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「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
白い結婚作戦でいく
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サロンに用意されていたアフタヌーンティーのお茶はとっくに冷めきっている。
新しく入れ直させて、エスティアは嘆息した。
「あれ、どうするんだ? エスティア」
「どうもこうも……」
カーティスに訊かれたが、がっくり疲れた。行儀が悪いが椅子の背もたれにもたれかかってしまったエスティアだ。
「なぜ私たちを止めた? あそこで押し入ってアルフォートと相手の女を押さえるべきだったろう。その上でお父上に報告を」
「ふふ。セドリック、あなたの厳しい姿勢は相変わらずね。でも今回はこれでいいのよ」
「だが」
まあまあ、とカーティスがセドリックを宥めている。
「まさか婚儀の前日まで女とよろしくヤッてるとはね。俺も驚いた」
「……まさにクズだな」
四人は学園の同級生だ。それぞれの性格は良く知っている。
アルフォートは在学中から女好きで、特定の相手を作らず遊び歩いていた男だ。
それに性格も悪い。だから学園では父の親戚と知ってもできるだけ関わらないようにしていた。
だからエスティアは父テレンスが彼を婚約者にしたと聞いて卒倒しそうになるほど驚いたのだ。
「けど、どうするエスティア。今からでも殴り込みに行くなら力を貸すぜ」
バシッと手のひらに拳を鋭く叩きつけながらカーティスに確認されたが、首を振って断った。
セドリックも無言ながら心配そうな目でエスティアを見てきた。
「ううん。やらなくていい。でも、あなたたち二人も目撃したことを、今後必要があれば証言してくれたら助かる」
「それは、もちろん」
「了解。やっぱり『白い結婚』作戦だな」
「!?」
カーティスの発言にセドリックが薄い青の瞳を見開いて驚愕している。
「白い結婚だと? 何の話だそれは!」
「そのまんまだよ、カルダーナの王弟殿下。いくら何でも、結婚前日に不貞を働いてる男はエスティアだって嫌に決まってる」
「だ、だが、そんなことをすればエスティアの名誉に傷が付く!」
「だってよ? どうなの、エスティア?」
食ってかかってくるセドリックを、ティースタンドからキューカンバーのサンドイッチを取って口に放り込みながらかわして、カーティスが訊いてきた。
エスティアもスタンドからマカロンをチョイスして、もう淑女のマナーも忘れて一個、二個と続けて咀嚼した。
パラディオ伯爵家のパティシエご自慢のマカロンはクリームが濃厚で美味だ。バタークリームではなく、かために仕上げた生クリームを使うのが当家流。
「普通ならそうね。でも私はただの令嬢じゃない。女伯爵に離婚歴があったって困りやしないわよ」
「お。結婚前に爵位継承できたのか」
「二日前にぎりぎり完了したわ。王家の事務って本当、遅くて嫌になっちゃう」
この調子では結婚後、白い結婚を盾に離婚を認めさせるのも大変そうだ。
もっとも、エスティアには引く気などさらさらない。
「何にせよもう明日が結婚式。茶番だけど参加よろしくね、ふたりとも」
それからは三人で独身最後のお茶会を楽しんだ。
婚約者のいるヒロインが、男性と三人で。こういうところは乙女ゲームだなあという気がする。
新しく入れ直させて、エスティアは嘆息した。
「あれ、どうするんだ? エスティア」
「どうもこうも……」
カーティスに訊かれたが、がっくり疲れた。行儀が悪いが椅子の背もたれにもたれかかってしまったエスティアだ。
「なぜ私たちを止めた? あそこで押し入ってアルフォートと相手の女を押さえるべきだったろう。その上でお父上に報告を」
「ふふ。セドリック、あなたの厳しい姿勢は相変わらずね。でも今回はこれでいいのよ」
「だが」
まあまあ、とカーティスがセドリックを宥めている。
「まさか婚儀の前日まで女とよろしくヤッてるとはね。俺も驚いた」
「……まさにクズだな」
四人は学園の同級生だ。それぞれの性格は良く知っている。
アルフォートは在学中から女好きで、特定の相手を作らず遊び歩いていた男だ。
それに性格も悪い。だから学園では父の親戚と知ってもできるだけ関わらないようにしていた。
だからエスティアは父テレンスが彼を婚約者にしたと聞いて卒倒しそうになるほど驚いたのだ。
「けど、どうするエスティア。今からでも殴り込みに行くなら力を貸すぜ」
バシッと手のひらに拳を鋭く叩きつけながらカーティスに確認されたが、首を振って断った。
セドリックも無言ながら心配そうな目でエスティアを見てきた。
「ううん。やらなくていい。でも、あなたたち二人も目撃したことを、今後必要があれば証言してくれたら助かる」
「それは、もちろん」
「了解。やっぱり『白い結婚』作戦だな」
「!?」
カーティスの発言にセドリックが薄い青の瞳を見開いて驚愕している。
「白い結婚だと? 何の話だそれは!」
「そのまんまだよ、カルダーナの王弟殿下。いくら何でも、結婚前日に不貞を働いてる男はエスティアだって嫌に決まってる」
「だ、だが、そんなことをすればエスティアの名誉に傷が付く!」
「だってよ? どうなの、エスティア?」
食ってかかってくるセドリックを、ティースタンドからキューカンバーのサンドイッチを取って口に放り込みながらかわして、カーティスが訊いてきた。
エスティアもスタンドからマカロンをチョイスして、もう淑女のマナーも忘れて一個、二個と続けて咀嚼した。
パラディオ伯爵家のパティシエご自慢のマカロンはクリームが濃厚で美味だ。バタークリームではなく、かために仕上げた生クリームを使うのが当家流。
「普通ならそうね。でも私はただの令嬢じゃない。女伯爵に離婚歴があったって困りやしないわよ」
「お。結婚前に爵位継承できたのか」
「二日前にぎりぎり完了したわ。王家の事務って本当、遅くて嫌になっちゃう」
この調子では結婚後、白い結婚を盾に離婚を認めさせるのも大変そうだ。
もっとも、エスティアには引く気などさらさらない。
「何にせよもう明日が結婚式。茶番だけど参加よろしくね、ふたりとも」
それからは三人で独身最後のお茶会を楽しんだ。
婚約者のいるヒロインが、男性と三人で。こういうところは乙女ゲームだなあという気がする。
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