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そうだ、留学しよう~アケロニア王国編

美形一家でチャージした

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 リースト伯爵家に向かう王家の馬車の中で、マーゴットとカーナはグレイシア王女から簡単に、リースト伯爵家の説明を受けた。

「リースト伯爵家は魔法剣士の家だ。魔力で金剛石の魔法剣を複数生み出し、宙に浮かせて攻撃して戦う」

「とにかく魔力の高い一族で、実力は国内でもトップクラスだ」

「ルシウスとメガエリスを見てもわかる通り、とにかく顔が良い。だが、その顔で面倒に巻き込まれることの多い連中だから、決してミーハーに騒いではならぬ」

「「ミーハー?」」

 ついマーゴットとカーナは声を揃えてしまった。

「ああ。顔に見惚れるのは仕方ないが、毅然とした大人の対応を心がけてくれ。特に嫡男のカイルは女嫌いだからな」

「「女嫌い……」」

 グレイシア王女が何を言わんとしていたのかは、リースト伯爵邸に着いてエントランスに入ったらすぐにわかった。
 父親のメガエリスの帰宅に、まず駆けてきたのは昨日会ったばかりのルシウス少年だ。
 たたたたたーっと軽やかな足音をたてて父親に抱きついていた。

「父様、おかえりなさい! 早かったね、おみやげありますか!?」
「残念、土産はない!」
「がーん!」

 わかりやすくショックを受けるルシウス少年に、メガエリスの後ろからひょこっと姿を見せたグレイシア王女が薄い四角の箱を持って見せた。

「土産ならわたくしが持ってきた。ほらほら、ガスター菓子店のショコラだぞう」
「あっ! お約束の品!」

 手を伸ばしてきたルシウス少年が届かないように、ショコラの箱を上に掲げて意地悪しているのを見たマーゴットは、苦笑してグレイシア王女から箱を受け取って渡してあげた。

「昨日はありがとう。これは私とグレイシア様からの気持ちよ」
「お気持ち、受け取りました!」

 ショコラの中箱を受け取ってその場でくるくる回ってルシウス少年が全身で喜びを表している。
 もう本当に可愛い。仔犬が駆け回っているようだ。



「父様、こちらの方は?」

 少し遅れてエントランスまで降りてきた少年が、これまた凄かった。

「な……っ!?」

 大声を上げそうになって咄嗟にマーゴットは慌てて口を塞いだ。
 何てことのない白シャツとグレーのスラックス姿の少年だ。
 ルシウス少年やメガエリス伯爵と同じ青銀の髪と薄い水色の瞳。

(美少年! 控えめに言って美少年だわ!)

「リースト伯爵家の嫡男、カイルです」

 ルシウス少年の七つ上の兄だそうだ。
 学園ではグレイシア王女の後輩とのこと。

 ルシウス少年、メガエリス伯爵、そして兄のカイル。
 親子三人が集うと麗しさに目が潰れそうだった。

「グレイシア、どうして歓迎会のとき彼らを紹介してくれなかったの……」
「リースト伯爵家は家族ぐるみの付き合いなんだ。後からじっくり紹介しようと思ってて」
「そうなの……」

 カレイド王国も美形が多いし、美しい男はカーナで慣れていたと思ったのに甘かった。上には上がいるものである。

 魚切り包丁(聖剣)の黒化で落ち込んでしまっていたマーゴットだが、一気に立ち直った。
 人は美しいものを見るとチャージできる。



 一方、カーナは挨拶だけして面白そうに美形家族を見ていた。

「どうしたの? カーナ」
「ふふ。彼ら、ハイヒューマンの魔人族の末裔だ。すごいね、もうほとんど人間なのに魔人族の外見的特徴をそのまま残してる」

 あの青銀という、かすかに青みがかった透明感のある銀髪と、薄い水色の瞳、麗しの容貌のことだという。

「特にあの瞳の色。あれは彼らの祖先が本拠地にしてた場所にあった湖の色なんだ。ほんのり緑がかった薄い水色で、“湖面の水色”と呼んでたな」

 だが、その湖も今はもうない。
 ハイヒューマンの魔人族がいたのは一万年ほど前のことだとカーナは言った。



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