66 / 152
第一章 異世界転移、村ごと!
俺、幼女に怒られる(本望!)
しおりを挟む
「ただいま……」
出かけるときばあちゃんに言われた通り、夕飯前には山から降りて戻ってきた。
「おにいちゃ、おかえり!」
「……おかえりなさい」
家を出たときよりションボリして帰宅した俺を出迎えてくれたのはピナレラちゃんとユキりん、それに。
「ユキちゃん、お邪魔してますぅ」
「おう、邪魔しとるぞ」
「村長……勉さん……な、なんで急に?」
「お前の様子がおがしいって空さんがメッセージくれたんだべ」
「んだんだ。ま、座れ座れ」
居間のちゃぶ台の前に、男爵の屋敷にいたはずの村長と勉さんがいた。
俺は夕飯も断って自室に引っ込もうとしたんだが、居間を出る前に勉さんに捕まって座布団に強制的に座らされた。
しかも席は部屋の奥側、お誕生日席に。
「で? 何があったの?」
「おにいちゃ……」
「………………」
村長が笑顔で俺に圧をかける。ピナレラちゃんも心配そうな顔。うっ、幼女を不安にさせる罪深き俺なんて死んでしまえばいい……
ユキりんは入口近くの離れた席に座って腕組みして俺のことを無表情ぎみに見ている。いいから話せコラ、と言わんばかりの圧を感じる。
俺は観念して口を開いた。
「実は……」
俺は語った。語ってしまった。
結婚したかった女に不適切な品質の物を贈ろうとして、事前察知されて捨てられてしまった哀れな男の物語を。
……熱を入れて語れば語るほど皆が引いてるような気もするが……もう語り出した俺は止まらない。
「えっとお。前に振られたて聞いたときは話だけだったな? どら、ユキちゃん捨てた彼女さん、写真さ見せてみろ?」
「んだなや。どんくれえの美女かおらたちが確かめてやる」
「……これだけど」
俺はスマホ内の元カノの写真を見せた。アルバム機能にフォルダ分けしてまとめた厳選ショットから適当に一枚。
「ほお~こりゃ色白でなかなか……」
「悪ぐねえな。顔は」
村長と勉さんが感心している。そう、元カノはとても可愛らしい女性だった。街中をデートしてると男の半分は振り返るほど。
ユキりんも二人の後ろからスマホ画面を覗いている。が特に感慨もなさそうな、つまらなさそうな顔のままだ。
「もーっ、おにいちゃー!」
元カノの写真を見てまた自分の世界に潜り込んでしまいかけた俺を、ピナレラちゃんの幼児特有のキーンとした甲高い大声が引き戻した。
ビリビリと障子紙が震えるほどの高音波だ。な、なんだべ!?
「おにいちゃ! しょんなおんにゃがどうした!?」
「ぴ、ピナレラちゃん?」
いつも胸を張るときは、まだぽんぽんの柔らかなお腹のほうが張り出てたはず。
なのに今日のピナレラちゃんは一味違った。お腹はどーんと腰から据わって、ぽよよんとせず引き締まっている……!
目つきも据わっていた。そしてビシッと小さなお手々でユキりんを指さす。
「みなしゃい! ユキリーンちゃのほうがかわいいでしょ!?」
「!? 確かに!」
このときの俺の心境を表す顔文字はまさにこれだ。
Σ(˙꒳˙)!? ...!
「待って待って、そこに僕を絡めるのやめて、ほんとに」
いきなり話を振られたユキりんが慌てている。だがもうピナレラちゃんは止まらない……!
「しょれに! あたちのほうが、おおきくなったらもっとめんこいおなごになるべ!?」
「「「間違いねえっぺ!」」」
俺たちもなか村の男三人の声が合わさった。
ユキりんは俺たちのテンションについていけなかったか、輪の中から微妙に外れている。
今でさえこんなに可愛いピナレラちゃんだ。元カノと同じ二十五歳の頃には間違いなく近隣に名の轟く美女となっているだろう!
俺とばあちゃんの影響でピナレラちゃんにもなか弁が移りつつある。ふ……家族って感じがしていいな!
「平和な人たちだなあ。……心配して損した」
ユキりんが呆れたように溜め息を吐いている。
だがちょっと前までの俺は本当に死にそうなほどヘコんでいたのだ。
かくして俺は一度思い出した元カノの顔を再び衝撃で忘れた。
そうだな……とりあえず思い出しそうになったら麗しの美少年の顔を眺めて目の洗浄とリセットだべ!
とユキりんを見つめたら、この間なにも知らずにうっかりストロング梅干しを丸ごと食べてしまったときのような顔で背けられた。まだ塩対応なのかユキりん……懐かなさすぎだっぺ!
もうこの際だからスマホ内の写真も削除しようと思って、ばあちゃんから飯ができたと声がかかるまでの間にスマホをいじった。
だが元カノとの思い出フォトアルバムを見て、俺は違和感を覚えた。
なんだ? 彼女はこんな顔だったか?
守ってあげたくなるような小柄で可愛い女性なのは間違いなかった。だが、以前彼女に感じていた強い思いがすっぽり抜け落ちている。
それに、この顔……いま改めて見返すと、自分の好みからはだいぶ離れてると思う。
俺の好みはぶっちゃけるとユキりん系の綺麗な顔立ちだ。それからすると彼女は可愛いすぎる。
皆に半ば怒られ続けておしゃべりしながら、元カノの写真や動画をスマホから複数選択でごそっと削除だ。
うっわ、元カノ関連の写真だけで何GBスマホの容量食ってたんだ。過去の自分にドン引きした。
フハハハハハ! あれも! これも! ぜーんぶぜーんぶ、消去! 消去! 消去だー!!
