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第一章 異世界転移、村ごと!
俺、美味しい水でお茶を飲む~魔力増え増え
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俺は朝、早起きしてひと足先にささっと軽く朝飯を食べて、ど田舎村側の敷地を見て回るのが習慣になった。
山々と川に囲まれたもなか村。反対側を見れば、こちらも山や川に囲まれた異世界だ。
農作物などは、村ごと転移してきたからかふつうにすくすく育っている。
あとは最低限の手入れだ。水やりや除草など、手が回らないことは承知の上で、可能な範囲でやる。
今後、収穫できた野菜のうちカットして乾燥できるものは保存食として一定の需要があるそうなので、廃棄はある程度抑えられそうとのこと。
今日は特に湧水の水源である川の上流がお目当てだった。
「すごいな。水も岩も光ってる」
ここの水源はもなか山の中腹の岩から直接、勢いよく水が吹き出している。予想通り水は俺がこれまで見た飲み物や、水を使って炊いたご飯や料理のように白く光っている。
今までのような薄っすらぼんやりした光じゃない。柔らかいが強い光だった。
「それじゃあこいつを、と」
採水用の一ガロンボトルに湧水を詰めた。
ついでに、500ミリリットルの水筒にも。こっちには家から持参したあるものをポンと突っ込む。お茶パックだ。中にはもちろん緑茶の茶葉が入っている。
あとはしばらく、近くでストレッチしたり、散策で時間を潰して一時間後。
持参していたアウトドア用のステンレスのマグカップに、水筒から水出し緑茶を注ぐ。
ここの湧水は日本ではゴルフ場の除草剤のせいで、かつてほどの味はなくなってしまったと聞いている。
それでも近年は昔の品質を取り戻しつつあって、俺も何度もこうして汲みにきて味を覚えている。
ドキドキしながら飲んだ水出し緑茶はといえば。
「……うま。ヤバいな。俺もうペットボトルのお茶飲めないわ」
冷たい湧水で抽出した緑茶は、――甘い。そして口の中いっぱいに広がる爽やかさ。全身に染み渡るような清冽さは言葉に尽くし難い。
一時間置いただけでこれだ。もう数時間、濃いめに出したやつで酎ハイにしたら最高だろうな。
しかもそれだけじゃない。飲んだお茶が胃に到達するなり、俺の身体から真紅の魔力がぼわっと滲み出てきた。
「こりゃ毎日飲んだらすごいことになりそうだな。そうか、異世界人の俺たちにとっては、この土地のもの自体がチート恩恵なのかも」
俺はもう一杯だけ軽く飲んで、減った分の水を足してキュッと水筒の蓋を回し締める。これはばあちゃんにも飲ませてやらないと!
さーて、と気合を入れて登山用のリュックに採水ボトルを突っ込んで背負って山を降りたのだった。
ばあちゃんちに戻ってくると、居間のちゃぶ台でユキりんがピナレラちゃんに絵本を読んでやっていた。
絵本は男爵の屋敷から持ってきたピナレラちゃんの私物だ。亡きご両親に買ってもらった形見だそうで。
ユキりんは一度俺たちの前で大泣きした後は、吹っ切れたのか遠慮がなくなった。マイペースな性格だったが自由人というほどでもなかったので、家の中のことも頼めばふつうに手伝ってくれている。
どうもこの村に留まってるのは彼なりの思惑があるようだ。それも含めて見てやってくれと男爵から頼まれていた。
むう、めんこい幼女と麗しの美少年……この瞬間を保存しておきたい……って俺スマホ持ってるじゃないか。
俺は二人に声をかけた。振り向いた瞬間にパシッとカメラ機能で撮影した。
確認すると、俺を見て笑顔の尊いピナレラちゃんと、急にスマホを向けられてちょっと怒った顔のユキりんが映っている。
山々と川に囲まれたもなか村。反対側を見れば、こちらも山や川に囲まれた異世界だ。
農作物などは、村ごと転移してきたからかふつうにすくすく育っている。
あとは最低限の手入れだ。水やりや除草など、手が回らないことは承知の上で、可能な範囲でやる。
今後、収穫できた野菜のうちカットして乾燥できるものは保存食として一定の需要があるそうなので、廃棄はある程度抑えられそうとのこと。
今日は特に湧水の水源である川の上流がお目当てだった。
「すごいな。水も岩も光ってる」
ここの水源はもなか山の中腹の岩から直接、勢いよく水が吹き出している。予想通り水は俺がこれまで見た飲み物や、水を使って炊いたご飯や料理のように白く光っている。
今までのような薄っすらぼんやりした光じゃない。柔らかいが強い光だった。
「それじゃあこいつを、と」
採水用の一ガロンボトルに湧水を詰めた。
ついでに、500ミリリットルの水筒にも。こっちには家から持参したあるものをポンと突っ込む。お茶パックだ。中にはもちろん緑茶の茶葉が入っている。
あとはしばらく、近くでストレッチしたり、散策で時間を潰して一時間後。
持参していたアウトドア用のステンレスのマグカップに、水筒から水出し緑茶を注ぐ。
ここの湧水は日本ではゴルフ場の除草剤のせいで、かつてほどの味はなくなってしまったと聞いている。
それでも近年は昔の品質を取り戻しつつあって、俺も何度もこうして汲みにきて味を覚えている。
ドキドキしながら飲んだ水出し緑茶はといえば。
「……うま。ヤバいな。俺もうペットボトルのお茶飲めないわ」
冷たい湧水で抽出した緑茶は、――甘い。そして口の中いっぱいに広がる爽やかさ。全身に染み渡るような清冽さは言葉に尽くし難い。
一時間置いただけでこれだ。もう数時間、濃いめに出したやつで酎ハイにしたら最高だろうな。
しかもそれだけじゃない。飲んだお茶が胃に到達するなり、俺の身体から真紅の魔力がぼわっと滲み出てきた。
「こりゃ毎日飲んだらすごいことになりそうだな。そうか、異世界人の俺たちにとっては、この土地のもの自体がチート恩恵なのかも」
俺はもう一杯だけ軽く飲んで、減った分の水を足してキュッと水筒の蓋を回し締める。これはばあちゃんにも飲ませてやらないと!
さーて、と気合を入れて登山用のリュックに採水ボトルを突っ込んで背負って山を降りたのだった。
ばあちゃんちに戻ってくると、居間のちゃぶ台でユキりんがピナレラちゃんに絵本を読んでやっていた。
絵本は男爵の屋敷から持ってきたピナレラちゃんの私物だ。亡きご両親に買ってもらった形見だそうで。
ユキりんは一度俺たちの前で大泣きした後は、吹っ切れたのか遠慮がなくなった。マイペースな性格だったが自由人というほどでもなかったので、家の中のことも頼めばふつうに手伝ってくれている。
どうもこの村に留まってるのは彼なりの思惑があるようだ。それも含めて見てやってくれと男爵から頼まれていた。
むう、めんこい幼女と麗しの美少年……この瞬間を保存しておきたい……って俺スマホ持ってるじゃないか。
俺は二人に声をかけた。振り向いた瞬間にパシッとカメラ機能で撮影した。
確認すると、俺を見て笑顔の尊いピナレラちゃんと、急にスマホを向けられてちょっと怒った顔のユキりんが映っている。
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