80 / 152
第一章 異世界転移、村ごと!
その頃の???~side王都のとある男爵家2 ※イラスト有り
しおりを挟む
ところが末っ子のユキリーンだけは違った。
顔は同じだ。麗しの美貌はリースト家のもの。
……ただ、髪と目の色が、母親である妻譲りなのだよね。我が最愛の妻と同じショコラブラウンの髪とアメジストの瞳。
私はずっと、密かに妻に似た子供が欲しかった。だからユキリーンが生まれたときはどれほど嬉しかったか。
何せ先に儲けていた五人の子供たちは私の複製品みたいなリースト家の特徴しか出なかったからね。
子供たちも大好きな母親に似た色を持つユキリーンをやっぱり可愛がった。
だけど、そんな私たちのユキリーンが。学園で。
「『リースト一族なのに父や姉、兄たちと違う色合いだから、母親の不貞の子』そう言われていたのですか? 俺たちのユキリーンが?」
「顔は私たちにそっくりだから、ほとんど言いがかりだな。あの子は優秀だから、やっかみ半分だろう」
私たちは、ここ最近ずっとユキリーンから距離を置かれていた理由を知った。
反抗期ではなかった。学園で同級生たちから言いがかりをつけられて、そのことで悩んでいたのだ。
「どうして。相談してくれれば……」
子供たちの一人が呟いた。だが言えなかったのだろう。言えば自分に髪と瞳の色を授けた母親を悲しませるとわかっていたのだ。あの子は優しい子だからね……
それから妻や娘たちは泣き暮らした。
この父と兄たちも途方に暮れたが、例の三男だけがアクティブだった。
まずユキリーン行方不明の話を知るなり近衛騎士を辞めてきた。同世代で一番の出世頭なのに未練もなにも残さずに。
その足で末っ子をいじめた同級生たちの家全部に殴り込みに行って、ぶん殴って反省文と『二度と同じことはやりません』『以後の人生は善い人間になります』と誓約書を書かせ、破ると天罰が落ちる神殿誓約を結ばせてきた。
ついでに親たちから慰謝料もぶん取ってきた。すごくたくさん。相手も自分の子供がリースト一族に喧嘩を売ったと知って恐怖に慄いたようだ。相場より高い金額を自ら提示してきたそうな。
リースト一族は身内の結束が強い。こと愛する者を傷つけられたときの苛烈さは歴史にたびたび名を残すほどだ。今回の件ではご本家も彼らの家に対して動くはずだ。
そりゃ怖いだろうね。魔法剣で串刺しにされるより慰謝料を支払ったほうがマシだ。
三男は特に、いじめの首謀者と実行犯らには念入りに報復したようだ。
……相手、うちより家格が上の伯爵家と子爵家の子息ぞ? ああそうか、だから王族に侍る近衛を辞めてきたのだと私たちは知る。
……三男の行動を皮切りに家族も変わった。
社交が苦手だった子たちも積極的に学園時代の伝手を辿って、ユキリーンの行方を探し始めた。
我が家は分家で血が薄い分、魔力の低い子が多かったが、魔法や剣の腕を磨くため同じ王都のご本家に願って修行に力を入れ始めた。
妻はユキリーンのいじめを知った日から体調を崩して寝込みがちだ。
父の私はといえば、ひたすら金策に走って末っ子の捜索に注ぎ込む毎日だ。
うちは男爵家だからあまり目立つと他の貴族に目をつけられる。だから何ごとも〝ほどほど〟を心がけていたのだけど、――もう抑えることはせず事業でも投資でもとにかく収益の最大化に努めた。
利益はそのままユキリーンの捜索費用に。
そうしてひと月後、ようやく掴めたユキリーンの情報は。
悪名高い奴隷商、ギルガモス商会に囚われたとの報告を最後に消息が途絶えた――
NEXT→御米田は王様の短い夢を見た……
殺意強めの三男イメージ ユカリオン君(18)
ユキりんにはこんなカラーリングの
お兄ちゃん×3
お姉ちゃん×2
パパ×1 がいる……
ユキりんだけがママ似の色合いである
顔は同じだ。麗しの美貌はリースト家のもの。
……ただ、髪と目の色が、母親である妻譲りなのだよね。我が最愛の妻と同じショコラブラウンの髪とアメジストの瞳。
私はずっと、密かに妻に似た子供が欲しかった。だからユキリーンが生まれたときはどれほど嬉しかったか。
何せ先に儲けていた五人の子供たちは私の複製品みたいなリースト家の特徴しか出なかったからね。
子供たちも大好きな母親に似た色を持つユキリーンをやっぱり可愛がった。
だけど、そんな私たちのユキリーンが。学園で。
「『リースト一族なのに父や姉、兄たちと違う色合いだから、母親の不貞の子』そう言われていたのですか? 俺たちのユキリーンが?」
「顔は私たちにそっくりだから、ほとんど言いがかりだな。あの子は優秀だから、やっかみ半分だろう」
私たちは、ここ最近ずっとユキリーンから距離を置かれていた理由を知った。
反抗期ではなかった。学園で同級生たちから言いがかりをつけられて、そのことで悩んでいたのだ。
「どうして。相談してくれれば……」
子供たちの一人が呟いた。だが言えなかったのだろう。言えば自分に髪と瞳の色を授けた母親を悲しませるとわかっていたのだ。あの子は優しい子だからね……
それから妻や娘たちは泣き暮らした。
この父と兄たちも途方に暮れたが、例の三男だけがアクティブだった。
まずユキリーン行方不明の話を知るなり近衛騎士を辞めてきた。同世代で一番の出世頭なのに未練もなにも残さずに。
その足で末っ子をいじめた同級生たちの家全部に殴り込みに行って、ぶん殴って反省文と『二度と同じことはやりません』『以後の人生は善い人間になります』と誓約書を書かせ、破ると天罰が落ちる神殿誓約を結ばせてきた。
ついでに親たちから慰謝料もぶん取ってきた。すごくたくさん。相手も自分の子供がリースト一族に喧嘩を売ったと知って恐怖に慄いたようだ。相場より高い金額を自ら提示してきたそうな。
リースト一族は身内の結束が強い。こと愛する者を傷つけられたときの苛烈さは歴史にたびたび名を残すほどだ。今回の件ではご本家も彼らの家に対して動くはずだ。
そりゃ怖いだろうね。魔法剣で串刺しにされるより慰謝料を支払ったほうがマシだ。
三男は特に、いじめの首謀者と実行犯らには念入りに報復したようだ。
……相手、うちより家格が上の伯爵家と子爵家の子息ぞ? ああそうか、だから王族に侍る近衛を辞めてきたのだと私たちは知る。
……三男の行動を皮切りに家族も変わった。
社交が苦手だった子たちも積極的に学園時代の伝手を辿って、ユキリーンの行方を探し始めた。
我が家は分家で血が薄い分、魔力の低い子が多かったが、魔法や剣の腕を磨くため同じ王都のご本家に願って修行に力を入れ始めた。
妻はユキリーンのいじめを知った日から体調を崩して寝込みがちだ。
父の私はといえば、ひたすら金策に走って末っ子の捜索に注ぎ込む毎日だ。
うちは男爵家だからあまり目立つと他の貴族に目をつけられる。だから何ごとも〝ほどほど〟を心がけていたのだけど、――もう抑えることはせず事業でも投資でもとにかく収益の最大化に努めた。
利益はそのままユキリーンの捜索費用に。
そうしてひと月後、ようやく掴めたユキリーンの情報は。
悪名高い奴隷商、ギルガモス商会に囚われたとの報告を最後に消息が途絶えた――
NEXT→御米田は王様の短い夢を見た……
殺意強めの三男イメージ ユカリオン君(18)
ユキりんにはこんなカラーリングの
お兄ちゃん×3
お姉ちゃん×2
パパ×1 がいる……
ユキりんだけがママ似の色合いである
777
お気に入りに追加
2,405
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?
澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果
異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。
実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。
異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。
そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。
だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。
最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる