炎上乙女ゲー聖杯伝説~結婚当日に友人王女が婚約者を寝取って婚約破棄なので諦めてた初恋の隣国王弟の攻略に戻ります

真義あさひ

文字の大きさ
上 下
33 / 66
「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界

テレンスの確変魔法

しおりを挟む
 だが、すんなり出ていくわけがないと思っていた父テレンスの反応は、エスティアの予想とはだいぶ異なっていた。

「お前は気に食わぬが、実の娘。餞別ぐらいくれてやる!」
「……は?」

 それを言うのはむしろ追放するエスティア側ではないか?
 首を傾げていると、テレンスが魔法を発動した。

「確率変動魔法、発動!」

 テレンスの目の前に縦列三列、九つのカラフルな光のオーブが浮かんだ。


『ミニゲーム! 照れ照れテレンスの確変パズル~! さあ好きなオーブをひとつ選んでね!』


(これ、本編でテレンス君が担当してたご褒美ゲーム?)

 確率変動とは、前世の日本でならパチンコやカジノ用語で、大当たりが連続して継続する状態のことを指す。
 テレンスの確率変動魔法は最初にひとつ当たりが出ると、次に当たりが出る確率が爆上がりする。その繰り返しで次々と幸運が続く運気操作型の魔法だった。

 ただし、逆もあり得る。
 最初にハズレを引くと次もハズレの可能性が高くなる。

 当たりにしろハズレにしろ、その一回のみで止めることもできるし、続けて運任せも可能だった。

 なお、オーブの効果はそのときのテレンスの気分次第である。

「さあ、どれでもひとつ、好きなものを選ぶがいい!」
「選べと言われても……」

(あれ? この魔法、随分昔に遊んだことがある……わね……?)

 前世のミナコがプレイした本編ではない。エスティア自身が経験した記憶がある。


『ぱーぱー! あたりどーれー?』

『ふははははは、おしえなーい!』

『パパのいじわるー!』


 母の腕に抱っこされて、父テレンスの出した魔法のオーブをどれにしようか悩んだ出来事が想起されてきた。

(そうだった。仲が良くて、家族でお父様のパズル魔法で仲良く遊んでいた頃もあったのよ。……どうして、私たちはこんなに拗れてしまったのだろう)

 九つのオーブはすべて色が違う。白と黒、赤、青、黄、ピンク、グレー、水色、そして緑色。
 たまに虹色に点滅するオーブもあるが、これは引っ掛けだ。初心者がよく引っかかって痛い目を見る。

 何となく青色を選ぼうとすると、父の緑色の目があからさまに泳いだ。

(本編でミニゲームの攻略ヒントがあるのよね。当たりを選ぼうとオーブにカーソルを合わせて、実際当たりだとちょっとつまらなさそうに唇を尖らせる。ハズレだとちょっとにんまり。大ハズレを選ぼうとするとぷるぷる震えて大慌て)

 どの表情と態度も、ものすごく可愛くて、正解がわかっても全部のオーブにカーソルを合わせてしまうプレイヤーは前世のミナコの頃から多かった。



 青色は違うらしい。
 ではピンクに指先を向けるとショックを受けたような顔になる。

 乙女☆プリズム夢の王国の本編ではテレンス君の背後に「がびーん!」と効果音が手書きで表示された。そういうところは三十年前の古いゲームの演出だったなと思う。

(確かこの顔は、術者がダメージを受けるやつだったはず)

 数秒そのままピンクオーブを検討するように指を揺らしていると、次第に生意気な顔をしていた父テレンスが明らかにしょんぼりしてくるのがわかった。

(あああああ。クズの父親でもこの人はテレンス、テレンス君! 私には選べない)

 仕方なく正解と思われる緑オーブを選ぶと、パァッと父の美しい顔が輝いた。

(推しが、尊い)

 何だかもう追放はやめてしまいたくなってエスティアが自己嫌悪に陥っていると。

 正解を選ぶなり九つのオーブが一つの大きな光の球になって、後には背の低い木箱にぎっしり詰まった大量の小瓶が現れた。

「これ、魔力ポーションですか?」
「上級ポーションだ。形見分けにくれてやる! いいか、形見だからな。ちゃんと全部飲むのだぞ、形見だからな!」

 と捨て台詞なのだかよくわからない念押しをして、父テレンスは慌ただしく荷物をまとめて伯爵家を出て行った。

「……形見?」



しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

【改稿版】婚約破棄は私から

どくりんご
恋愛
 ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。  乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!  婚約破棄は私から! ※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。 ◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位 ◆3/20 HOT6位  短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。 しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

その国外追放、謹んでお受けします。悪役令嬢らしく退場して見せましょう。

ユズ
恋愛
乙女ゲームの世界に転生し、悪役令嬢になってしまったメリンダ。しかもその乙女ゲーム、少し変わっていて?断罪される運命を変えようとするも失敗。卒業パーティーで冤罪を着せられ国外追放を言い渡される。それでも、やっぱり想い人の前では美しくありたい! …確かにそうは思ったけど、こんな展開は知らないのですが!? *小説家になろう様でも投稿しています

処理中です...