8 / 152
第一章 異世界転移、村ごと!
俺、田舎で再就職……?
しおりを挟むゴールデンウィークにもなか村に帰省したとき、村長が力強く言ってくれたあの言葉。
『役場の仕事さ就けるようしてやるがら』
「……という言葉を信じてた頃が俺にもありました」
もなか村には戻ってきたし、村役場で雇ってももらえたのだが、想像とはかなり違かった。
中途採用の公務員ではなく、臨時雇いのアルバイト扱いだったからだ。
ゴールデンウィークの帰省から半月。
東京に戻った俺は、大型連休が明けて出社したその日にすぐ営業部の上司に退職する意思を伝えた。
もちろん引き止められたが、会社側が絶対に無下にできない言い訳をあらかじめ用意してあった。
「実は休み中、田舎に帰省したら一人暮らしの祖母がちょっとヤバくて……」
この言い訳でいろいろ勝手に相手が察してくれて、最終的には渋々だったが退職の申請は受理された。
何がヤバいか? うちのばあちゃんは料理上手でヤバい。最高。……別に嘘は言ってない。嘘はな。
有給は新卒で就職してから一度も取得したことがないので日数が余りまくっていた。
なので今日でもう退職の準備や社内外への挨拶やメール連絡を済ませて、明日から有給消化してそのまま退職ということになった。
幸い貯金はあったのですぐアパートもすぐ引き払い、翌週にはもなか村に戻っていた。
もちろん、村役場の社会人経験者枠での採用目当てで。
ところが「役場の仕事さ就けるようしてやるがら」の村長の言葉を真に受けて帰郷したら、話が通っておらず役場も寝耳に水だったとのこと。
村長のじいちゃん、どうも酒の席だったせいで俺に話したことを忘れていたらしい。ものすごい謝られて、俺もちゃんと確認せず退職してきてしまったことでおあいこだった。
ひとまずアルバイトということになった。時給九百円。県の最低賃金。都会のサラリーマン時の半分以下の手取り。
とはいえさすがに役場、いわゆる「親方日の丸」なので交通費も残業代もきっちり出るし、休憩時間もある。
そして定時退勤。大事なことだから繰り返す。定時退勤!
若い人間が俺一人なので、結果として主戦力、すべての部署の何でも屋と化した。
何せ限界集落で世帯の半分以上が高齢者なので、役場の公務員も高齢者寄りの中年ばかり。
公務員の定年は六十歳から六十五歳まで伸びてるが、もなか村ではほとんど六十歳定年を選ぶということだった。
「これ、あと数年で先輩たちが定年退職した後がヤバいんじゃないか……?」
ふつう、こういった寂れた地方での公務員は一家庭から一人のみという暗黙の了解がある。
ただでさえ安定した収入の公務員の枠を一家庭で何枠も埋めてしまうことは『既得権益の独占』と見なされるからだ。
「……まあ建前だけんども」
人がいなさすぎて、本来なら専業主婦で家庭を切り盛りするはずの奥さんまでもが、旦那と一緒に同じ役場で働いている。
なのにどこからも文句が出ない。それどころかありがたく拝まれているのは、やはり限界集落ならではの光景だろう。
しかも廃村の話まで出ていると村長から申し訳なさそうに教えられた。
おいおいおい。本採用での就職はどうやら無理っぽいぞ!?
1,131
お気に入りに追加
2,405
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる