12 / 66
「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
白い結婚作戦でいく
しおりを挟む
サロンに用意されていたアフタヌーンティーのお茶はとっくに冷めきっている。
新しく入れ直させて、エスティアは嘆息した。
「あれ、どうするんだ? エスティア」
「どうもこうも……」
カーティスに訊かれたが、がっくり疲れた。行儀が悪いが椅子の背もたれにもたれかかってしまったエスティアだ。
「なぜ私たちを止めた? あそこで押し入ってアルフォートと相手の女を押さえるべきだったろう。その上でお父上に報告を」
「ふふ。セドリック、あなたの厳しい姿勢は相変わらずね。でも今回はこれでいいのよ」
「だが」
まあまあ、とカーティスがセドリックを宥めている。
「まさか婚儀の前日まで女とよろしくヤッてるとはね。俺も驚いた」
「……まさにクズだな」
四人は学園の同級生だ。それぞれの性格は良く知っている。
アルフォートは在学中から女好きで、特定の相手を作らず遊び歩いていた男だ。
それに性格も悪い。だから学園では父の親戚と知ってもできるだけ関わらないようにしていた。
だからエスティアは父テレンスが彼を婚約者にしたと聞いて卒倒しそうになるほど驚いたのだ。
「けど、どうするエスティア。今からでも殴り込みに行くなら力を貸すぜ」
バシッと手のひらに拳を鋭く叩きつけながらカーティスに確認されたが、首を振って断った。
セドリックも無言ながら心配そうな目でエスティアを見てきた。
「ううん。やらなくていい。でも、あなたたち二人も目撃したことを、今後必要があれば証言してくれたら助かる」
「それは、もちろん」
「了解。やっぱり『白い結婚』作戦だな」
「!?」
カーティスの発言にセドリックが薄い青の瞳を見開いて驚愕している。
「白い結婚だと? 何の話だそれは!」
「そのまんまだよ、カルダーナの王弟殿下。いくら何でも、結婚前日に不貞を働いてる男はエスティアだって嫌に決まってる」
「だ、だが、そんなことをすればエスティアの名誉に傷が付く!」
「だってよ? どうなの、エスティア?」
食ってかかってくるセドリックを、ティースタンドからキューカンバーのサンドイッチを取って口に放り込みながらかわして、カーティスが訊いてきた。
エスティアもスタンドからマカロンをチョイスして、もう淑女のマナーも忘れて一個、二個と続けて咀嚼した。
パラディオ伯爵家のパティシエご自慢のマカロンはクリームが濃厚で美味だ。バタークリームではなく、かために仕上げた生クリームを使うのが当家流。
「普通ならそうね。でも私はただの令嬢じゃない。女伯爵に離婚歴があったって困りやしないわよ」
「お。結婚前に爵位継承できたのか」
「二日前にぎりぎり完了したわ。王家の事務って本当、遅くて嫌になっちゃう」
この調子では結婚後、白い結婚を盾に離婚を認めさせるのも大変そうだ。
もっとも、エスティアには引く気などさらさらない。
「何にせよもう明日が結婚式。茶番だけど参加よろしくね、ふたりとも」
それからは三人で独身最後のお茶会を楽しんだ。
婚約者のいるヒロインが、男性と三人で。こういうところは乙女ゲームだなあという気がする。
新しく入れ直させて、エスティアは嘆息した。
「あれ、どうするんだ? エスティア」
「どうもこうも……」
カーティスに訊かれたが、がっくり疲れた。行儀が悪いが椅子の背もたれにもたれかかってしまったエスティアだ。
「なぜ私たちを止めた? あそこで押し入ってアルフォートと相手の女を押さえるべきだったろう。その上でお父上に報告を」
「ふふ。セドリック、あなたの厳しい姿勢は相変わらずね。でも今回はこれでいいのよ」
「だが」
まあまあ、とカーティスがセドリックを宥めている。
「まさか婚儀の前日まで女とよろしくヤッてるとはね。俺も驚いた」
「……まさにクズだな」
四人は学園の同級生だ。それぞれの性格は良く知っている。
アルフォートは在学中から女好きで、特定の相手を作らず遊び歩いていた男だ。
それに性格も悪い。だから学園では父の親戚と知ってもできるだけ関わらないようにしていた。
だからエスティアは父テレンスが彼を婚約者にしたと聞いて卒倒しそうになるほど驚いたのだ。
「けど、どうするエスティア。今からでも殴り込みに行くなら力を貸すぜ」
バシッと手のひらに拳を鋭く叩きつけながらカーティスに確認されたが、首を振って断った。
セドリックも無言ながら心配そうな目でエスティアを見てきた。
「ううん。やらなくていい。でも、あなたたち二人も目撃したことを、今後必要があれば証言してくれたら助かる」
「それは、もちろん」
「了解。やっぱり『白い結婚』作戦だな」
「!?」
カーティスの発言にセドリックが薄い青の瞳を見開いて驚愕している。
「白い結婚だと? 何の話だそれは!」
「そのまんまだよ、カルダーナの王弟殿下。いくら何でも、結婚前日に不貞を働いてる男はエスティアだって嫌に決まってる」
「だ、だが、そんなことをすればエスティアの名誉に傷が付く!」
「だってよ? どうなの、エスティア?」
食ってかかってくるセドリックを、ティースタンドからキューカンバーのサンドイッチを取って口に放り込みながらかわして、カーティスが訊いてきた。
エスティアもスタンドからマカロンをチョイスして、もう淑女のマナーも忘れて一個、二個と続けて咀嚼した。
パラディオ伯爵家のパティシエご自慢のマカロンはクリームが濃厚で美味だ。バタークリームではなく、かために仕上げた生クリームを使うのが当家流。
「普通ならそうね。でも私はただの令嬢じゃない。女伯爵に離婚歴があったって困りやしないわよ」
「お。結婚前に爵位継承できたのか」
「二日前にぎりぎり完了したわ。王家の事務って本当、遅くて嫌になっちゃう」
この調子では結婚後、白い結婚を盾に離婚を認めさせるのも大変そうだ。
もっとも、エスティアには引く気などさらさらない。
「何にせよもう明日が結婚式。茶番だけど参加よろしくね、ふたりとも」
それからは三人で独身最後のお茶会を楽しんだ。
婚約者のいるヒロインが、男性と三人で。こういうところは乙女ゲームだなあという気がする。
10
お気に入りに追加
1,257
あなたにおすすめの小説
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました! でもそこはすでに断罪後の世界でした
ひなクラゲ
恋愛
突然ですが私は転生者…
ここは乙女ゲームの世界
そして私は悪役令嬢でした…
出来ればこんな時に思い出したくなかった
だってここは全てが終わった世界…
悪役令嬢が断罪された後の世界なんですもの……
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
婚約破棄の、その後は
冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。
身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが…
全九話。
「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる