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ユーグレン究極の選択

麗しの叔父と甥

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  * * *



「ここは……」

 記憶の中にあるアケロニア王家の離宮の一つだった。
 王宮と同じ敷地にあるが、庭園をいくつか挟んでいる分だけ奥にあり離れている。
 ユーグレンと神人ジューアは住居エリアへ向かう回廊の途中に立っていた。

「お前の姿は人に見られぬほうが良いな。これを被れ」

 とジューアが薄くて半透明のフード付きマントを寄越してきた。彼女に倣って身につけると自分の身体が周囲の景色に溶け込んで姿がわからなくなった。
 同じマントを被った目の前にいるはずのジューアも姿も消えたように見えなくなっている。

「隠遁のローブという。さあ、勇者の末裔のもとへ行くぞ」
「はい、ジューアお姉様」

 確かこの頃カズンが両親と住んでいた離宮は、カズンの養育を最優先するため建物や設備の改修を行なっていたと聞いたことがある。

 とそのとき、遠くから幼い子供のはしゃいだ声が聞こえてきた。
 ユーグレンたちが歩いている回廊の、王宮側の入口からだ。この離宮へは一度王宮側に回らないと入れない。

「あのねあのね、おじさま。きょうはカズンさまとおにわをかけっこしてあそぶやくそくなの」
「庭なの? 壁じゃなくて?」
「かべも! のぼりたいです! でもごえいのきしさまたちにおこられないかな?」
「僕が一緒なら平気だと思うよ」
「じゃあおじさまもいっしょ!」
「うんうん」

「!」

 ヨシュアと、叔父のルシウスだ。ヨシュアはこの頃四歳のはずだが二歳半くらいに見える。魔力が大きい子供は成長が遅いと聞くのでそのせいだろう。
 幼児ヨシュアを腕に抱っこしているルシウスが、これまた……

「ルシウス様、お若いな……」

 現実世界だと確か彼は三十八。バイタリティ溢れる立派なイケオジだが、まだ十代後半の今はまさに文句なしの美少年だ。
 しかし彼より何より。

「ヨシュア……か、可愛すぎだろう……ああああ、尊い……っ」

 幼くともリースト一族特有の麗しの容貌は健在だった。そこに幼児の愛らしさが加わって、今のヨシュアにはあまり見られないルシウスへの甘えた態度、少し舌足らずの口調、まさに天使の如き神々しさ。

「写真、写真を撮りたい……!」
「当時の写真や絵姿ならリースト家にあるはずだぞ。譲ってもらえば良かろう」
「は!? お姉様、ならばぜひお口添えを!」
「……まあ言うだけなら構わんが」
「お姉様、このユーグレン、貴女に一生ついて参ります!」

 この瞬間、アケロニア王国の次期国王と神人ジューアに確かな絆が結ばれた。これまで冗談で彼女の舎弟になっていたこととは次元が違う深い絆だ。
 このことが縁でとんでもない未来に繋がっていくわけだが、今の時点ではまだ兆しもないことだった。





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