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第二章 異世界ど田舎村を救え!
俺、テレビで日本のもなか村特集を観る
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ばあちゃんたちや村の人たちもあらかた温泉に入り終わったと聞いて、俺も村役場の温泉に浸かりにいった。
夏なんで長湯しないですぐ出てくると、俺より先に風呂上がりの何名かが村役場一階のロビーにいるのが見えた。
ぎっしり詰まってた売店のアイスもそろそろ終わりだ。村民たちにはアイスも飲み物も好きに飲んでいいと村長が許可を出している。
俺もソーダアイスを一袋失敬して、ガリガリ齧りながらど田舎村の人々とまったり語り合った。
夕飯の薬草蕎麦すごかったべなーって盛り上がった。すごい光ってたし味も良かったもんな。
ど田舎村だと蕎麦粉はガレットにしたり、パスタ用の小麦粉に混ぜたりだそうだ。今後は薬草入りも流行るかも。
鍋で練ってめんつゆや塩で食べる蕎麦がきを教えたら驚いてた。こっちのスープの実にしてもいけるかも。
男爵の屋敷に戻ってくると、ばあちゃんやピナレラちゃんは屋敷の使用人たちと談笑してたし、ユキりんもマイペースに端っこで本を読んでいた。
俺は皆に声をかけてから、用意してもらった客間に引っ込むことにした。
で、男爵から借りた貴族名鑑の、ユキりんの家であるリースト一族の項目を読んだのだが……
『リースト一族
現王朝の祖先と同時期にアケロニア王国に移住してきた進化した種族魔人族の末裔。
魔王を始祖とした極めて強大な魔力を持つ、青銀の髪と 湖面の水色の瞳の美貌の一族』
『血筋に多数の魔法式、魔術式を受け継ぐ。
代表魔法は魔法樹脂による魔法剣生成』
概要に続いて以下、延々と細かい略歴が並ぶ。大抵の貴族家が長くて一ページなのに三ページもある。
二段組で辞書みたいに小さな文字なので、部屋の明かりだとちょっと読みにくい。明日、昼間の明るい時間に読むとしよう。
魔王の末裔って。魔王って夢の王様から貰ったチート魔石に祝福くれたっていう神人だ。
俺がこの異世界に来る途中、次元の狭間で出くわした虹色キラキラに光る三人組の一人、長い青銀の髪の美少女のことだろう。
あのおっかないお姉様がユキりんの先祖か……いやまさかこういうふうに繋がってくるとはなあ。
ユキりんが奴隷商から逃げてきて、呪詛のかかった首輪で死にかけたとき俺は夢の王様から貰った大剣のチート魔石を一個消費している。
そのとき宇宙空間に現れたウルトラサイズの巨人のうち一人があのお姉様だった。
未来の王様はあの怖いお姉様から祝福を賜ってたのだな。魔王から祝福された国王様すごかっぺ!
「おーい。ユキちゃん、まだ起きとる?」
「テレビテレビ」
「村長。勉さんも」
まだ九時ぐらいだったが早めに寝ちまおうかなと思ったところに、村長がやってきた。勉さんも一緒で小脇にポータブルテレビを抱えている。
「地デジのポータブルも電波繋がってるんですか、それ」
「んだ。ちょうどもなか村の特集が流れてるから持ってきたの」
村長は冷えた麦茶のボトルとグラスも持ってきていた。これは元々現地でも麦を焙煎して飲まれてたやつだ。
テレビから流れるニュースによると、まだまだ日本では、もなか村消失で大騒ぎ、いや盛り上がっていた。
俺が心配していたのは、村長主導の村民水増し偽装と、それに伴う国からの支援のかすめ取りがクローズアップされやしないかってことだ。
だって村役場の他の職員たちや、農業や畜産に従事してた人たちからして、もなか村に住んでるって偽装に協力してたんだろ?
村役場どころか村ごと異世界転移してしまったから、後に残された彼らがどうなったが俺は心配だった。
仕事場がなくなって大混乱だろうに……
しかしそんな俺の心配とは裏腹に、テレビのもなか村消失事件は現代のオカルト都市伝説ふうの面白おかしい脚色に終始していた。
俺のネット掲示板への書き込みもピックアップされていたが、建設的なスレ住人の検証は芸能人のdisり系コメントで見事にsageられていた。あーあこうきたか。今ごろ掲示板荒れてるんじゃないか?
「心配はいらね。住民水増しについてはちゃんとお国と話がついとる」
「支援金や補助金もな。ちゃんと設計しとるから安心するべさ」
村長と勉さんは自信満々だった。
話を聞いてみると、村民水増しについては確かに問題なかった。
もなか村みたいな僻村を限界集落というんだが、実はいまの国の法律では住人が何人以下になったら廃村や近隣の市町村に併合されるかなどの決まりはないそうで。
そして住人の定義も曖昧だった。
もなか村では、『村に本籍がある者を村民とする』という村役場の定義があった。
なので、不便なもなか村から出ていく人や家があっても止めず、代わりに事情を話して本籍地だけはもなか村に残してもらってたんだ。
代わりに、村を出た人々が戸籍謄本を必要とするときには、村長が発行手数料と速達の郵送料を自腹で出していた。そういう約束で本籍を残してもらってたと。
この辺がグレーなとこだな。
NEXT→御米田は村長たちからさらにグレーな話を聞く
夏なんで長湯しないですぐ出てくると、俺より先に風呂上がりの何名かが村役場一階のロビーにいるのが見えた。
ぎっしり詰まってた売店のアイスもそろそろ終わりだ。村民たちにはアイスも飲み物も好きに飲んでいいと村長が許可を出している。
俺もソーダアイスを一袋失敬して、ガリガリ齧りながらど田舎村の人々とまったり語り合った。
夕飯の薬草蕎麦すごかったべなーって盛り上がった。すごい光ってたし味も良かったもんな。
ど田舎村だと蕎麦粉はガレットにしたり、パスタ用の小麦粉に混ぜたりだそうだ。今後は薬草入りも流行るかも。
鍋で練ってめんつゆや塩で食べる蕎麦がきを教えたら驚いてた。こっちのスープの実にしてもいけるかも。
男爵の屋敷に戻ってくると、ばあちゃんやピナレラちゃんは屋敷の使用人たちと談笑してたし、ユキりんもマイペースに端っこで本を読んでいた。
俺は皆に声をかけてから、用意してもらった客間に引っ込むことにした。
で、男爵から借りた貴族名鑑の、ユキりんの家であるリースト一族の項目を読んだのだが……
『リースト一族
現王朝の祖先と同時期にアケロニア王国に移住してきた進化した種族魔人族の末裔。
魔王を始祖とした極めて強大な魔力を持つ、青銀の髪と 湖面の水色の瞳の美貌の一族』
『血筋に多数の魔法式、魔術式を受け継ぐ。
代表魔法は魔法樹脂による魔法剣生成』
概要に続いて以下、延々と細かい略歴が並ぶ。大抵の貴族家が長くて一ページなのに三ページもある。
二段組で辞書みたいに小さな文字なので、部屋の明かりだとちょっと読みにくい。明日、昼間の明るい時間に読むとしよう。
魔王の末裔って。魔王って夢の王様から貰ったチート魔石に祝福くれたっていう神人だ。
俺がこの異世界に来る途中、次元の狭間で出くわした虹色キラキラに光る三人組の一人、長い青銀の髪の美少女のことだろう。
あのおっかないお姉様がユキりんの先祖か……いやまさかこういうふうに繋がってくるとはなあ。
ユキりんが奴隷商から逃げてきて、呪詛のかかった首輪で死にかけたとき俺は夢の王様から貰った大剣のチート魔石を一個消費している。
そのとき宇宙空間に現れたウルトラサイズの巨人のうち一人があのお姉様だった。
未来の王様はあの怖いお姉様から祝福を賜ってたのだな。魔王から祝福された国王様すごかっぺ!
「おーい。ユキちゃん、まだ起きとる?」
「テレビテレビ」
「村長。勉さんも」
まだ九時ぐらいだったが早めに寝ちまおうかなと思ったところに、村長がやってきた。勉さんも一緒で小脇にポータブルテレビを抱えている。
「地デジのポータブルも電波繋がってるんですか、それ」
「んだ。ちょうどもなか村の特集が流れてるから持ってきたの」
村長は冷えた麦茶のボトルとグラスも持ってきていた。これは元々現地でも麦を焙煎して飲まれてたやつだ。
テレビから流れるニュースによると、まだまだ日本では、もなか村消失で大騒ぎ、いや盛り上がっていた。
俺が心配していたのは、村長主導の村民水増し偽装と、それに伴う国からの支援のかすめ取りがクローズアップされやしないかってことだ。
だって村役場の他の職員たちや、農業や畜産に従事してた人たちからして、もなか村に住んでるって偽装に協力してたんだろ?
村役場どころか村ごと異世界転移してしまったから、後に残された彼らがどうなったが俺は心配だった。
仕事場がなくなって大混乱だろうに……
しかしそんな俺の心配とは裏腹に、テレビのもなか村消失事件は現代のオカルト都市伝説ふうの面白おかしい脚色に終始していた。
俺のネット掲示板への書き込みもピックアップされていたが、建設的なスレ住人の検証は芸能人のdisり系コメントで見事にsageられていた。あーあこうきたか。今ごろ掲示板荒れてるんじゃないか?
「心配はいらね。住民水増しについてはちゃんとお国と話がついとる」
「支援金や補助金もな。ちゃんと設計しとるから安心するべさ」
村長と勉さんは自信満々だった。
話を聞いてみると、村民水増しについては確かに問題なかった。
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なので、不便なもなか村から出ていく人や家があっても止めず、代わりに事情を話して本籍地だけはもなか村に残してもらってたんだ。
代わりに、村を出た人々が戸籍謄本を必要とするときには、村長が発行手数料と速達の郵送料を自腹で出していた。そういう約束で本籍を残してもらってたと。
この辺がグレーなとこだな。
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