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第二章 夢と忘れそうなほど充実の日々
王都でお買い物の麗し兄弟
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エルフィンのいる学長室を辞した後、マーゴットはグレイシア王女から校内の主だった場所を案内してもらった。
教室や職員室、カフェを兼ねた食堂などだ。
「うちの食堂の食事は美味いぞ。スイーツもなかなか」
登校できるようになったら、グレイシア王女の同級生たちへの紹介がてら、放課後のプチお茶会に招待してくれるそうだ。
生徒たちは休みでも、教員や職員たちは全員登校しているので食堂も開いていた。
王女の勧めで昼のランチセットを食べていくことにしたマーゴットだった。
カレイド王国で通っていた学園ではランチは自宅からの弁当持参だったので、自分で注文するセルフ方式の食堂は新鮮だった。
好物のプリンがメニューにあって、こっそり注文したつもりが、しっかりグレイシア王女に見られてちょっぴり恥ずかしかったのは内緒である。
マーゴットのアケロニア王国留学の目的は、長年、文通だけだった親友のグレイシア王女に会いたかったことがひとつ。
名目上は、円環大陸で最も成功している国家の視察となっている。
アケロニア王国は王政国家であり、柔軟な立憲君主制の国だ。
近代においては平民登用を積極的に推進。
他国にない特徴としては、王侯貴族と、平民出身者でも武官と文官はすべて軍属としたこと。必ず国の騎士団か、貴族家が独自に持つ騎士団か兵団に所属する義務を負わせている。
それに伴い、国の公式行事では軍属女性のドレス廃止、すべて軍服の正装に統一させている。もちろん社交パーティーでの女性のドレスアップは他国と共通なのだが。
それでいて、グレイシア王女の祖父、先王ヴァシレウス大王の御代から現在まで、この国は一度も他国と戦争をしていない。
それでいて軍備は万全。穿った見方をすれば、この国はいつでも『戦える』。
マーゴットはカレイド王国の次期女王として、このアケロニア王国が敵視する国の情報収集も今回の留学目的に含めていた。
もっとも、アケロニア王国の敵性国家は有名なのだが。
学園からの帰り道、馬車で街道を走っていると見覚えのある青銀の髪の兄弟を見かけた。
「少し馬車を止めてもらえますか?」
下車すると間違いない。リースト伯爵家の麗し兄弟だ。
「あれえ? グレイシア様とマーゴットさま! どうしたの?」
不思議そうに、目の前で止まった馬車から降りてきたマーゴットたちを、兄のカイルと手を繋いだルシウス少年が小首を傾げて見上げてくる。
その首元にはバンダナが巻かれている。ということは中にはカーナが入っているわけだ。
学園長に会いに行っていたのだと話して、兄弟のことを聞いてみると。
「あのね。ごはん、朝と夜はきしだんの寮で食べられるんだけど、お昼はそとに食べに行ってねって、寮母さんが」
それで兄のカイルが旧友たちと放課後や休日に利用するカフェに兄弟で食べに来ていた帰りらしい。
「ん? そのパンは?」
兄が抱えている紙袋からバゲットが2本、飛び出している。
「毎回外食だと高く付くので、明日からはサンドイッチでも作ろうかと」
などという話を聞かされて、もうマーゴットは居た堪れなかった。
(本当に彼らには申し訳ないことをしてしまったわ……)
「……王宮の食堂に来ても良いのだぞ? わたくしから話を通しておこうか」
「いえ、父が宰相閣下と喧嘩してましたし、宰相閣下から下手に突っつかれそうな行為は慎もうと思います。先輩のお気持ちだけいただきますね」
「なら、せめて材料だけ差し入れさせてくれ。日持ちがするものを後で騎士団寮まで届けさせる」
「それは……助かります」
馬車に一緒に乗っていくかと尋ねると、ルシウス少年が「兄さんとデートしてるからまたにしてください!」とニパッと笑いながら言って、兄のカイルと繋いだ手をぶん回していた。
仲の良い兄弟にほっこり成分をチャージさせてもらって、落ち込みがだいぶ緩和されたマーゴットだった。
「仲良し兄弟なのね。微笑ましいわ」
「ああ、うん。ルシウスがな。一方的にブラコンだ」
なるほど、ルシウス少年からのベクトルのほうが強いらしい。
「戻ったら宰相の奴に手配させよう。もちろんあやつのポケットマネーで出させるぞう」
学園は明後日から再開とエルフィン学園長から聞かされていた。
明日は騎士団寮まで、兄弟の様子を見に行っても良いかもしれない。
また馬車に乗り直して車窓から王都を眺めながら。
(シルヴィスはいつ戻ってくるのかしら。任務は数日だって言ってたけど)
そういえば、彼の今後は何をどうするかなど、まったく聞かされていない。
カーナが一度、冒険者ギルドの寮の彼の部屋を訪ねたと言っていたが、そんなに長時間は話せなかったと聞く。
(留学期間は一ヶ月。この間にあと何回会えるかしら)
そもそも、ここが夢の中の世界なら、現実でのシルヴィスとはいったいどのような関係になっているのだろうか?
教室や職員室、カフェを兼ねた食堂などだ。
「うちの食堂の食事は美味いぞ。スイーツもなかなか」
登校できるようになったら、グレイシア王女の同級生たちへの紹介がてら、放課後のプチお茶会に招待してくれるそうだ。
生徒たちは休みでも、教員や職員たちは全員登校しているので食堂も開いていた。
王女の勧めで昼のランチセットを食べていくことにしたマーゴットだった。
カレイド王国で通っていた学園ではランチは自宅からの弁当持参だったので、自分で注文するセルフ方式の食堂は新鮮だった。
好物のプリンがメニューにあって、こっそり注文したつもりが、しっかりグレイシア王女に見られてちょっぴり恥ずかしかったのは内緒である。
マーゴットのアケロニア王国留学の目的は、長年、文通だけだった親友のグレイシア王女に会いたかったことがひとつ。
名目上は、円環大陸で最も成功している国家の視察となっている。
アケロニア王国は王政国家であり、柔軟な立憲君主制の国だ。
近代においては平民登用を積極的に推進。
他国にない特徴としては、王侯貴族と、平民出身者でも武官と文官はすべて軍属としたこと。必ず国の騎士団か、貴族家が独自に持つ騎士団か兵団に所属する義務を負わせている。
それに伴い、国の公式行事では軍属女性のドレス廃止、すべて軍服の正装に統一させている。もちろん社交パーティーでの女性のドレスアップは他国と共通なのだが。
それでいて、グレイシア王女の祖父、先王ヴァシレウス大王の御代から現在まで、この国は一度も他国と戦争をしていない。
それでいて軍備は万全。穿った見方をすれば、この国はいつでも『戦える』。
マーゴットはカレイド王国の次期女王として、このアケロニア王国が敵視する国の情報収集も今回の留学目的に含めていた。
もっとも、アケロニア王国の敵性国家は有名なのだが。
学園からの帰り道、馬車で街道を走っていると見覚えのある青銀の髪の兄弟を見かけた。
「少し馬車を止めてもらえますか?」
下車すると間違いない。リースト伯爵家の麗し兄弟だ。
「あれえ? グレイシア様とマーゴットさま! どうしたの?」
不思議そうに、目の前で止まった馬車から降りてきたマーゴットたちを、兄のカイルと手を繋いだルシウス少年が小首を傾げて見上げてくる。
その首元にはバンダナが巻かれている。ということは中にはカーナが入っているわけだ。
学園長に会いに行っていたのだと話して、兄弟のことを聞いてみると。
「あのね。ごはん、朝と夜はきしだんの寮で食べられるんだけど、お昼はそとに食べに行ってねって、寮母さんが」
それで兄のカイルが旧友たちと放課後や休日に利用するカフェに兄弟で食べに来ていた帰りらしい。
「ん? そのパンは?」
兄が抱えている紙袋からバゲットが2本、飛び出している。
「毎回外食だと高く付くので、明日からはサンドイッチでも作ろうかと」
などという話を聞かされて、もうマーゴットは居た堪れなかった。
(本当に彼らには申し訳ないことをしてしまったわ……)
「……王宮の食堂に来ても良いのだぞ? わたくしから話を通しておこうか」
「いえ、父が宰相閣下と喧嘩してましたし、宰相閣下から下手に突っつかれそうな行為は慎もうと思います。先輩のお気持ちだけいただきますね」
「なら、せめて材料だけ差し入れさせてくれ。日持ちがするものを後で騎士団寮まで届けさせる」
「それは……助かります」
馬車に一緒に乗っていくかと尋ねると、ルシウス少年が「兄さんとデートしてるからまたにしてください!」とニパッと笑いながら言って、兄のカイルと繋いだ手をぶん回していた。
仲の良い兄弟にほっこり成分をチャージさせてもらって、落ち込みがだいぶ緩和されたマーゴットだった。
「仲良し兄弟なのね。微笑ましいわ」
「ああ、うん。ルシウスがな。一方的にブラコンだ」
なるほど、ルシウス少年からのベクトルのほうが強いらしい。
「戻ったら宰相の奴に手配させよう。もちろんあやつのポケットマネーで出させるぞう」
学園は明後日から再開とエルフィン学園長から聞かされていた。
明日は騎士団寮まで、兄弟の様子を見に行っても良いかもしれない。
また馬車に乗り直して車窓から王都を眺めながら。
(シルヴィスはいつ戻ってくるのかしら。任務は数日だって言ってたけど)
そういえば、彼の今後は何をどうするかなど、まったく聞かされていない。
カーナが一度、冒険者ギルドの寮の彼の部屋を訪ねたと言っていたが、そんなに長時間は話せなかったと聞く。
(留学期間は一ヶ月。この間にあと何回会えるかしら)
そもそも、ここが夢の中の世界なら、現実でのシルヴィスとはいったいどのような関係になっているのだろうか?
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