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第一章 異世界転移、村ごと!
俺、ど田舎村でごちそう
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俺、いや俺たちは運が良い方の異世界転移だった。
日本で数多の異世界転移ものの漫画やアニメを見ていた俺は知っている。
転移した途端、奴隷商人に売られたり、勇者になって魔王を倒せと強制されたりする系の異世界転移は案外多いのだ。……フィクションでだけど。
だというのに異世界転移したっていうのに、こんなに暖かく迎えてくれる村があるとは。
ど田舎村、最高。名前はちょっと気の毒だけどな。
この「ど田舎村」で目が覚めた初日、俺たちはなんと地球のイタリア料理そっくりのごちそうで歓迎会を開いてもらった。
昼間のミネストローネもだが、トマトやサラダ、チーズの使い方なんかがイタリア料理そっくり。
素朴な皮付きのじゃがいもをローズマリーとローストしたり、トマトソースで煮込んだ青菜入りのラビオリだったり、いろんなキノコの入ったフリッター、あるいはドンとでっかい牛肉の塊ステーキ。いやローストビーフ。
あれだ。とにかくオリーブオイルたっぷりで調理や風味付けするあれ。
「アケロニア王国はオリーブ栽培が盛んでねえ。ど田舎領のオリーブもなかなかだと自負してるよ」
ど田舎村を含むど田舎領の領主、ブランチウッド男爵モーリスさんがのほほんと言って、オリーブの浅漬けの小皿をくれた。
うっ、と俺は詰まった。これ元カノの穂波が好きだったんだよな……
もういい加減昔の女は忘れようぜ、今の俺には可愛い幼女もいるじゃないか。……お世話されてるだけだけどさ。
「あ、美味いですね。フレッシュ感残ってるのにエグみがまったくない」
「そうそう。漬け汁がど田舎領の自慢なんだよお~」
薄めの塩味とオリーブの果肉の油分を含んだまろやかさ。歯が種に当たるまで噛み締めるとじゅわっと旨みが滲み出てくる。
日本だとスーパーでも売られているが、オリーブが生では食えない果実だと知らない人は多い。生のままだとエグみや渋みが強すぎて食えないのだ。
とはいえ、まだ身が青い緑のうちに収穫してそのまま絞ったのがエキストラバージンオイル。今回も料理にたっぷり使われている油、いや果汁なわけだが。
男爵の屋敷に集まったど田舎村の人々は三十名あまり。一階の食堂が庭に開けるので立食パーティーとあいなった。
この村もわりと洒落にならない限界集落だ。見たところ一番若い夫婦で五十代、やはり六十代以上が多い。それ以上の年代となると少ないようだが……
「この世界の平均寿命は六十から六十五ってところかな。アケロニア王国はもうちょっと長いけど」
「そうでしたか」
パーティー会場の最年長は俺のばあちゃんだ。八十超えたお年寄りはど田舎村の人々にも珍しいようで、村民たちは皆かなり丁重にばあちゃんを扱っている。
ピナレラちゃんはといえば、もうお手伝いは終わりとばかりに庭に設置された椅子に座って、手作りのラビオリを頬張っている。
「おにいちゃ。たべてる?」
「うん、すごくおいしいよ。ありがとう、ピナレラちゃん。」
と俺は笑って答えた。このめんこい笑顔のためなら、どんな困難も乗り越えられる気がする。
「あっ。おにいちゃ、それたべられるひと?」
ピナレラちゃんが俺の皿のサラダを見た。茹でて粗熱をとった温野菜に、炊いて水で洗って滑りを取った米をドレッシングで和えたもの。要はライスサラダである。
「あたち、それきらいなの……ぼそぼそしてやー」
ふむ。フォークで米だけをすくって食べてみると、薄味のドレッシングとオリーブオイルの風味の染みたなかなかのお味。
だが確かにピナレラちゃんの言うように〝ぼそぼそ〟食感だ。
米は俺たちが日本で食べていたものより一回り大きい。欧米だとリゾット用に流通してる品種とよく似ていた。こんなとこまでイタリアそっくり。
「おこめ、あたちスープがちゅき」
「ちゅきかあ。そっかあ」
前歯一本歯抜けなせいで、サ行やタ行、イ段の発音が苦手なピナレラちゃんだが、こ、これはめんこいなや……!
でも良かった、要は冷たい米が嫌いなんだな。米そのものが嫌いじゃないなら、もなか村の米を食べたら驚くぞお~!
→NEXT、そろそろ村長、もなか村の隠しごとを吐け!の巻
日本で数多の異世界転移ものの漫画やアニメを見ていた俺は知っている。
転移した途端、奴隷商人に売られたり、勇者になって魔王を倒せと強制されたりする系の異世界転移は案外多いのだ。……フィクションでだけど。
だというのに異世界転移したっていうのに、こんなに暖かく迎えてくれる村があるとは。
ど田舎村、最高。名前はちょっと気の毒だけどな。
この「ど田舎村」で目が覚めた初日、俺たちはなんと地球のイタリア料理そっくりのごちそうで歓迎会を開いてもらった。
昼間のミネストローネもだが、トマトやサラダ、チーズの使い方なんかがイタリア料理そっくり。
素朴な皮付きのじゃがいもをローズマリーとローストしたり、トマトソースで煮込んだ青菜入りのラビオリだったり、いろんなキノコの入ったフリッター、あるいはドンとでっかい牛肉の塊ステーキ。いやローストビーフ。
あれだ。とにかくオリーブオイルたっぷりで調理や風味付けするあれ。
「アケロニア王国はオリーブ栽培が盛んでねえ。ど田舎領のオリーブもなかなかだと自負してるよ」
ど田舎村を含むど田舎領の領主、ブランチウッド男爵モーリスさんがのほほんと言って、オリーブの浅漬けの小皿をくれた。
うっ、と俺は詰まった。これ元カノの穂波が好きだったんだよな……
もういい加減昔の女は忘れようぜ、今の俺には可愛い幼女もいるじゃないか。……お世話されてるだけだけどさ。
「あ、美味いですね。フレッシュ感残ってるのにエグみがまったくない」
「そうそう。漬け汁がど田舎領の自慢なんだよお~」
薄めの塩味とオリーブの果肉の油分を含んだまろやかさ。歯が種に当たるまで噛み締めるとじゅわっと旨みが滲み出てくる。
日本だとスーパーでも売られているが、オリーブが生では食えない果実だと知らない人は多い。生のままだとエグみや渋みが強すぎて食えないのだ。
とはいえ、まだ身が青い緑のうちに収穫してそのまま絞ったのがエキストラバージンオイル。今回も料理にたっぷり使われている油、いや果汁なわけだが。
男爵の屋敷に集まったど田舎村の人々は三十名あまり。一階の食堂が庭に開けるので立食パーティーとあいなった。
この村もわりと洒落にならない限界集落だ。見たところ一番若い夫婦で五十代、やはり六十代以上が多い。それ以上の年代となると少ないようだが……
「この世界の平均寿命は六十から六十五ってところかな。アケロニア王国はもうちょっと長いけど」
「そうでしたか」
パーティー会場の最年長は俺のばあちゃんだ。八十超えたお年寄りはど田舎村の人々にも珍しいようで、村民たちは皆かなり丁重にばあちゃんを扱っている。
ピナレラちゃんはといえば、もうお手伝いは終わりとばかりに庭に設置された椅子に座って、手作りのラビオリを頬張っている。
「おにいちゃ。たべてる?」
「うん、すごくおいしいよ。ありがとう、ピナレラちゃん。」
と俺は笑って答えた。このめんこい笑顔のためなら、どんな困難も乗り越えられる気がする。
「あっ。おにいちゃ、それたべられるひと?」
ピナレラちゃんが俺の皿のサラダを見た。茹でて粗熱をとった温野菜に、炊いて水で洗って滑りを取った米をドレッシングで和えたもの。要はライスサラダである。
「あたち、それきらいなの……ぼそぼそしてやー」
ふむ。フォークで米だけをすくって食べてみると、薄味のドレッシングとオリーブオイルの風味の染みたなかなかのお味。
だが確かにピナレラちゃんの言うように〝ぼそぼそ〟食感だ。
米は俺たちが日本で食べていたものより一回り大きい。欧米だとリゾット用に流通してる品種とよく似ていた。こんなとこまでイタリアそっくり。
「おこめ、あたちスープがちゅき」
「ちゅきかあ。そっかあ」
前歯一本歯抜けなせいで、サ行やタ行、イ段の発音が苦手なピナレラちゃんだが、こ、これはめんこいなや……!
でも良かった、要は冷たい米が嫌いなんだな。米そのものが嫌いじゃないなら、もなか村の米を食べたら驚くぞお~!
→NEXT、そろそろ村長、もなか村の隠しごとを吐け!の巻
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