出かけるときばあちゃんに言われた通り、夕飯前には山から降りて戻ってきた。
「おにいちゃ、おかえり!」
「……おかえりなさい」
家を出たときよりションボリして帰宅した俺を出迎えてくれたのはピナレラちゃんとユキりん、それに。
「ユキちゃん、お邪魔してますぅ」
「おう、邪魔しとるぞ」
「村長……勉さん……な、なんで急に?」
「お前の様子がおがしいって空さんがメッセージくれたんだべ」
「んだんだ。ま、座れ座れ」
居間のちゃぶ台の前に、男爵の屋敷にいたはずの村長と勉さんがいた。
俺は夕飯も断って自室に引っ込もうとしたんだが、居間を出る前に勉さんに捕まって座布団に強制的に座らされた。
しかも席は部屋の奥側、お誕生日席に。
「で? 何があったの?」
「おにいちゃ……」
「………………」
村長が笑顔で俺に圧をかける。ピナレラちゃんも心配そうな顔。うっ、幼女を不安にさせる罪深き俺なんて死んでしまえばいい……
ユキりんは入口近くの離れた席に座って腕組みして俺のことを無表情ぎみに見ている。いいから話せコラ、と言わんばかりの圧を感じる。
俺は観念して口を開いた。
「実は……」
俺は語った。語ってしまった。
結婚したかった女に不適切な品質の物を贈ろうとして、事前察知されて捨てられてしまった哀れな男の物語を。
……熱を入れて語れば語るほど皆が引いてるような気もするが……もう語り出した俺は止まらない。
「えっとお。前に振られたて聞いたときは話だけだったな? どら、ユキちゃん捨てた彼女さん、写真さ見せてみろ?」
「んだなや。どんくれえの美女かおらたちが確かめてやる」
「……これだけど」
俺はスマホ内の元カノの写真を見せた。アルバム機能にフォルダ分けしてまとめた厳選ショットから適当に一枚。
「ほお~こりゃ色白でなかなか……」
「悪ぐねえな。顔は」
村長と勉さんが感心している。そう、元カノはとても可愛らしい女性だった。街中をデートしてると男の半分は振り返るほど。
ユキりんも二人の後ろからスマホ画面を覗いている。が特に感慨もなさそうな、つまらなさそうな顔のままだ。
「もーっ、おにいちゃー!」
元カノの写真を見てまた自分の世界に潜り込んでしまいかけた俺を、ピナレラちゃんの幼児特有のキーンとした甲高い大声が引き戻した。
ビリビリと障子紙が震えるほどの高音波だ。な、なんだべ!?
「おにいちゃ! しょんなおんにゃがどうした!?」
「ぴ、ピナレラちゃん?」
いつも胸を張るときは、まだぽんぽんの柔らかなお腹のほうが張り出てたはず。
なのに今日のピナレラちゃんは一味違った。お腹はどーんと腰から据わって、ぽよよんとせず引き締まっている……!
目つきも据わっていた。そしてビシッと小さなお手々でユキりんを指さす。
「みなしゃい! ユキリーンちゃのほうがかわいいでしょ!?」
「!? 確かに!」
このときの俺の心境を表す顔文字はまさにこれだ。
Σ(˙꒳˙)!? ...!
「待って待って、そこに僕を絡めるのやめて、ほんとに」
いきなり話を振られたユキりんが慌てている。だがもうピナレラちゃんは止まらない……!
「しょれに! あたちのほうが、おおきくなったらもっとめんこいおなごになるべ!?」
「「「間違いねえっぺ!」」」
俺たちもなか村の男三人の声が合わさった。
ユキりんは俺たちのテンションについていけなかったか、輪の中から微妙に外れている。
今でさえこんなに可愛いピナレラちゃんだ。元カノと同じ二十五歳の頃には間違いなく近隣に名の轟く美女となっているだろう!
俺とばあちゃんの影響でピナレラちゃんにもなか弁が移りつつある。ふ……家族って感じがしていいな!
「平和な人たちだなあ。……心配して損した」
ユキりんが呆れたように溜め息を吐いている。
だがちょっと前までの俺は本当に死にそうなほどヘコんでいたのだ。
かくして俺は一度思い出した元カノの顔を再び衝撃で忘れた。
そうだな……とりあえず思い出しそうになったら麗しの美少年の顔を眺めて目の洗浄とリセットだべ!
とユキりんを見つめたら、この間なにも知らずにうっかりストロング梅干しを丸ごと食べてしまったときのような顔で背けられた。まだ塩対応なのかユキりん……懐かなさすぎだっぺ!
もうこの際だからスマホ内の写真も削除しようと思って、ばあちゃんから飯ができたと声がかかるまでの間にスマホをいじった。
だが元カノとの思い出フォトアルバムを見て、俺は違和感を覚えた。
なんだ? 彼女はこんな顔だったか?
守ってあげたくなるような小柄で可愛い女性なのは間違いなかった。だが、以前彼女に感じていた強い思いがすっぽり抜け落ちている。
それに、この顔……いま改めて見返すと、自分の好みからはだいぶ離れてると思う。
俺の好みはぶっちゃけるとユキりん系の綺麗な顔立ちだ。それからすると彼女は可愛いすぎる。
皆に半ば怒られ続けておしゃべりしながら、元カノの写真や動画をスマホから複数選択でごそっと削除だ。
うっわ、元カノ関連の写真だけで何GBスマホの容量食ってたんだ。過去の自分にドン引きした。
フハハハハハ! あれも! これも! ぜーんぶぜーんぶ、消去! 消去! 消去だー!!
1,078
お気に入りに追加
2,405
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる