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第二章 異世界ど田舎村を救え!
エピローグ その頃、日本では~元後輩鈴木
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ああ~今日もかったるい仕事が終わった終わった!
ども、お久し振りのユウキ先輩のかわいい後輩鈴木っス。
残業はなかったけど、もう社宅に帰って自炊もダルいので途中にあるファミレス寄って飯食ってるとこ。
「お、『異世界幼女を見守り隊スレ』に活気があるじゃん」
ファミレスに来たらまずドリンクバーでメロンソーダ。
適当にミニサラダと、マルゲリータピザを頼んでネット掲示板アプリを立ち上げると、ユウキ先輩が久し振りにネット掲示板に幼女と美少年の写真画像を挙げていた。
山の中の川で水しぶきをあげて楽しそうな光景。速攻で検証班に場所を特定されている。もなか村にある、もなか川の川原だそうだ。
「!?」
メロンソーダが気管の変なとこに入った。ゴホゴホっと咽せながら画像を凝視する。
その画像の隅で黒髪の少年が見切れていた。写っているのは横顔の一部だけ。異世界の地元民だろうか? いいや、違う。
「……お兄ちゃん」
オレが見間違えるわけがない。オレが今住んでる単身者用の社宅には、実家から持ち込んだ数少ない私物がある。
――まだ家族全員が一緒に一つの家で暮らしてた頃の写真アルバムだ。なんだかんだ月命日になると毎回見ちまうやつで、数日前も見たばっかり。
オレの名前は鈴木オサム。でも子供の頃は違う苗字だった。御米田オサムがオレの元々の名前だ。
まだ小学校だったガキの頃、兄がバイト先の事故で死んだ。大雪の日に、雪の重みで落ちてきた看板に押し潰されてほとんど即死だったそうだ。
葬式が終わった後、兄の部屋から出てきた日記から、母親が兄を虐待してたことが判明した。
そこからは人生初の修羅場でしたね……
両親は即離婚。しかも離婚調停の過程ではオレが父ではない他の男の息子だと判明。こういうの托卵て言うらしいスよ。鳥のカッコウみたいによその男の卵を旦那に育てさせるっていう。知りたくなかったわそんな無駄知識。
オレ、大好きだったお父さんやお兄ちゃんとはまったくの他人だったんだ。死ぬほど泣いた。
それでもオレを可愛がってくれてた父はオレを引き取ってくれようとしたんだが、残念ながら親権は母親の手に渡ってしまった。
幸いというか母親は実家が極太だったので、一年ぐらい祖父母の家で世話になった後再婚した。その相手が鈴木さん。今のオレの苗字をくれた人だ。
それからオレが高校に進学する頃までは平和だった。
だけど兄の何回忌めかを過ぎた頃にクソババアがまたやらかした。オレが通ってた私立高校の同級生の父親と不倫したんだ。
修羅場地獄再び。もちろん母と再婚相手はそのまま揉めに揉めた後で離婚した。
ただオレに幸運だったのは、鈴木さんがオレをそのまま養子として引き取ってくれたことだ。
あの毒母の元にいたらろくな大人にならないと男気を見せてくれたわけだ。
ただ多感な思春期にクソ母に人生引っ掻き回されたオレはグレまくって、進学した大学も見事な三流大。出席だけしてれば単位をくれるゴミ大学で有名なところしか行けなかった。
鈴木さんに心配されながらも大学からは家を出た。
クソ母の実家の、金持ち祖父母の支援があったから金には困らない。バイトもしないでたくさんの小遣いでコミケ通ってフィギュア集めまくってたわ。
元から好きだったロボット物もだし、お兄ちゃんが好きだったラノベがアニメ化してさ。関連グッズ集めるのは供養になるかもって。
で、卒業後はもう日本にいてあのクソババアと同じ空気を吸ってたくなかったので、海外出向の多い企業を選んだ。
適当に選んだ中で適当に受かったのが今勤めてる東京新橋の総合商社だ。
オレの大学からじゃ選べないはずの優良企業だったけど、応募した年はたまたま希望者数の定員割れで人数合わせで採用されちまったのがこのオレですわ。
就職後もやる気ゼロで、首にするならしてみろよって舐めくさってた態度でいたオレに、なぜかこの会社は優しかった。
古い会社だったから教育制度が完備されていたともいう。
絶対向いてないだろって営業部に配属されて、オレの上司として教育係になった人との顔合わせのときオレは人生で初めて神ってやつに感謝することになる。
『御米田ユウキだ。お前の世話役になる。一人前の男にしてやるからな、覚悟してろ?』
どーんと体格のいい高身長に濃紺のスーツ、真紅のネクタイ、ピカピカの黒の革靴を着こなし履きこなしてたその男こそがユウキ先輩でしたわ。
……従兄弟じゃん。まあ血は繋がってなかったけどさ。
残念だけど向こうはオレのことを覚えていなかった。
まあ仕方ない。オレは苗字も御米田から鈴木に変わってたし。
会ったのもカズアキお兄ちゃんの葬式のときの一度っきりだったしな。オレは大人たちの険悪な空気が怖くて葬儀会場でも、家に帰ってきてからもコソコソ隠れてたから会話も俯きがちの挨拶ぐらいしかしてなかった。
お兄ちゃんの墓参りも何回忌の法要も、オレは毒母のせいで結局一度も参加できていなかったから。
それから毎日が楽しかった。大好きだったお父さんやお兄ちゃんそっくりのユウキ先輩が、本当に何から何まで面倒見てくれて。
あの人なかなか多趣味で。オレのフィギュアやソシャゲ趣味にも付き合ってくれて、月に何回かは休日に互いの部屋に遊びに行ったりしてさ。
平日も仕事を上がる時間が合うと、リーマン街の新橋だから近所の居酒屋寄ったり、給料日前は今いるファミレス寄って安ワイン飲んで駄弁ったりしていた。数回に一回ぐらいは奢ってくれるし。
ユウキ先輩がいたから、人生に不貞腐れてたオレもなんとか社会人として生きていけた。
オレのお父さんやお兄ちゃんは、今どき珍しい真っ黒な髪と真っ黒な目をした、惚れ惚れするような美男子だった。二重の切れ長な目元とか本当に身内のオレから見ても格好良くて。
オレは母親似の、色白だけど目の細いパッとしない地味顔だから羨ましかったもんだ。そりゃ気付いてもらえないわけですわ。
ネット掲示板からお兄ちゃんの写っていた写真をダウンロードして、慎重に保護をかけた。ついでにネットのデータ保存クラウドサービスにも保存。これでスマホが壊れても復元できる。
「………………連絡入れとこっと」
二杯目のメロンソーダお代わりして、オレはスマホのメッセージアプリを立ち上げた。
兄の見切れ画像を送信。送り先は――御米田ゲンキ。ユウキ先輩の父親だ。
両親が離婚して、オレは本当の父親じゃなかったお父さんとは縁が切れてしまった。
だけどお父さんの兄のこのゲンキ伯父さんとだけ、御米田家の人と電話やメール、スマホを持つようになってからはメッセージアプリで繋がっていた。
前に、同じファミレスでみどり社長が御米田家の面々と撮った昔の写真を見せてくれたときは驚いてみせたけど、さすがにあの場で「知ってます、オレ元御米田だったんで」とか言えるわけないっスわ。
ピコン!
