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第一章 異世界転移、村ごと!

俺、田舎で再就職……?

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 ゴールデンウィークにもなか村に帰省したとき、村長が力強く言ってくれたあの言葉。

『役場の仕事さ就けるようしてやるがら』

「……という言葉を信じてた頃が俺にもありました」

 もなか村には戻ってきたし、村役場で雇ってももらえたのだが、想像とはかなり違かった。

 中途採用の公務員ではなく、臨時雇いのアルバイト扱いだったからだ。



 ゴールデンウィークの帰省から半月。
 東京に戻った俺は、大型連休が明けて出社したその日にすぐ営業部の上司に退職する意思を伝えた。
 もちろん引き止められたが、会社側が絶対に無下にできない言い訳をあらかじめ用意してあった。

「実は休み中、田舎に帰省したら一人暮らしの祖母がちょっとヤバくて……」

 この言い訳でいろいろ勝手に相手が察してくれて、最終的には渋々だったが退職の申請は受理された。
 何がヤバいか? うちのばあちゃんは料理上手でヤバい。最高。……別に嘘は言ってない。嘘はな。

 有給は新卒で就職してから一度も取得したことがないので日数が余りまくっていた。
 なので今日でもう退職の準備や社内外への挨拶やメール連絡を済ませて、明日から有給消化してそのまま退職ということになった。

 幸い貯金はあったのですぐアパートもすぐ引き払い、翌週にはもなか村に戻っていた。
 もちろん、村役場の社会人経験者枠での採用目当てで。



 ところが「役場の仕事さ就けるようしてやるがら」の村長の言葉を真に受けて帰郷したら、話が通っておらず役場も寝耳に水だったとのこと。
 村長のじいちゃん、どうも酒の席だったせいで俺に話したことを忘れていたらしい。ものすごい謝られて、俺もちゃんと確認せず退職してきてしまったことでおあいこだった。

 ひとまずアルバイトということになった。時給九百円。県の最低賃金。都会のサラリーマン時の半分以下の手取り。
 とはいえさすがに役場、いわゆる「親方日の丸」なので交通費も残業代もきっちり出るし、休憩時間もある。

 そして定時退勤。大事なことだから繰り返す。定時退勤!
 若い人間が俺一人なので、結果として主戦力、すべての部署の何でも屋と化した。
 何せ限界集落で世帯の半分以上が高齢者なので、役場の公務員も高齢者寄りの中年ばかり。
 公務員の定年は六十歳から六十五歳まで伸びてるが、もなか村ではほとんど六十歳定年を選ぶということだった。

「これ、あと数年で先輩たちが定年退職した後がヤバいんじゃないか……?」

 ふつう、こういった寂れた地方での公務員は一家庭から一人のみという暗黙の了解がある。
 ただでさえ安定した収入の公務員の枠を一家庭で何枠も埋めてしまうことは『既得権益の独占』と見なされるからだ。

「……まあ建前だけんども」

 人がいなさすぎて、本来なら専業主婦で家庭を切り盛りするはずの奥さんまでもが、旦那と一緒に同じ役場で働いている。
 なのにどこからも文句が出ない。それどころかありがたく拝まれているのは、やはり限界集落ならではの光景だろう。

 しかも廃村の話まで出ていると村長から申し訳なさそうに教えられた。
 おいおいおい。本採用での就職はどうやら無理っぽいぞ!?


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