異世界転移！？～俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

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第二章　異世界ど田舎村を救え！

俺、偉大なウパルパ様を崇める　※イラストあり

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　だが傭兵たちは川を越えてくることはなかった。
　……踏み込んだ奴から川の水に足を取られて川の中に沈んでいったからだ。

「あ。そうか。この川、もなか川だ」

　俺たちが見ている前で、ほんの十メートルもない距離にいた傭兵たちが次々と川に引き摺り込まれるように沈んでいく。
　助けようとした者も問答無用で川は飲み込んでいった。そう、傭兵だけでなく魔法使いも、あの新人商会員を装ったスパイ女子も等しく……そして敵は全員もなか川へと飲み込まれていった。

　ユキりんが幼くも麗しく美しい顔をひきつらせている。

「えっと。この川、魔物でもいるんですか」
「ないない。でも、……田舎の川を舐めるな」

　もなか川はもなか村の山側を流れる川で、幅も平均五、六メートルほどで大きくもない。

　ただし、ものすごく底が深いのだ。水の流れと岩や砂利、苔などの生え具合でそう見えないだけで、俺みたいな大人の男でも足が届かない場所がある。
　だから前に川原で芋煮やったときも、やったのは釣りだけで、お子たち二人を川遊びはさせなかったべ？

　しかも長い藻が生えていて足や身体に絡みついてくる。
　昔はそんなヤベエ藻なんて生えてなかったそうだが、例のゴルフ場から垂れ流される除草剤など農薬の影響で一気に繁茂したと聞く。

　俺や従兄弟が子供の頃に遊んだときとはまた事情が違う。
　親父たち大人が流れの緩やかで浅いところをあらかじめ探しておいて、怪我しそうな岩や小石、藻をできる限り除去して、かつ網で囲いを設置した中だけで泳いでいたから安全だった。

　地元では奥の細道の松尾芭蕉の有名な俳句をもじって『さみだれを　集めて深し　もなか川』なんてパロディ句が読まれるほどだ。

「わあ。わるいやちゅ、みんなながれたったー」
「アッ。こらピナレラちゃん！　来るな！　危ねえがらばあちゃんとこで大人しくさしてろ！」

　ハッとなって振り向くと、ばあちゃんと手を繋いだピナレラちゃんがビックリ顔で流れていく傭兵たちを見つめていた。
　誰だ、なんでこの二人を連れてきた！？
　村長や勉さん、男爵や戦える村の男性たち、隣町の自警団もいる。

「お前も油断すんなユウキ！　トドメ刺すかせめて水ん中沈めろい！」
「いや勉さん、大丈夫でしょ。だってこの川ってさ……」

　繰り返すが、田舎の川を舐めるな。
　底が深くて流れも早い。泳ぎに自信のある者でも上がれずそのまま溺れてしまうのだ。ほおら傭兵たちもついに力尽きて沈んでおるわ。

「川の下流はそのまま海に繋がってるんだ。運が良ければ生きてると思うけど」

　男爵が言う。海まで出たらもうど田舎領外だ。そこからまた戻ってくるのも難しいだろう。そもそも川は下流に行くほど広く深くなるものだ。あいつら……生き残れるのか？　無理だべ？
　男爵が下流への水門をキュッと閉めさせた。さようなら傭兵たちよ。あとでせめて成仏を祈ってやるからな。般若心経ぐらいなら俺でも読めるっぺ！

　さて。俺は隣にいたユキりんと顔を見合わせ、それぞれ「ステータスオープン」とつぶやいた。

「うわ。幸運値に＋∞が付いてる」
「幸運値フルマックス・インフィニティ。すごいな……」

　大剣の魔石はまだ黄色に光っている。そういえば効果は一時間と言っていたか。
　周りを見回すと、どうやら男爵や村長、ベンさん、他のど田舎村の人たちのステータスにも同じ効果が出ているようだ。

「ユキリーンちゃ。まっきいろ？」

　あのウーパールーパーが放った黄色い光がユキりんの全身を包み込んでいる。
　と思ったらパキンパキンパキンと何かが砕ける音がしてユキりんの全身から再び鮮やかな紫色の魔力が吹き出してきた。

　魔力は一本の細長い透明な棒に収束し、次の瞬間には紫の魔力を帯びた青白い刃を持つ長槍へと変化した。
　魔力切れで形を保てなくなって消えてしまったはずのユキりんの魔法槍だ。

「呪詛が解けた！　これでまだ戦える！」

　ついでにユキりんの元気もチャージされたようだ。もちろん俺も。

「ピンクのウーパールーパー……あんた、凄かったぜ……」

　まだ午前中の、木々の隙間から覗く青い空にピンクのウパルパ様を思い、俺は敬礼した。

　少なくともあの宇宙人三人組よりはずっとずっとお役立ちだった。
　今度からは大剣を通して王様だけでなく、あのウパルパ様にも祈りを捧げよう。

　可愛い嫁っ子さ見つかりますよーにっ！

　さて残るは事後処理だ。
　川に沈んで流れていった傭兵たちはもう仕方ないが、山の中には六、七名ほどユキりんが足止めして麻痺させた連中が生き残っている。

　男爵の指示で生き残りを回収していたところ、聞き覚えのない若い男の涼やかな声が聞こえた。

「あれ？　助け……は要らなかったようですね？」

　俺とよく似た黒髪黒目のイケメンがひょっこり現れたのだ。

NEXT→御米田はまさかの再会に驚く……