返信がすぐに来た。
「へえ。伯父さん、いま日本に戻って来てるんだ。……ってみどり社長のとこいるのかよ。………………え、浅草まで来いって? マ?」
明日も仕事なんだけどと返信すると、『明日の朝、会社まで送るから着替え持っておいで』と来たもんだ。
マジかよ、泊まりに来いってか。
スマホで時刻を確認した。退勤後すぐファミレス来たからまだ夕方六時過ぎだ。今から社宅帰って、着替えて浅草に向かえば八時前に着くだろう。
「情報交換したいし。行きますか」
まだサラダとピザとドリンクバーしか頼んでなかった。この後チキンもがっつりいく予定を切り上げて店を出た。
「うっわ。暑いな」
ファミレスを出るなりムワッときた夏の空気に顔をしかめた。
気づいたらもう八月だ。ユウキ先輩が退職した五月から三ヶ月。この間いろいろありすぎてさすがのオレも目が回りそう。
「先輩は異世界転移。死んだはずのお兄ちゃんまでいる。……ハハッ、なんでそんな楽しいことになってんだよって」
いいなあ。オレも異世界転移して二人に会いたい。
そうして着いた浅草ではゲンキ伯父さんが泊まってるホテルのバーを訪ねて。
行ったら伯父さんだけでなく、みどり社長とまさかのあの八十神の野郎がいて。
話を聞いたらみーんな異世界関係者だって……
なんだそれ。ずるい。
でも面白そうだったから、ゲンキ伯父さんが立ち上げた異世界研究会にオレも加わることにした。
八十神までいるのは気に食わなかったけど、事情を聞いたら、わだかまりを持ってるより積極的に関わったほうがお得なようだ。
それにこの頃になると、ユウキ先輩と八十神がおかしくなって拗れてた原因が二人の元カノ野口先輩にあることもわかっていた。
まあ、まあ……水に流してやってもいいっスよ。
でもしばらくはチクチク八十神を突っついてストレス解消させてもらいますわ。
バーで秘密の話し合いをして、日付が変わる前にお社長と八十神は帰っていった。
八十神は近々会社を辞めて、お社長の配下になるようだ。
オレはもう終電に間に合わないので、ゲンキ伯父さんと同じホテルに一晩泊まらせてもらうことに。
クレジットカードのステータスとかで、元々一人だったけどツインルームにグレードアップされてたそうでちゃんとオレもベッドで眠れた。
伯父さんと他愛ない話をして眠りについた真夜中。
ピコン!
(なんだよこんな時間に……)
枕元のスマホに表示された名前は『浜那珂はるみ』
お兄ちゃんが死ぬ原因を作り、家族を崩壊させた挙句に実子のオレまで捨てたクソ女から通話が来た――
もちろんそのまま無視したけど。
着信拒否設定は……朝起きたらにしよう。
と思って忘れてたら最悪なタイミングでまた電話が来ることになるんだが、ホテルのふかふかのベッドと布団で眠るオレは何も知らないままぐっすり夢の中へ旅立っていった……
二章完、三章に続く
※まさかの鈴木オチ。
NEXT→おまけ、御米田はピンクのウーパールーパーの夢を見た……
ども、お久し振りのユウキ先輩のかわいい後輩鈴木っス。
残業はなかったけど、もう社宅に帰って自炊もダルいので途中にあるファミレス寄って飯食ってるとこ。
「お、『異世界幼女を見守り隊スレ』に活気があるじゃん」
ファミレスに来たらまずドリンクバーでメロンソーダ。
適当にミニサラダと、マルゲリータピザを頼んでネット掲示板アプリを立ち上げると、ユウキ先輩が久し振りにネット掲示板に幼女と美少年の写真画像を挙げていた。
山の中の川で水しぶきをあげて楽しそうな光景。速攻で検証班に場所を特定されている。もなか村にある、もなか川の川原だそうだ。
「!?」
メロンソーダが気管の変なとこに入った。ゴホゴホっと咽せながら画像を凝視する。
その画像の隅で黒髪の少年が見切れていた。写っているのは横顔の一部だけ。異世界の地元民だろうか? いいや、違う。
「……お兄ちゃん」
オレが見間違えるわけがない。オレが今住んでる単身者用の社宅には、実家から持ち込んだ数少ない私物がある。
――まだ家族全員が一緒に一つの家で暮らしてた頃の写真アルバムだ。なんだかんだ月命日になると毎回見ちまうやつで、数日前も見たばっかり。
