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第二章 異世界ど田舎村を救え!

俺、敵を迎え撃つ!

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「ユキりん、マウンテンバイク、道路まで出してくれ!」
「はい!」
「ばあちゃんとピナレラちゃんは玄関前で村長たちが来るの待って合流、あとは男爵の指示に従うこと!」
「んだ、わがっだ」
「わかりまちた!」

 一通り簡単な指示を出して、俺はマウンテンバイクに跨った。さすがにユキりんも二ケツ嫌とは言わなかった。おとなしく後ろのサイドステップに両足をかけて俺の腹に両腕を回した。

「ところでユキりんて戦えるのか?」
「戦えます。これでも毎週、魔物狩りに出動してたんですよ。ドラゴン、美味かったでしょ?」
「マジかあ。……期待してるぞ主戦力様!」

 来る日も来る日も美味しくいただいたドラゴン肉の狩人さんだったかあ……道理でピナレラちゃんが飽きたって言い出したらすぐ次の日から肉が変わったわけだ。
 しかし事後報告とはいただけぬ。この事態を乗り切れたらそこも家族としてしっかり叩き込まねばなんね。

 とそんな話は後だ。俺はマウンテンバイクのギアを一番上にして全速力でもなか山を目指した。

 侵入者が結界を壊しかけている場所は、もなか川のある場所より奥、頂上手前あたりの開けた見晴らし台のあるところだ。
 やはりここから侵入してくるか!

 マウンテンバイクで山道を登れるだけ登って、俺たちは川の手前で乗り捨てて現場を目指した。

「思ってたより多いな……」
「不味いですね。魔法使いもいる。隷属魔法を使われたら逃げられないかもしれません」

 まだ男爵が設置した結界魔導具が機能していたが、透けた結界の向こうに少なくとも二十名以上の武装した傭兵たちが蠢いている。

 そこからはもう無我夢中だった。
 バリン、と分厚いガラスが砕ける音で結界が破れると同時に傭兵集団がどっと押し寄せてきた。

「待っていたぞ……ギルガモス商会!」

 気合いの入ったユキりんの全身が鮮やかな紫色の魔力を帯びた。と思ったらその魔力はやがて透明で細長い棒になり、最終的に一振りの長い長い槍に変化した。
 魔法大全に載ってたユキりん実家リースト家の得意魔法、魔法樹脂で創る魔法剣もとい魔法槍だ。

 初めて全体像を見たが……か、格好いいべ……!
 持って戦うユキりんがまだちびっ子なのを差し引いても、これぞ異世界ファンタジーの世界そのものだっぺ!



 そこからは一回でも失敗するとジ・エンドになる誘導ゲームの繰り返しだった。

 もなか山には、まだ村が転移する日本の頃から猪や鹿、タヌキやアナグマ除けの電気柵が点在している。村長が村の予算で、獣が村に入り込みそうな場所ほとんどすべてに網羅させたやつだ。
 その電気柵の電気は異世界産の魔石を使って強度マックスまで上げてある。人間様でも引っかかると強めの静電気並にビリッとくる。
 敵が電気柵に引っかかってビリッと震えた瞬間、ユキりんがすかさず長い槍のリーチを活かしてグッサリ。

 電気柵だけでなく捕まえるための罠も各所にある。そして罠は猪などをおびき寄せるため、山の中でも逃げ場のない行き止まりや、視界の悪い場所にある。
 そちらに敵を誘導してのこのこやってきたら、やはりユキりんが槍でグサっと。

 ここまでユキ兄ちゃんは役立たず……ではなく、記憶している罠やもなか山の地形を辿りに敵を必死で誘導していた。
 まだ山のことはユキりんに覚えさせてる途中だったのに。

 そうして電気柵や罠に誘導してはユキりんが魔法槍で攻撃して足止め、を繰り返して何とか三分の一は削れた。
 ユキりんの魔法槍は魔法剣の亜種らしく術者の意図で効果付与ができた。麻痺や強い痛みを与えて、グッサリ刺された敵はすぐには回復できずその場でのたうち回ることになる。

 だが敵も戦闘のプロと見た。すぐにもなか山の特徴を把握したようで俺たちは次第に追い詰められていった。
 俺もユキりんも連日村や山を歩き回って体力は付いていたが、戦闘の主戦力を担っていたユキりんの魔力が切れ始めたのだ。

「くそ、くそ、くそ、魔力が足りない……!」

 しまいには魔法槍を保てなくなって、空中に溶けて消えてしまった。不味いぞ。

 敵の傭兵たちのリーダーと思しきヒゲ男がユキりんを見てお目当ての宝物を見つけた顔になっている。

「見つけたぜえー貴族のお坊ちゃん。奴隷商がそう簡単に商品を逃すわけねえだろ。手枷足枷首枷に魔力の流れを阻害する呪詛。隠してたようだがようやく見つけた!」
「くそ、魔力が安定しないと思ったらそういうことか!」

 マジか。てことはユキりんの身体には壊した首枷以外に目に見えない呪詛がまだまだ残ってるってことになる。

「その子、ぜーんぜん隙見せないんだもの。埒があかないから数で攻めて正解ね!」

 男たちの傍らにはあの隣町の商会の新人女性がいた。スパイかよ! そういうことだったかあああ!

「おい近寄るな! 来たらお前たちを真っ二つにするぞ!」

 俺は背中にユキりんを庇いつつ、王様のチート剣が軽く感じるのを幸いに片手でもち、もう片方では夢の中で王様がやってたようなバックラーを盾の部分を大きく拡大させて威嚇しながら防戦に努めた。
 村長や勉さんが男爵たち戦える人員を連れて到着するまで持ちこたえなきゃならない。

 だが次第に追い詰められ……気づくと背後にもなか川が迫っていた。

「やっぱアレかな、今朝の飯はパンだったから力が出ねえのかも! 米だったらまだまだ馬力が出たかも!」
「馬鹿なこと言ってないでくださいよ……。ユウキさん、僕の魔力が残ってるうちに川の向こうに飛びます!」
「へ?」

 どゆこと、と確認する間もなくユキりんが俺を抱え上げた。横抱きだ。俗にいうお姫様抱っこー!?
 残り少ない魔力で身体強化して俺を持ち上げ、跳躍して一気に川の上を飛んで傭兵たちと大きく距離を取った。

 だがユキりんはそこまでだった。白皙の美貌は青ざめて、ひきつけを起こしそうなほど息が荒い。
 川向こうにまだまだ敵は十名以上残っている。中に魔法使いらしきローブ姿の男もいる。川を挟んでいても魔法攻撃を仕掛けられたら……殺られる!

 もう迷っている時間はなかった。俺はすぐさま自分の体内に意識を集中させ、素早く王様のチート剣を構え直した。

「……王様! 魔石チート二個目使わせていただきます!」

 大剣の三つ並んだ魔石のうち、左端がまばゆいネオンイエローに光った。





NEXT→二つめの大剣チート魔石から現れたのは……

꒰(๑˘ ³˘๑)꒱•*¨*•.¸¸♪
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