜ魔力優先かといえば、先日アヴァロン山脈の山頂で対峙した黒い羽竜のような、瘴気を放つ魔物たちを抑えられる強さが条件のためだ。
「本来、プリズム王家は長子相続でもなければ嫡子相続でもない。次世代の血族の中から最も魔力の高い者を王太子に選定する。ところが……」
「王家の決まりが守られず、本来正統な後継者だった者が王家を出奔して臣下に下り、ご先祖様になったのですよね」
「ああ。しかもわざわざ、高位貴族ではない下位貴族の子爵位を賜って権力から遠いところに逃げた。だがそれでも王位継承権争いから逃げられなかった」
王家は正統の血を王家に戻したかったようだが、ここ何代も王家もモリスン子爵家も男子ばかりで政略結婚ができなかった。
「それでも近縁遠縁に関わらず王家の一族はそれなりに友好関係を保っていた。だが、私たち親世代が子供の頃に、ある事実が発覚した。……当時、王家に唯一の王子で王太子だったアーサー様が、王妃様の不義の子だと」
ぴた、とエスティアはスコーンを割ってクロテッドクリームを塗ろうとした手を止めた。
(サンドローザ! これ、あなたが平民の母親を持ってるとかより、もっと重大な話じゃない!?)
前国王の血を引いていない不義の子だった現国王と、平民を母に持つその娘サンドローザ。
ならばどちらにしろ、今のサンドローザ王女に王家の血は流れていないということだ。
彼女は何があっても絶対に、自分を守るためには王族の親戚のノア公爵令息ヒューレットと結婚しなければならない。
そして彼女を失脚させたくなければヒューレットは相手の不貞を飲み込まねばならなかった。
(彼はそういう不快感を表に出す人じゃないから、本心はわからないけど。)
「単純に血の濃さだけなら、王家に最も近い一族のノア公爵家から次期国王を出せばいい。 だが、本来の王家の正統は我が実家モリスン子爵家にある。当主マーリンはどうしたと思う?」
「別に王位に野心などは持たなかった……のですよね?」
「ああ。父マーリン本人は魔法騎士団の団長で満足していた。生まれた長男も次男も三男も魔力はあったが突出するほどじゃなかった。だけどそこで打ち止めにしておけばいいのに父は更に子供を作った。それが」
会ったことはないが伯父は三人と聞いていた。
「お父様、確か四男でしたね。王女殿下からお聞きしました。今、王族の血筋の中で一番魔力が高いのはお父様なのだと」
「そうだ。だが、格別強い魔力を持って生まれた私を、父はあえて、ほとんど放置していた。王都学園にだけは進学させて、……学園で私はアーサー様に出会った。そこで初めて王家のことやアーサー様が国王の実子でないことを教えられて」
それでも自分の運命に折れず、ひたむきに立ち向かおうとする当時のアーサー王太子に惹かれて、学生時代の〝テレンス君〟は王太子の世話役となった。
「そうしたら私とアーサー様が恋愛関係などと変な噂が流れたりしてな。私は魔力はあっても実家では怠けて勉強してなかったから、ずっと宿題や試験の面倒を見てもらってた。それが誤解を生んだらしい」
恥ずかしそうに告白する父が言うには、当時はアーサー王太子の寮の部屋に入り浸りで、二人きりになることもしょっちゅうだったそうだ。
(ああああ。乙プリのライトなBLモードにありましたね、そういう感じのシーンたくさん!)
新規スチルで、必死に宿題に取り掛かるテレンス君を見て『可愛いやつだ』と述懐するシーンがあった。
しかも背景には乙女ゲーム的演出で花が咲いていた。美形と美少年の取り合わせに、テレンス君最推しの前世のミナコは、BLが苦手なのに開発会社に全力で感謝を捧げたものだった。
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