オレの名前は鈴木オサム。でも子供の頃は違う苗字だった。御米田オサムがオレの元々の名前だ。
まだ小学校だったガキの頃、兄がバイト先の事故で死んだ。大雪の日に、雪の重みで落ちてきた看板に押し潰されてほとんど即死だったそうだ。
葬式が終わった後、兄の部屋から出てきた日記から、母親が兄を虐待してたことが判明した。
そこからは人生初の修羅場でしたね……
両親は即離婚。しかも離婚調停の過程ではオレが父ではない他の男の息子だと判明。こういうの托卵て言うらしいスよ。鳥のカッコウみたいによその男の卵を旦那に育てさせるっていう。知りたくなかったわそんな無駄知識。
オレ、大好きだったお父さんやお兄ちゃんとはまったくの他人だったんだ。死ぬほど泣いた。
それでもオレを可愛がってくれてた父はオレを引き取ってくれようとしたんだが、残念ながら親権は母親の手に渡ってしまった。
幸いというか母親は実家が極太だったので、一年ぐらい祖父母の家で世話になった後再婚した。その相手が鈴木さん。今のオレの苗字をくれた人だ。
それからオレが高校に進学する頃までは平和だった。
だけど兄の何回忌めかを過ぎた頃にクソババアがまたやらかした。オレが通ってた私立高校の同級生の父親と不倫したんだ。
修羅場地獄再び。もちろん母と再婚相手はそのまま揉めに揉めた後で離婚した。
ただオレに幸運だったのは、鈴木さんがオレをそのまま養子として引き取ってくれたことだ。
あの毒母の元にいたらろくな大人にならないと男気を見せてくれたわけだ。
ただ多感な思春期にクソ母に人生引っ掻き回されたオレはグレまくって、進学した大学も見事な三流大。出席だけしてれば単位をくれるゴミ大学で有名なところしか行けなかった。
鈴木さんに心配されながらも大学からは家を出た。
クソ母の実家の、金持ち祖父母の支援があったから金には困らない。バイトもしないでたくさんの小遣いでコミケ通ってフィギュア集めまくってたわ。
元から好きだったロボット物もだし、お兄ちゃんが好きだったラノベがアニメ化してさ。関連グッズ集めるのは供養になるかもって。
で、卒業後はもう日本にいてあのクソババアと同じ空気を吸ってたくなかったので、海外出向の多い企業を選んだ。
適当に選んだ中で適当に受かったのが今勤めてる東京新橋の総合商社だ。
オレの大学からじゃ選べないはずの優良企業だったけど、応募した年はたまたま希望者数の定員割れで人数合わせで採用されちまったのがこのオレですわ。
就職後もやる気ゼロで、首にするならしてみろよって舐めくさってた態度でいたオレに、なぜかこの会社は優しかった。
古い会社だったから教育制度が完備されていたともいう。
絶対向いてないだろって営業部に配属されて、オレの上司として教育係になった人との顔合わせのときオレは人生で初めて神ってやつに感謝することになる。
『御米田ユウキだ。お前の世話役になる。一人前の男にしてやるからな、覚悟してろ?』
どーんと体格のいい高身長に濃紺のスーツ、真紅のネクタイ、ピカピカの黒の革靴を着こなし履きこなしてたその男こそがユウキ先輩でしたわ。
……従兄弟じゃん。まあ血は繋がってなかったけどさ。
残念だけど向こうはオレのことを覚えていなかった。
まあ仕方ない。オレは苗字も御米田から鈴木に変わってたし。
会ったのもカズアキお兄ちゃんの葬式のときの一度っきりだったしな。オレは大人たちの険悪な空気が怖くて葬儀会場でも、家に帰ってきてからもコソコソ隠れてたから会話も俯きがちの挨拶ぐらいしかしてなかった。
お兄ちゃんの墓参りも何回忌の法要も、オレは毒母のせいで結局一度も参加できていなかったから。
それから毎日が楽しかった。大好きだったお父さんやお兄ちゃんそっくりのユウキ先輩が、本当に何から何まで面倒見てくれて。
あの人なかなか多趣味で。オレのフィギュアやソシャゲ趣味にも付き合ってくれて、月に何回かは休日に互いの部屋に遊びに行ったりしてさ。
平日も仕事を上がる時間が合うと、リーマン街の新橋だから近所の居酒屋寄ったり、給料日前は今いるファミレス寄って安ワイン飲んで駄弁ったりしていた。数回に一回ぐらいは奢ってくれるし。
