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第二章 異世界ど田舎村を救え!

俺、ユキりん尋問

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 さて、今度こそもなか山の事後処理を終え、倒した魔物の亡骸も回収して。これは食える肉もあるし売れる素材も多いので村の大事な資金源だ。

 俺たちはばあちゃんとピナレラちゃんも一緒に男爵の屋敷に集まった。

 もう昼をとっくに過ぎておやつの時間のほうが近かったが、飯の前にすべき話がある。
 幼いピナレラちゃんには悪いが、あとちょっとだけ我慢してけろ。

「ユキりん。いやユキリーン・リースト。お前、さすがにもういいだろう。全部白状しろ?」

 今回大活躍のユキりんだが、さすがにこれ以上素性を隠されたままなのは良くない。

「………………」

 だんまりのユキりんに俺は心を鬼にした。

「話さないなら飯抜きだ」
「リースト男爵家の四男ユキリーンです。アケロニア王国の代表的な魔法の大家リースト伯爵家の分家にあたり、魔法剣士で……王都の学生でした」

 おいおい。これまでの秘密主義はどこ行ったってくらいあっさりゲロったじゃん。
 飯抜き懲罰は奴隷商に囚われて辛い思いをしたこの子には本当に奥の手にしなきゃなのに。

「僕は分家出身ですが魔力量が多くて、通ってた学園の成績も良かったので将来的にはご本家ご嫡男の側近候補とされていました」

 俺は男爵と顔を見合わせた。実はここまでは男爵がとっくに王都に問い合わせて判明してたんだ。
 俺たちが知りたかったのは王都のエリート学生だったユキりんが、なぜ奴隷商に誘拐されてど田舎村まで逃げてきたか。その経緯だ。

「僕が誘拐されたのは中等部第二学年に進学してすぐの頃です。僕のリースト家というのはとても特徴的な外見を持つんです。青銀の髪、 湖面の水色ティールカラーの瞳の美貌の……一族で」

 ユキりんは俯いて、自分のショコラブラウンの柔らかな前髪をひと束摘まんだ。

「クラスの誰かが言い出したんです。『お前、リースト一族の癖に全然見た目が違うじゃないか。養子? それとも母親の不義の子か?』って」
「………………」
「もちろん僕は正しき両親の子です。僕は髪と目の色は母似で、顔は父そっくりですから。でもその日からクラスの何人かが僕を見るたび不義の子だとからかいはじめて、僕は……教室から逃げ出すようになりました」

 授業だけは受けてたようだが、昼休みや放課後は教室やクラスメイトから離れてたらしい。

「孤立する僕に近づいてくる女子生徒がいました。相手にしてなかったんだけど、一人でいるところを狙われて放課後、下校するときギルガモス商会の手の者に誘拐されて連れ去られました。そこで魔力封じの枷や呪詛をかけられて……なんとか命からがら逃げ出して、たどり着いたのが」
「ど田舎村だったってわけか」

 誘拐されるまでの経緯以外は、最初に保護した頃に俺たちにユキりんが話してたことばかりだ。
 この子は何を俺たちに隠したかったんだ? と俺は内心で首を傾げた。

「ユキリーン君。実家に帰りたくはないのかい?」

 いい加減、正体バレしたし男爵もそう訊ねたのだがユキりんは頷かなかった。

「……僕は一族の色を持たないことで家族にものすごい迷惑をかけています。母なんて不貞疑惑までかけられてしまって。誘拐される数日前の夜、一人で泣いているところを見てしまったんです。戻ったってまた学園で同じ奴らに言いがかりをつけられる。……僕はいないほうがいいんだ」
「だけど君、まだ未成年だしご家族から失踪届も出されてるよ。手紙だけでも書いたほうがいい」

 正論で諭してくる男爵にユキりんは首を振った。

「奴隷商に囚われる辱めを受けてどのツラ提げて帰れって言うんですか。せめてギルガモス商会を潰すぐらいしないと絶対に戻れない」
「……そうけえ」

 ショコラブラウンの柔らかな髪をぽんぽんしながら、俺はユキりんを優しい子だと思った。優しくて、……まだ弱い子なのだ。

 なんてことだ。俺だったら言われっぱなしなんかしねえのになあ。
 いじめっ子たちまとめて油性ペンで鼻毛ブーにしてやったのに。鼻の穴から三本ずつぶっといの描いてやったのに。
 こりゃあうちの次男でいるうちに図太くなれるよう、教え込まねばなんね。

「参ったね。ユキリーン君、幸運値低いだろ?」
「……はい。2しかありません。そりゃ誘拐もされるっていうか」

 ユキりんの返事に男爵が溜め息をついている。ステータスは十段階で平均は5。
 幸運値の場合、平均値を下回るとなにかとトラブルの多い人生になるそうだ。

「しょんな……ユキリーンちゃ、こううん2ちかないの……」

 ピナレラちゃんがふるふる震えている。そうだよな、まさか大好きなユキりんが罰ゲーム並の低ステータスだなんて。

 と思ったら違ったようだ。ユキりんに駆け寄って小さなお手々でユキりんの手をぎゅーっとした。

「これはうんめい! ユキリーンちゃ! あたち! あたち9! あたちといっちょならユキリーンちゃもうへいき!」

 うちの四歳児が逞しすぎる。要約すると、幸運値9の高ステータスのピナレラちゃんと一緒にいればユキりんの低幸運値の弊害は出ないぞと言いたいのだ。

 ……まじで?
 そうか……そういうことなら、致し方あるまい……!
 俺は男泣きしてユキりんの肩を抱いた。

「ユキりんよ。君にピナレラちゃんを託す!」
「託されてどうしろっていうんですか……。ユウキさん、泣いてるの?」
「泣いてない! これはただの汗だ!」

 仕方ない……ユキりんの安全のためにめんこい幼女との仲を認めて……認め……たくないが……黙認してやるべさー!!





NEXT→御米田は賄賂の大切さを思い知った……

御米田は車◯泣き。もう絶対、幼女にお婿しゃんにしてもらえないことが確定した……🥺
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