35 / 129
守護者と立ち向かう新ループ
巨額の造園費用問題、解決2
しおりを挟む
「そもそもわたくし、その霊園? 霊廟? とやらの規模もデザインも、何も意見を求められておりませんわ。実の両親の埋葬場所のことですのよ? ありえません」
過去のループの記憶がなければ、マーゴットは霊園の造園工事が進められていることも知らなかったのだ。
そんな場所に、両親の遺骸を葬る気はなかった。
「さて、代表者殿。こちらの主張はお伝えした。異論があるなら裁判で決着をつけるとしよう。……だが、王家にあらためて請求し直したいと言うなら、宰相子息の私が渡りを付けてやってもいいのだが、どうする?」
宰相令息で現役法務官のテオドアが結論を迫ると、しばらく赤くなったり青くなったりを繰り返していた業者は、やがて分が悪いと悟り諦めたように項垂れて、
「よろしくお願いします」
とだけ言って帰っていった。
「本当に裁判になってしまうのでしょうか?」
「いえ、造園費用が不払いになると彼の建設会社は潰れてしまうので。程々のところで私が父の宰相に話をつけて、王家と交渉できるよう持っていくつもりです」
「そうですか……良かったです」
マーゴットとしても業者を困らせたい訳ではなかった。
「後のことは法務省で対応します」
「お疲れ様でした、ホルトラン侯爵令息様。私だけで業者様と交渉できる自信がなかったのでとても助かりましたわ」
こういうとき、頼りになるのが雑草会のネットワークだ。
千人も会員がいれば、伝手を辿れば必要な知識や人脈がある。
「あの業者、王妃様と懇意にしてるだけあって、雑草会とは縁もゆかりもないのですよ。我々も事態の把握が遅れてしまったのはそのせいです。マーゴット様にはご迷惑をおかけしてしまいました」
「あなたが謝る必要はありません。強気な対応ができて、むしろ感謝しておりますわ」
まだ未成年のマーゴットだけでは交渉も難しかっただろう。
早々に自力の解決を諦めて、神殿と雑草会に助けを求めたのは良い手だった。
後日、さすがにこの話は、テオドア法務官を通じて業者側から王家に訴えがなされ、ことの発端である王妃自身の耳にも入ることになった。
「マーゴット、ごめんなさい! まさかこんな大事になるだなんて私は思わなかったのよ!」
王妃に呼び出され、涙混じりにハグされて謝罪された。
息子のバルカス王子と同じ、金髪と青目のメイ王妃は華奢で、世の中の男の理想を凝縮したようなとても美しい女性だ。
今年成人する息子がいるとは思えないほど若々しく輝いている。
「謝罪は受け入れます。王妃様」
王宮で人目を気にせず何度も何度も頭を下げられた。
謝罪があるなら、マーゴットはそれで後は問題ない。
その後、テオドア法務官を交えて王家と話し合いをした。
霊園の造園費用は王家が出すことになった。
そうなれば、国王が弟夫妻の墓を作ったことになるので、マーゴットも文句は言わなかった。
過去のループの記憶がなければ、マーゴットは霊園の造園工事が進められていることも知らなかったのだ。
そんな場所に、両親の遺骸を葬る気はなかった。
「さて、代表者殿。こちらの主張はお伝えした。異論があるなら裁判で決着をつけるとしよう。……だが、王家にあらためて請求し直したいと言うなら、宰相子息の私が渡りを付けてやってもいいのだが、どうする?」
宰相令息で現役法務官のテオドアが結論を迫ると、しばらく赤くなったり青くなったりを繰り返していた業者は、やがて分が悪いと悟り諦めたように項垂れて、
「よろしくお願いします」
とだけ言って帰っていった。
「本当に裁判になってしまうのでしょうか?」
「いえ、造園費用が不払いになると彼の建設会社は潰れてしまうので。程々のところで私が父の宰相に話をつけて、王家と交渉できるよう持っていくつもりです」
「そうですか……良かったです」
マーゴットとしても業者を困らせたい訳ではなかった。
「後のことは法務省で対応します」
「お疲れ様でした、ホルトラン侯爵令息様。私だけで業者様と交渉できる自信がなかったのでとても助かりましたわ」
こういうとき、頼りになるのが雑草会のネットワークだ。
千人も会員がいれば、伝手を辿れば必要な知識や人脈がある。
「あの業者、王妃様と懇意にしてるだけあって、雑草会とは縁もゆかりもないのですよ。我々も事態の把握が遅れてしまったのはそのせいです。マーゴット様にはご迷惑をおかけしてしまいました」
「あなたが謝る必要はありません。強気な対応ができて、むしろ感謝しておりますわ」
まだ未成年のマーゴットだけでは交渉も難しかっただろう。
早々に自力の解決を諦めて、神殿と雑草会に助けを求めたのは良い手だった。
後日、さすがにこの話は、テオドア法務官を通じて業者側から王家に訴えがなされ、ことの発端である王妃自身の耳にも入ることになった。
「マーゴット、ごめんなさい! まさかこんな大事になるだなんて私は思わなかったのよ!」
王妃に呼び出され、涙混じりにハグされて謝罪された。
息子のバルカス王子と同じ、金髪と青目のメイ王妃は華奢で、世の中の男の理想を凝縮したようなとても美しい女性だ。
今年成人する息子がいるとは思えないほど若々しく輝いている。
「謝罪は受け入れます。王妃様」
王宮で人目を気にせず何度も何度も頭を下げられた。
謝罪があるなら、マーゴットはそれで後は問題ない。
その後、テオドア法務官を交えて王家と話し合いをした。
霊園の造園費用は王家が出すことになった。
そうなれば、国王が弟夫妻の墓を作ったことになるので、マーゴットも文句は言わなかった。
13
お気に入りに追加
1,648
あなたにおすすめの小説
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
三月叶姫
恋愛
私はこの世界から嫌われている。
みんな、私が死ぬ事を望んでいる――。
とある悪役令嬢は、婚約者の王太子から婚約破棄を宣言された後、聖女暗殺未遂の罪で処刑された。だが、彼女は一年前に時を遡り、目を覚ました。
同じ時を繰り返し始めた彼女の結末はいつも同じ。
それでも、彼女は最期の瞬間は必ず笑顔を貫き通した。
十回目となった処刑台の上で、ついに貼り付けていた笑顔の仮面が剥がれ落ちる。
涙を流し、助けを求める彼女に向けて、誰かが彼女の名前を呼んだ。
今、私の名前を呼んだのは、誰だったの?
※こちらの作品は他サイトにも掲載しております
婚約者に見捨てられた悪役令嬢は世界の終わりにお茶を飲む
めぐめぐ
ファンタジー
魔王によって、世界が終わりを迎えるこの日。
彼女はお茶を飲みながら、青年に語る。
婚約者である王子、異世界の聖女、聖騎士とともに、魔王を倒すために旅立った魔法使いたる彼女が、悪役令嬢となるまでの物語を――
※終わりは読者の想像にお任せする形です
※頭からっぽで
公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」
「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」
公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。
* エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
【完結】「ループ三回目の悪役令嬢は過去世の恨みを込めて王太子をぶん殴る!」
まほりろ
恋愛
※「小説家になろう」異世界転生転移(恋愛)ランキング日間2位!2022年7月1日
公爵令嬢ベルティーナ・ルンゲは過去三回の人生で三回とも冤罪をかけられ、王太子に殺されていた。
四度目の人生……
「どうせ今回も冤罪をかけられて王太子に殺されるんでしょ?
今回の人生では王太子に何もされてないけど、王子様の顔を見てるだけで過去世で殺された事を思い出して腹が立つのよね!
殺される前に王太子の顔を一発ぶん殴ってやらないと気がすまないわ!」
何度もタイムリープを繰り返しやさぐれてしまったベルティーナは、目の前にいる十歳の王太子の横っ面を思いっきりぶん殴った。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろうにも投稿しています。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる