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ユーグレン究極の選択
過去の暗殺現場
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ユーグレンたちは彼らから気配を探られぬよう距離を取りながら、後をついていくことにした。
ところが、途中で麗しの叔父と甥を呼び止めた者があった。
服装を見るに、騎士団の職員のようだ。
「えっ。兄さんが僕を呼んでるの?」
不思議そうに首を傾げた若きルシウスに、職員は緊急だと言って同行を促している。
「おじさま。とうさま、よんでるって」
「参ったな。ヨシュア、すぐ戻ってくるから先に行っててくれる?」
「はい!」
どうやら騎士団にいるヨシュアの父、ルシウスの兄が用事があって呼びにきたようだ。
だが甥のヨシュアと離れることに躊躇っている。
すると離宮側から年配の侍従がやってきて、ヨシュアを先に連れてカズンのもとに連れて行ってくれるという。
そこでルシウスは安心してヨシュアを託して、騎士団へと向かった。
その様子に隣で神人ジューアが歯噛みする気配がした。
「愚弟め。少しは他人を疑わんか」
「なるほど、この一連の流れが暗殺者の仕込みだったわけですか」
この後、カズンと合流したヨシュアは二人まとめて暗殺者の襲撃を受ける。
命に関わる怪我をすることはない。その分安心して見ていられるが、代わりに二人は暗殺者の呪詛を受けてそれぞれステータス値が著しく低下してしまうのだ。
「カズン……ヨシュア……」
幸い暗殺者はすぐに捕らえられたが、呪詛を真っ先に受けたカズンは倒れてしまっている。
幼いながらカズンを守ろうとしたヨシュアも、小さな手に出現させた魔法樹脂の魔法剣を持って対抗していたが、彼もまた呪詛を受けてそのまま気を失って崩れ落ちてしまった。
「ヨシュア! か、カズン様も!」
そこにようやく罠だと悟ったのだろう、慌てたルシウスが戻ってきた。
後ろには彼とよく似た、白い軍服姿の年上の青年も息を切らせてついてきている。――ヨシュアの父カイル卿だ。
庭で遊んでいた幼児二人だけでなく、離れて見守っていた騎士たちまで攻撃を受けて血みどろで酷い有様だった。
「おのれ、よくも!」
咄嗟にルシウスがネオンブルーに光る聖剣を両手の中に創り出し、まだ敷地内に潜んでいた他の襲撃者たちに向けて振りかざした。
「待てルシウス!」
「待ちませんよ、兄さん。――滅びよ邪悪な者どもめ!」
大きく頭上に掲げた聖剣をそのまま目の前の空間を切断するように振り下ろす。
ルシウスのネオンブルーの魔力とともに、松の重厚な芳香が辺り一帯に充満した。
視界を埋め尽くすほどのルシウスの魔力が晴れたのは数秒後だ。
「む?」
ルシウスが訝しげに眉間に皺を寄せている。
襲撃者たちは膨大な魔力に当てられて皆倒れて失神していたが、全員その場に残っている。
その意味を理解してルシウスも、傍らでカズンや息子ヨシュアを助け起こしているカイル卿も青ざめていた。
「僕の聖剣の魔力を受けて……無事、だと……?」
愕然とするルシウスを眺めて、ユーグレンはすぐ隣にいるだろう神人ジューアに小声で尋ねた。
「あの。ルシウス様の聖剣の裁きを受けると、人は蒸発すると聞いているのですが」
「邪悪限定でな。つまりあそこに倒れてる者どもは」
「………………私を正しく次期王太子にすべく動いた忠義者たちと聞いております」
「その一点において至誠。そういうことだ」
あああああ、とユーグレンは声に出さずに呻きたい気分でその場で頭を抱えた。
この後の出来事はもう目も当てられなかった。
いつまで経っても離宮内に入ってこない息子たちを迎えに来たカズンの両親は庭の惨状に卒倒しそうになっていたし、人物鑑定スキル特級持ちのカズンの母セシリアが幼児二人を見てパニックを起こしかけていた。
「そろそろ戻るか」
「……はい」
騒ぎの渦中で、気を失っているヨシュアの小さな手が、やはり小さなカズンの手を握りしめているのが見えた。
自分よりずっと長い付き合いの彼らの絆を目の当たりにして、正直ユーグレンは落ち込んだ。
幼い彼らの頭を撫で撫でぐらいできたらなどと思っていたが、とてもとてもそんな気分にはなれなかった。
『夢の世界から覚める!』
ところが、途中で麗しの叔父と甥を呼び止めた者があった。
服装を見るに、騎士団の職員のようだ。
「えっ。兄さんが僕を呼んでるの?」
不思議そうに首を傾げた若きルシウスに、職員は緊急だと言って同行を促している。
「おじさま。とうさま、よんでるって」
「参ったな。ヨシュア、すぐ戻ってくるから先に行っててくれる?」
「はい!」
どうやら騎士団にいるヨシュアの父、ルシウスの兄が用事があって呼びにきたようだ。
だが甥のヨシュアと離れることに躊躇っている。
すると離宮側から年配の侍従がやってきて、ヨシュアを先に連れてカズンのもとに連れて行ってくれるという。
そこでルシウスは安心してヨシュアを託して、騎士団へと向かった。
その様子に隣で神人ジューアが歯噛みする気配がした。
「愚弟め。少しは他人を疑わんか」
「なるほど、この一連の流れが暗殺者の仕込みだったわけですか」
この後、カズンと合流したヨシュアは二人まとめて暗殺者の襲撃を受ける。
命に関わる怪我をすることはない。その分安心して見ていられるが、代わりに二人は暗殺者の呪詛を受けてそれぞれステータス値が著しく低下してしまうのだ。
「カズン……ヨシュア……」
幸い暗殺者はすぐに捕らえられたが、呪詛を真っ先に受けたカズンは倒れてしまっている。
幼いながらカズンを守ろうとしたヨシュアも、小さな手に出現させた魔法樹脂の魔法剣を持って対抗していたが、彼もまた呪詛を受けてそのまま気を失って崩れ落ちてしまった。
「ヨシュア! か、カズン様も!」
そこにようやく罠だと悟ったのだろう、慌てたルシウスが戻ってきた。
後ろには彼とよく似た、白い軍服姿の年上の青年も息を切らせてついてきている。――ヨシュアの父カイル卿だ。
庭で遊んでいた幼児二人だけでなく、離れて見守っていた騎士たちまで攻撃を受けて血みどろで酷い有様だった。
「おのれ、よくも!」
咄嗟にルシウスがネオンブルーに光る聖剣を両手の中に創り出し、まだ敷地内に潜んでいた他の襲撃者たちに向けて振りかざした。
「待てルシウス!」
「待ちませんよ、兄さん。――滅びよ邪悪な者どもめ!」
大きく頭上に掲げた聖剣をそのまま目の前の空間を切断するように振り下ろす。
ルシウスのネオンブルーの魔力とともに、松の重厚な芳香が辺り一帯に充満した。
視界を埋め尽くすほどのルシウスの魔力が晴れたのは数秒後だ。
「む?」
ルシウスが訝しげに眉間に皺を寄せている。
襲撃者たちは膨大な魔力に当てられて皆倒れて失神していたが、全員その場に残っている。
その意味を理解してルシウスも、傍らでカズンや息子ヨシュアを助け起こしているカイル卿も青ざめていた。
「僕の聖剣の魔力を受けて……無事、だと……?」
愕然とするルシウスを眺めて、ユーグレンはすぐ隣にいるだろう神人ジューアに小声で尋ねた。
「あの。ルシウス様の聖剣の裁きを受けると、人は蒸発すると聞いているのですが」
「邪悪限定でな。つまりあそこに倒れてる者どもは」
「………………私を正しく次期王太子にすべく動いた忠義者たちと聞いております」
「その一点において至誠。そういうことだ」
あああああ、とユーグレンは声に出さずに呻きたい気分でその場で頭を抱えた。
この後の出来事はもう目も当てられなかった。
いつまで経っても離宮内に入ってこない息子たちを迎えに来たカズンの両親は庭の惨状に卒倒しそうになっていたし、人物鑑定スキル特級持ちのカズンの母セシリアが幼児二人を見てパニックを起こしかけていた。
「そろそろ戻るか」
「……はい」
騒ぎの渦中で、気を失っているヨシュアの小さな手が、やはり小さなカズンの手を握りしめているのが見えた。
自分よりずっと長い付き合いの彼らの絆を目の当たりにして、正直ユーグレンは落ち込んだ。
幼い彼らの頭を撫で撫でぐらいできたらなどと思っていたが、とてもとてもそんな気分にはなれなかった。
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