異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
上 下
24 / 206
第一章 異世界転移、村ごと!

俺、ど田舎村でごちそう

しおりを挟む
 俺、いや俺たちは運が良い方の異世界転移だった。

 日本で数多の異世界転移ものの漫画やアニメを見ていた俺は知っている。
 転移した途端、奴隷商人に売られたり、勇者になって魔王を倒せと強制されたりする系の異世界転移は案外多いのだ。……フィクションでだけど。

 だというのに異世界転移したっていうのに、こんなに暖かく迎えてくれる村があるとは。
 ど田舎村、最高。名前はちょっと気の毒だけどな。

 この「ど田舎村」で目が覚めた初日、俺たちはなんと地球のイタリア料理そっくりのごちそうで歓迎会を開いてもらった。
 昼間のミネストローネもだが、トマトやサラダ、チーズの使い方なんかがイタリア料理そっくり。

 素朴な皮付きのじゃがいもをローズマリーとローストしたり、トマトソースで煮込んだ青菜入りのラビオリだったり、いろんなキノコの入ったフリッター、あるいはドンとでっかい牛肉の塊ステーキ。いやローストビーフ。
 あれだ。とにかくオリーブオイルたっぷりで調理や風味付けするあれ。

「アケロニア王国はオリーブ栽培が盛んでねえ。ど田舎領のオリーブもなかなかだと自負してるよ」

 ど田舎村を含むど田舎領の領主、ブランチウッド男爵モーリスさんがのほほんと言って、オリーブの浅漬けの小皿をくれた。
 うっ、と俺は詰まった。これ元カノの穂波が好きだったんだよな……
 もういい加減昔の女は忘れようぜ、今の俺には可愛い幼女もいるじゃないか。……お世話されてるだけだけどさ。

「あ、美味いですね。フレッシュ感残ってるのにエグみがまったくない」
「そうそう。漬け汁がど田舎領の自慢なんだよお~」

 薄めの塩味とオリーブの果肉の油分を含んだまろやかさ。歯が種に当たるまで噛み締めるとじゅわっと旨みが滲み出てくる。

 日本だとスーパーでも売られているが、オリーブが生では食えない果実だと知らない人は多い。生のままだとエグみや渋みが強すぎて食えないのだ。
 とはいえ、まだ身が青い緑のうちに収穫してそのまま絞ったのがエキストラバージンオイル。今回も料理にたっぷり使われている油、いや果汁なわけだが。

 男爵の屋敷に集まったど田舎村の人々は三十名あまり。一階の食堂が庭に開けるので立食パーティーとあいなった。
 この村もわりと洒落にならない限界集落だ。見たところ一番若い夫婦で五十代、やはり六十代以上が多い。それ以上の年代となると少ないようだが……

「この世界の平均寿命は六十から六十五ってところかな。アケロニア王国はもうちょっと長いけど」
「そうでしたか」

 パーティー会場の最年長は俺のばあちゃんだ。八十超えたお年寄りはど田舎村の人々にも珍しいようで、村民たちは皆かなり丁重にばあちゃんを扱っている。

 ピナレラちゃんはといえば、もうお手伝いは終わりとばかりに庭に設置された椅子に座って、手作りのラビオリを頬張っている。

「おにいちゃ。たべてる?」
「うん、すごくおいしいよ。ありがとう、ピナレラちゃん。」

 と俺は笑って答えた。このめんこい笑顔のためなら、どんな困難も乗り越えられる気がする。

「あっ。おにいちゃ、それたべられるひと?」

 ピナレラちゃんが俺の皿のサラダを見た。茹でて粗熱をとった温野菜に、炊いて水で洗って滑りを取った米をドレッシングで和えたもの。要はライスサラダである。

「あたち、それきらいなの……ぼそぼそしてやー」

 ふむ。フォークで米だけをすくって食べてみると、薄味のドレッシングとオリーブオイルの風味の染みたなかなかのお味。
 だが確かにピナレラちゃんの言うように〝ぼそぼそ〟食感だ。
 米は俺たちが日本で食べていたものより一回り大きい。欧米だとリゾット用に流通してる品種とよく似ていた。こんなとこまでイタリアそっくり。

「おこめ、あたちスープがちゅき」
「ちゅきかあ。そっかあ」

 前歯一本歯抜けなせいで、サ行やタ行、イ段の発音が苦手なピナレラちゃんだが、こ、これはめんこいなや……!
 でも良かった、要は冷たい米が嫌いなんだな。米そのものが嫌いじゃないなら、もなか村の米を食べたら驚くぞお~!







→NEXT、そろそろ村長、もなか村の隠しごとを吐け!の巻

しおりを挟む
感想 257

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する

真義あさひ
ファンタジー
名門貴族家に生まれながらも、妾の子として虐げられ、優秀な兄の下僕扱いだった貴公子ケイは正妻の陰謀によりすべてを奪われ追放されて、貴族からスラム街の最下層まで落ちぶれてしまう。 絶望と貧しさの中で母と共に海に捨てられた彼は、死の寸前、海の底で出会った謎のサラマンダーの魔法により過去へと回帰する。 回帰の目的は二つ。 一つ、母を二度と惨めに死なせない。 二つ、海の底で発現させた勇者の力を覚醒させ、サラマンダーの望む海底神殿の浄化を行うこと。 回帰魔法を使って時を巻き戻したサラマンダー・ピアディを相棒として、今度こそ、不幸の連鎖を断ち切るために── そして母を救い、今度こそ自分自身の人生を生きるために、ケイは人生をやり直す。 第一部、完結まで予約投稿済み 76000万字ぐらい ꒰( ˙𐃷˙ )꒱ ワレダイカツヤクナノダ~♪

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...