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第一章 異世界転移、村ごと!
俺、幼女と転移後のもなか村を歩く ※おいちい回
しおりを挟む異世界のど田舎村に村ごと転移してしまった俺、御米田ユウキ、二十八歳。
しかし一緒に転移した村民は、俺とばあちゃん入れてたった四人しかいなかった……はあ……溜め息つくしかないわこんなん……
ともあれ、ミネストローネでほっこり元気をチャージした俺は異世界を見て回ることにした。
ただ男爵から許可が降りたのは〝ど田舎村〟と、この村の土地の中にまるごと転移してきたもなか村の範囲だけだった。
ばあちゃんや村長、勉さんは俺が寝ている間にあらかた確認し終えてるそうなので、俺は世話役を付けてもらって徒歩で歩けるところを見て行った。
「ユウキおにいちゃ、だいじょぶ? いちにちねてたんでしょ、むりちないでね」
俺と手を繋いで道を先導してくれる、このキャラメル色のオカッパと柘榴色の目の世話役兼案内役は、ピナレラちゃん四歳だ。
平民だが男爵の友人夫妻のお嬢さんだそうで、両親が亡くなったあと男爵が引き取って後見人として一緒に住んで育てているらしい。
左前歯の犬歯が一本欠けてることを除けば、笑顔の可愛い幼女である。何でも両親と馬車の事故に遭ったとき両親はそのまま亡くなったが、馬車から落ちたピナレラちゃんは顔面強打したのに犬歯一本折れただけで生き残ったという強運の持ち主だった。
四歳児にお世話される俺。まあど田舎村の人々は農業や家畜のお仕事があるから、手が空いてたのはまだ幼いピナレラちゃんだけだったのだ。
「おにいちゃ、すごいねえ。かみもおめめもまーっくろ! かっこいい!」
「ありがとう」
「あたちのおむこさんにちてあげてもいいよ!」
「わーうれしいなー(棒読み)」
俺、異世界でモテ期到来。四歳幼女にモテモテ。
そう、男爵からど田舎村の主だった人々に紹介されたとき、俺を気に入ったピナレラちゃんが俺から離れなくなった。
じゃあ世話役になってもらおう、の男爵の一声でピナレラちゃんは俺付きとなったわけで。体よく子守りを頼まれた感じ。
これ大丈夫か? 二十八の男が四歳幼女とお手々繋いで……
いやこれまだ若いパパと娘が遊んでるの図だわ。ほのぼの系の異世界展開だ。
ともあれ、まずはもなか村役場の白い二階建ての建物に入った。
全部、俺が最後に見て回ったときのまま残っている。ただしお勤めしていた人々は誰ひとりおらず、がらんと静まり返っていた。
スイッチを入れるとなんと部屋の蛍光灯がついた。あ、そうか、役場も民家も太陽光発電の非常用の発電機があるから、そっちから通電するよう切り替わったんだな。
二階から順に部屋をすべて見て回り、最後に一階の売店エリアへ。
保存のきく食品類、菓子類、医療費や生活雑貨、医薬品。それに電気が通ってるということは冷蔵庫や冷凍庫の中身も無事だった。
「ピナレラちゃん。アイス食べようか」
「あいす? それなあにー?」
村長からはちゃんと、売店のものを頂戴する許可を貰っていた。冷凍ショーケースからキューブアイスを一箱取り出してフィルムを破る。
ピックでチョコがコーティングされた小さいミルクアイスを突き刺し、ピナレラちゃんの口元に差し出す。ぱくっと口に入れたピナレラちゃんが冷たいアイスに驚いている。
俺も続いて一個。
「!?」
このアイス美味いよな。俺もばあちゃんも大好きなので、売店で見つけたときは大喜びだった。
「お、おいちい~!」
ピナレラちゃんが小さなお手々を頬っぺたに当てて、口の中の蕩けるチョコとミルクの味わいを堪能している。
あまりにも可愛かったので、六個入りを半分こするつもりだったが俺の分を一個多めにあげて、喜んでるピナレラちゃんで癒されたのだった。
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