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現実まであと一段階
そして現実へ
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「ああ、その話を聞いて納得した。このオレは本体がジューアに封印される前に作られた分身なんだろう」
シルヴィスと一緒に王宮まで戻ると、先王や国王との夕食会を終えたカーナも戻ってきていた。
「ということは、もしかしてあなたは……」
「うん。夢見の世界の住人だろうね」
拍子抜けするほどあっさりとカーナが認めた。
「でも大丈夫。ヴァシレウスに確認したけど、夢見の術を行ったのはマーゴットらしいから、君さえいれば問題なく現実に戻れるよ」
「そういう話ではなくて……!」
何とも形容し難い思いをどう表現したものか。
とそこへ、男連れでマーゴットが戻ったと報告を受けて、揶揄ってやろうと浮き浮きしながらグレイシア王女がやってきた。
だが、カーナに詰め寄っているマーゴットを見て黒い目を丸くしていた。
「分身なるものが何かよくわからないが……。なら何でカーナ殿はバルカス王子に害されたとき消えずに赤ん坊になって残ったんだ?」
素朴な疑問に小首を傾げていた。
「オレは魚切り包丁で斬られたんだろう? そのとき分身を形成している魔力が減少したんじゃないかな。それが少しずつ回復するにつれて、子供の成長過程を辿ってるんじゃないかと」
カーナ自身も不思議に思っていたそうだ。
自分に8年後の現実の記憶がない。ハイヒューマンで神人まで進化した彼は人間とは違う認識力があるにも関わらず、だ。
「これはもう、現実に戻るしかないわ。必要な情報はもうすべて得たと思う」
夢見から覚めるには、そう意図するだけでいい。
特定の呪文が必要なわけでもなく、ただ「夢から覚めて現実へ戻る」と当人が思えばそれで終わりだ。
「マーゴット」
名前を呼ばれるなり、シルヴィスに腕を引かれ、胸の中に抱き込まれた。
銀に近い灰色の瞳が、マーゴットのネオングリーンの瞳を覗き込んでくる。
「し、シルヴィス?」
「もっと、君といたかったな。……待っていて。僕は必ずカレイド王国へ、君のもとに戻ると約束する」
「……ここは夢の中なのに?」
マーゴットとシルヴィスには8歳の歳の差がある。
子供の頃から既に彼はお兄さんでよくマーゴットを抱き上げてくれたが、大人になった今もマーゴットをすっぽり包み込むほど。
(現実に戻ってもこの暖かさを覚えていられるかしら)
「現実の僕だって、そう思ってるはずさ」
「!」
約束の証だ、と微笑むシルヴィスの顔が近づいてきたなと思ったら、ちゅ、と小さな音を立てて唇にキスされた。
「おお……」
グレイシア王女がびっくりしたような、恥ずかしいような顔で、思わず漏れた声を塞ぐように口元を覆っているのが横目で見えた。
その隣のカーナは面白そうに手を振ってきている。
「せめて一晩、別れを惜しんだらどうだ? もう夜も遅い、夢から覚めるにはおじいさまの元に行かねばならんのだろう? 明日にしろ」
先触れだけは出しておくと言って、カーナを引っ張ってグレイシア王女が部屋を出て行った。
一晩、マーゴットとシルヴィスは起きたまま眠らず語り合って、翌日、朝食の後すぐにヴァシレウス大王の離宮を訪れた。
カーナはもちろん、シルヴィスとグレイシア王女、そしてテオドロス国王も一緒に。
その後、魔力の安定した神殿に移動すると、リースト伯爵メガエリスとその息子たち、弟ルシウスと兄カイルもいた。
念のため、とシルヴィスが神殿と、夢見の旅人であるマーゴットとヴァシレウス大王に弓祓いを行い、心身の波長を整えた。
「マーゴットさま、ヴァシレウスさま、ばいばい。マーゴットさまはもっと自分に素直になったほうがいいよ。忘れないでね」
そんなルシウス少年の言葉とともに皆に見送られ、マーゴットとヴァシレウス大王は現実世界へと戻ったのである。
シルヴィスと一緒に王宮まで戻ると、先王や国王との夕食会を終えたカーナも戻ってきていた。
「ということは、もしかしてあなたは……」
「うん。夢見の世界の住人だろうね」
拍子抜けするほどあっさりとカーナが認めた。
「でも大丈夫。ヴァシレウスに確認したけど、夢見の術を行ったのはマーゴットらしいから、君さえいれば問題なく現実に戻れるよ」
「そういう話ではなくて……!」
何とも形容し難い思いをどう表現したものか。
とそこへ、男連れでマーゴットが戻ったと報告を受けて、揶揄ってやろうと浮き浮きしながらグレイシア王女がやってきた。
だが、カーナに詰め寄っているマーゴットを見て黒い目を丸くしていた。
「分身なるものが何かよくわからないが……。なら何でカーナ殿はバルカス王子に害されたとき消えずに赤ん坊になって残ったんだ?」
素朴な疑問に小首を傾げていた。
「オレは魚切り包丁で斬られたんだろう? そのとき分身を形成している魔力が減少したんじゃないかな。それが少しずつ回復するにつれて、子供の成長過程を辿ってるんじゃないかと」
カーナ自身も不思議に思っていたそうだ。
自分に8年後の現実の記憶がない。ハイヒューマンで神人まで進化した彼は人間とは違う認識力があるにも関わらず、だ。
「これはもう、現実に戻るしかないわ。必要な情報はもうすべて得たと思う」
夢見から覚めるには、そう意図するだけでいい。
特定の呪文が必要なわけでもなく、ただ「夢から覚めて現実へ戻る」と当人が思えばそれで終わりだ。
「マーゴット」
名前を呼ばれるなり、シルヴィスに腕を引かれ、胸の中に抱き込まれた。
銀に近い灰色の瞳が、マーゴットのネオングリーンの瞳を覗き込んでくる。
「し、シルヴィス?」
「もっと、君といたかったな。……待っていて。僕は必ずカレイド王国へ、君のもとに戻ると約束する」
「……ここは夢の中なのに?」
マーゴットとシルヴィスには8歳の歳の差がある。
子供の頃から既に彼はお兄さんでよくマーゴットを抱き上げてくれたが、大人になった今もマーゴットをすっぽり包み込むほど。
(現実に戻ってもこの暖かさを覚えていられるかしら)
「現実の僕だって、そう思ってるはずさ」
「!」
約束の証だ、と微笑むシルヴィスの顔が近づいてきたなと思ったら、ちゅ、と小さな音を立てて唇にキスされた。
「おお……」
グレイシア王女がびっくりしたような、恥ずかしいような顔で、思わず漏れた声を塞ぐように口元を覆っているのが横目で見えた。
その隣のカーナは面白そうに手を振ってきている。
「せめて一晩、別れを惜しんだらどうだ? もう夜も遅い、夢から覚めるにはおじいさまの元に行かねばならんのだろう? 明日にしろ」
先触れだけは出しておくと言って、カーナを引っ張ってグレイシア王女が部屋を出て行った。
一晩、マーゴットとシルヴィスは起きたまま眠らず語り合って、翌日、朝食の後すぐにヴァシレウス大王の離宮を訪れた。
カーナはもちろん、シルヴィスとグレイシア王女、そしてテオドロス国王も一緒に。
その後、魔力の安定した神殿に移動すると、リースト伯爵メガエリスとその息子たち、弟ルシウスと兄カイルもいた。
念のため、とシルヴィスが神殿と、夢見の旅人であるマーゴットとヴァシレウス大王に弓祓いを行い、心身の波長を整えた。
「マーゴットさま、ヴァシレウスさま、ばいばい。マーゴットさまはもっと自分に素直になったほうがいいよ。忘れないでね」
そんなルシウス少年の言葉とともに皆に見送られ、マーゴットとヴァシレウス大王は現実世界へと戻ったのである。
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