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第一章 異世界転移、村ごと!
俺、謎の王様を夢に見る
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その夜、俺は不思議な夢を見た。
どこか大きな宮殿の中にいる。ヨーロッパの王宮みたいなイメージの建物だ。
視点が何度か切り替わって、やがて大きな肘掛け付きの黄金の椅子のある部屋で止まった。椅子は本物の黄金っぽい……デザインといい真紅の布貼りなところといい、王様が座る玉座そのものだ。
ここは玉座の間なのだろうか?
しばらくすると、一人の黒髪の男が部屋に入ってくる。顔は遠くてよくわからないが今年二十八の俺と同じくらいに見えた。
随分背が高めで背筋もピシッと伸びている。これはスポーツというより何かの武道や武術をやってる筋肉の付き方だな……歩き方にも油断がない。
男は黒い軍服を着ている。デザインやジャケットの飾りを見るに、重要な地位にいる人物なのがわかる。こりゃ本物の王様だな。
その部屋には男だけがいる。
おもむろに男が軍服のジャケットを脱いで玉座に放り投げ、その場でストレッチぽいものを始めた。全身の筋をまんべんなく伸ばしたり、関節をバキボキ鳴らしている。
最後に深呼吸して両手を下腹部――下丹田の位置に当てておしまい。やはり何かの武道っぽい作法だ。
男はジャケットを着直して玉座に深く腰掛けた。そのまま軽く長い脚を組んで目を閉じる。
その間、俺は部屋の中を見回していた。
窓の外はまだ暗い。遠くが少しずつ明るくなってきている。夜明け前だろう。随分と早起きの王様だ。仕事熱心……には見えないな。始発で出勤してデスクで仮眠を取る会社員時代の俺みたいな感じだ。
突如、部屋の中全体が満天のプラネタリウムのように変わる。
一瞬だけ夜空のように星々が瞬いた後、現れたのは……俺!?
室内プラネタリウムには俺が異世界転移するまでと、してきてから数日間の光景が映し出されている。しかも平面的じゃない。3D的な立体映像として目の前にリアルに現れている。
「ふむ。〝オコメダ・ユウキ〟か。妙な名前だな」
余計なお世話だよ!
……この王様、低いがよく響くいい声をしている。耳元で囁かれたら男の俺でもビクッとしてしまうかもしれない。
「だが家名に聞き覚えがある。どこのものだったか? ――ああ、〝ど田舎村〟なら…………の旧姓か」
誰かの名前を呟いている。だが声が低すぎて聞き取れない。
俺が目の前で見てる3D映像を、この王様は目を閉じた瞼の裏で見てるようだった。
目の前に男爵やど田舎村の人々、それにピナレラちゃんが現れた。
ピナレラちゃんが映像の中の俺に駆け寄って、着ていた作業着の太ももあたりを掴んで見上げてにっこり笑った。……くっ。めんこいなや!
映像の中の俺も同じことを思ったようで内心悶えてるのが見え見えの態度でしゃがんで、熱に負けたチョコレートのようなゆるゆるの顔でピナレラちゃんのキャラメル色の頭を撫で撫でしていた。
「いとけない女児を前になんという顔だ。今にも溶け落ちそうではないか。……大丈夫なのか、この男。まさか幼女趣味などということは……。だとしたら危険だな」
違います! 危険じゃありません! 俺には小さい子供に手を出す趣味はありません!
必死で訴えようとしたが声が出ない。そもそも俺の姿は王様には見えていないようだった。
目の前には次々映像が変わる。もなか村の自然豊かな光景、村長、ベンさん、それに俺のばあちゃんを映して映像がそこで止まる。
その後、何度か王様は俺、ばあちゃん、村長、ベンさんの順で人物を移しては小さく唸っていた。
「過去の記録の人物のように見えるが……むう、加齢のせいで判別がつかん。わかるのはオコメダ・ユウキだけだな」
何がどうわかるのか俺に理解できるように説明してほしい。
だが王様は目を瞑ったまま見えてる映像に独り言を呟いてるだけだ。ギャラリーに不親切すぎるだろ。
やがて、王様は肘掛けに腕をついたまま笑い出した。
「ンッフフフ……フハハ……! なるほど、これが話に聞いていた彼の先祖か!」
誰だよ。誰が誰の先祖だって? え、まかさピナレラちゃん? 嘘だ、うちの娘は生半可な男にはやらんぞ、やらんからな!?
しかもなんかすげえヤバい笑い方してるぞこの王様。俺にはわかる。こいつ絶対ムッツリ系だ。俺より若いのに権力をかさにきて女遊びとかしてないだろうな。
イラッときたので、どうせ見えてないならと俺は玉座に近寄った。
王様の黒髪の頭をぺしっと叩こうとして、――ちょうど目を開けた王様と目が合ってしまった。み、見えてるのか? 俺が!
「!?」
王様は自分を叩こうと腕を振り上げた俺に驚いた顔を見せる。だがすぐに納得したと言わんばかりのニヒルな笑みを見せた。
「ほう。夢を歩いてきたと見える。ようこそ、我が前世。いや来世か? あるいは――」
あるいはなんだ。そういう含みのある言い方は好きじゃないハッキリ言ってほしい。
いや待て、前世とか来世とか言ったか? こ、この王様は……
――俺と同じ顔をしている!
どこか大きな宮殿の中にいる。ヨーロッパの王宮みたいなイメージの建物だ。
視点が何度か切り替わって、やがて大きな肘掛け付きの黄金の椅子のある部屋で止まった。椅子は本物の黄金っぽい……デザインといい真紅の布貼りなところといい、王様が座る玉座そのものだ。
ここは玉座の間なのだろうか?
しばらくすると、一人の黒髪の男が部屋に入ってくる。顔は遠くてよくわからないが今年二十八の俺と同じくらいに見えた。
随分背が高めで背筋もピシッと伸びている。これはスポーツというより何かの武道や武術をやってる筋肉の付き方だな……歩き方にも油断がない。
男は黒い軍服を着ている。デザインやジャケットの飾りを見るに、重要な地位にいる人物なのがわかる。こりゃ本物の王様だな。
その部屋には男だけがいる。
おもむろに男が軍服のジャケットを脱いで玉座に放り投げ、その場でストレッチぽいものを始めた。全身の筋をまんべんなく伸ばしたり、関節をバキボキ鳴らしている。
最後に深呼吸して両手を下腹部――下丹田の位置に当てておしまい。やはり何かの武道っぽい作法だ。
男はジャケットを着直して玉座に深く腰掛けた。そのまま軽く長い脚を組んで目を閉じる。
その間、俺は部屋の中を見回していた。
窓の外はまだ暗い。遠くが少しずつ明るくなってきている。夜明け前だろう。随分と早起きの王様だ。仕事熱心……には見えないな。始発で出勤してデスクで仮眠を取る会社員時代の俺みたいな感じだ。
突如、部屋の中全体が満天のプラネタリウムのように変わる。
一瞬だけ夜空のように星々が瞬いた後、現れたのは……俺!?
室内プラネタリウムには俺が異世界転移するまでと、してきてから数日間の光景が映し出されている。しかも平面的じゃない。3D的な立体映像として目の前にリアルに現れている。
「ふむ。〝オコメダ・ユウキ〟か。妙な名前だな」
余計なお世話だよ!
……この王様、低いがよく響くいい声をしている。耳元で囁かれたら男の俺でもビクッとしてしまうかもしれない。
「だが家名に聞き覚えがある。どこのものだったか? ――ああ、〝ど田舎村〟なら…………の旧姓か」
誰かの名前を呟いている。だが声が低すぎて聞き取れない。
俺が目の前で見てる3D映像を、この王様は目を閉じた瞼の裏で見てるようだった。
目の前に男爵やど田舎村の人々、それにピナレラちゃんが現れた。
ピナレラちゃんが映像の中の俺に駆け寄って、着ていた作業着の太ももあたりを掴んで見上げてにっこり笑った。……くっ。めんこいなや!
映像の中の俺も同じことを思ったようで内心悶えてるのが見え見えの態度でしゃがんで、熱に負けたチョコレートのようなゆるゆるの顔でピナレラちゃんのキャラメル色の頭を撫で撫でしていた。
「いとけない女児を前になんという顔だ。今にも溶け落ちそうではないか。……大丈夫なのか、この男。まさか幼女趣味などということは……。だとしたら危険だな」
違います! 危険じゃありません! 俺には小さい子供に手を出す趣味はありません!
必死で訴えようとしたが声が出ない。そもそも俺の姿は王様には見えていないようだった。
目の前には次々映像が変わる。もなか村の自然豊かな光景、村長、ベンさん、それに俺のばあちゃんを映して映像がそこで止まる。
その後、何度か王様は俺、ばあちゃん、村長、ベンさんの順で人物を移しては小さく唸っていた。
「過去の記録の人物のように見えるが……むう、加齢のせいで判別がつかん。わかるのはオコメダ・ユウキだけだな」
何がどうわかるのか俺に理解できるように説明してほしい。
だが王様は目を瞑ったまま見えてる映像に独り言を呟いてるだけだ。ギャラリーに不親切すぎるだろ。
やがて、王様は肘掛けに腕をついたまま笑い出した。
「ンッフフフ……フハハ……! なるほど、これが話に聞いていた彼の先祖か!」
誰だよ。誰が誰の先祖だって? え、まかさピナレラちゃん? 嘘だ、うちの娘は生半可な男にはやらんぞ、やらんからな!?
しかもなんかすげえヤバい笑い方してるぞこの王様。俺にはわかる。こいつ絶対ムッツリ系だ。俺より若いのに権力をかさにきて女遊びとかしてないだろうな。
イラッときたので、どうせ見えてないならと俺は玉座に近寄った。
王様の黒髪の頭をぺしっと叩こうとして、――ちょうど目を開けた王様と目が合ってしまった。み、見えてるのか? 俺が!
「!?」
王様は自分を叩こうと腕を振り上げた俺に驚いた顔を見せる。だがすぐに納得したと言わんばかりのニヒルな笑みを見せた。
「ほう。夢を歩いてきたと見える。ようこそ、我が前世。いや来世か? あるいは――」
あるいはなんだ。そういう含みのある言い方は好きじゃないハッキリ言ってほしい。
いや待て、前世とか来世とか言ったか? こ、この王様は……
――俺と同じ顔をしている!
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