ユウキ先輩がいたから、人生に不貞腐れてたオレもなんとか社会人として生きていけた。
オレのお父さんやお兄ちゃんは、今どき珍しい真っ黒な髪と真っ黒な目をした、惚れ惚れするような美男子だった。二重の切れ長な目元とか本当に身内のオレから見ても格好良くて。
オレは母親似の、色白だけど目の細いパッとしない地味顔だから羨ましかったもんだ。そりゃ気付いてもらえないわけですわ。
ネット掲示板からお兄ちゃんの写っていた写真をダウンロードして、慎重に保護をかけた。ついでにネットのデータ保存クラウドサービスにも保存。これでスマホが壊れても復元できる。
「………………連絡入れとこっと」
二杯目のメロンソーダお代わりして、オレはスマホのメッセージアプリを立ち上げた。
兄の見切れ画像を送信。送り先は――御米田ゲンキ。ユウキ先輩の父親だ。
両親が離婚して、オレは本当の父親じゃなかったお父さんとは縁が切れてしまった。
だけどお父さんの兄のこのゲンキ伯父さんとだけ、御米田家の人と電話やメール、スマホを持つようになってからはメッセージアプリで繋がっていた。
前に、同じファミレスでみどり社長が御米田家の面々と撮った昔の写真を見せてくれたときは驚いてみせたけど、さすがにあの場で「知ってます、オレ元御米田だったんで」とか言えるわけないっスわ。
ピコン!
返信がすぐに来た。
「へえ。伯父さん、いま日本に戻って来てるんだ。……ってみどり社長のとこいるのかよ。………………え、浅草まで来いって? マ?」
明日も仕事なんだけどと返信すると、『明日の朝、会社まで送るから着替え持っておいで』と来たもんだ。
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まだサラダとピザとドリンクバーしか頼んでなかった。この後チキンもがっつりいく予定を切り上げて店を出た。
「うっわ。暑いな」
ファミレスを出るなりムワッときた夏の空気に顔をしかめた。
気づいたらもう八月だ。ユウキ先輩が退職した五月から三ヶ月。この間いろいろありすぎてさすがのオレも目が回りそう。
「先輩は異世界転移。死んだはずのお兄ちゃんまでいる。……ハハッ、なんでそんな楽しいことになってんだよって」
いいなあ。オレも異世界転移して二人に会いたい。
そうして着いた浅草ではゲンキ伯父さんが泊まってるホテルのバーを訪ねて。
行ったら伯父さんだけでなく、みどり社長とまさかのあの八十神の野郎がいて。
話を聞いたらみーんな異世界関係者だって……
なんだそれ。ずるい。
でも面白そうだったから、ゲンキ伯父さんが立ち上げた異世界研究会にオレも加わることにした。
八十神までいるのは気に食わなかったけど、事情を聞いたら、わだかまりを持ってるより積極的に関わったほうがお得なようだ。
それにこの頃になると、ユウキ先輩と八十神がおかしくなって拗れてた原因が二人の元カノ野口先輩にあることもわかっていた。
まあ、まあ……水に流してやってもいいっスよ。
でもしばらくはチクチク八十神を突っついてストレス解消させてもらいますわ。
バーで秘密の話し合いをして、日付が変わる前にお社長と八十神は帰っていった。
八十神は近々会社を辞めて、お社長の配下になるようだ。
オレはもう終電に間に合わないので、ゲンキ伯父さんと同じホテルに一晩泊まらせてもらうことに。
クレジットカードのステータスとかで、元々一人だったけどツインルームにグレードアップされてたそうでちゃんとオレもベッドで眠れた。
伯父さんと他愛ない話をして眠りについた真夜中。
ピコン!
(なんだよこんな時間に……)
枕元のスマホに表示された名前は『浜那珂はるみ』
お兄ちゃんが死ぬ原因を作り、家族を崩壊させた挙句に実子のオレまで捨てたクソ女から通話が来た――
もちろんそのまま無視したけど。
着信拒否設定は……朝起きたらにしよう。
と思って忘れてたら最悪なタイミングでまた電話が来ることになるんだが、ホテルのふかふかのベッドと布団で眠るオレは何も知らないままぐっすり夢の中へ旅立っていった……
二章完、三章に続く
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