36 / 129
守護者と立ち向かう新ループ
王家の支援金への横領対策
しおりを挟む
マーゴットが学園の最終学年に進学する頃にはすでに、王家からオズ公爵家への支援金や、王太女への支度金がバルカス王子の横領、着服被害に遭っている。
「確か、お父様たちが亡くなって少し経ったころからだったわね……」
王家からの金貨を横取りされるようになって、もう数年が経過している。
いったい、そんな大金を何に使っているのかと思えば、主に娼館通いらしい。
仮にも王族のバルカス王子が通うぐらいだから高級娼館だ。
「場末の下級娼館を使って、変な病気を貰って来ないだけマシかしら」
マーゴットだってわかっている。そんな呑気な問題ではない。
そこで娼婦を買うだけでなく、派手に飲食したり、店の者たちに金貨をばら撒いて“お大尽”振っているそうな。
学園にも娼館から直接通う日があるほどで、マーゴットも注意しに行ったら二日酔いで機嫌の悪いバルカス王子を何度も見た。
まだ学生の身で娼館に通い、飲酒する男。
それがマーゴットの婚約者で未来の王配なわけだが。
「………………」
本当に、あんな不良債権、捨ててしまえばいいのだ。
「……見捨てるだけならいつでもできる」
ただ、その寸前でいつも、どうしても最後の最後で踏ん切りがつかなかった。
それで何十回も似たような残酷な最期を迎えてループしているのだから、救えない。
これでは親友のグレイシア王女に「馬鹿女!」と罵倒されるわけだ。つらい。
ともあれ、バルカス王子が着服する王家からの支援金等については、過去のループの記憶を頼りに対策を講じた。
これまでは、バルカスは金貨を『婚約者のマーゴットの家に持参する』振りをしていた。
毎月必ずマーゴットのもとに行く名目で、バルカスは王家から金貨を預かることができていたので。
そこでマーゴットは、今回の人生では、もうサインを変更するなど遠回りな対策は取らなかった。
彼が毎月オズ公爵家まで持ってくるのではなく、雑草会が運営する金融機関に振り込みしてくれるよう王宮の財務省を訪れて手続きを行なった。
同時に、バルカス王子がオズ公爵家の金庫を勝手に開けて中の金貨を持ち出せないように、公爵家の財産も最低限の生活費だけ残して、金融機関にすべて預けるよう手配した。
これでひとまず、オズ公爵家は困窮から抜け出すことができた。
こうなると、遊ぶ金を得られなくなったバルカス王子は早々にオズ公爵家を訪れることがなくなった。
マーゴットは散々罵倒されたが、よく自分の非を忘れてマーゴットを責められるものだ。
その上、何だかんだで母親の王妃に甘えて小遣いを引き出して、娼館通いも止めていないようだった。
「……バルカスは元々、邪なものに染まりやすい気質だったってことなんだろうね。哀れなことだ」
神殿まで報告に行くと、出迎えてくれたカーナが一通り話を聞き終わった後で、しみじみと言った。
「でも。だって、子供の頃はあんなに素直で正義感の強い子だったのに」
「そろそろ現実を見たほうがいいよ、マーゴット。オレたちが今見ているバルカスこそが現実じゃないか」
「………………」
「まだ駄目なんだね。本当に困った子だ」
自分の、バルカス王子に対する言動だけが上手くいかないことには気づいている。
頭で考える分には、バルカス王子にも、国王や王妃にも毅然とした態度で立ち向かうのがベストだとわかっていた。
けれど実際に彼らを前にすると、マーゴットはどうにも愚かな女に成り下がってしまう。
「確か、お父様たちが亡くなって少し経ったころからだったわね……」
王家からの金貨を横取りされるようになって、もう数年が経過している。
いったい、そんな大金を何に使っているのかと思えば、主に娼館通いらしい。
仮にも王族のバルカス王子が通うぐらいだから高級娼館だ。
「場末の下級娼館を使って、変な病気を貰って来ないだけマシかしら」
マーゴットだってわかっている。そんな呑気な問題ではない。
そこで娼婦を買うだけでなく、派手に飲食したり、店の者たちに金貨をばら撒いて“お大尽”振っているそうな。
学園にも娼館から直接通う日があるほどで、マーゴットも注意しに行ったら二日酔いで機嫌の悪いバルカス王子を何度も見た。
まだ学生の身で娼館に通い、飲酒する男。
それがマーゴットの婚約者で未来の王配なわけだが。
「………………」
本当に、あんな不良債権、捨ててしまえばいいのだ。
「……見捨てるだけならいつでもできる」
ただ、その寸前でいつも、どうしても最後の最後で踏ん切りがつかなかった。
それで何十回も似たような残酷な最期を迎えてループしているのだから、救えない。
これでは親友のグレイシア王女に「馬鹿女!」と罵倒されるわけだ。つらい。
ともあれ、バルカス王子が着服する王家からの支援金等については、過去のループの記憶を頼りに対策を講じた。
これまでは、バルカスは金貨を『婚約者のマーゴットの家に持参する』振りをしていた。
毎月必ずマーゴットのもとに行く名目で、バルカスは王家から金貨を預かることができていたので。
そこでマーゴットは、今回の人生では、もうサインを変更するなど遠回りな対策は取らなかった。
彼が毎月オズ公爵家まで持ってくるのではなく、雑草会が運営する金融機関に振り込みしてくれるよう王宮の財務省を訪れて手続きを行なった。
同時に、バルカス王子がオズ公爵家の金庫を勝手に開けて中の金貨を持ち出せないように、公爵家の財産も最低限の生活費だけ残して、金融機関にすべて預けるよう手配した。
これでひとまず、オズ公爵家は困窮から抜け出すことができた。
こうなると、遊ぶ金を得られなくなったバルカス王子は早々にオズ公爵家を訪れることがなくなった。
マーゴットは散々罵倒されたが、よく自分の非を忘れてマーゴットを責められるものだ。
その上、何だかんだで母親の王妃に甘えて小遣いを引き出して、娼館通いも止めていないようだった。
「……バルカスは元々、邪なものに染まりやすい気質だったってことなんだろうね。哀れなことだ」
神殿まで報告に行くと、出迎えてくれたカーナが一通り話を聞き終わった後で、しみじみと言った。
「でも。だって、子供の頃はあんなに素直で正義感の強い子だったのに」
「そろそろ現実を見たほうがいいよ、マーゴット。オレたちが今見ているバルカスこそが現実じゃないか」
「………………」
「まだ駄目なんだね。本当に困った子だ」
自分の、バルカス王子に対する言動だけが上手くいかないことには気づいている。
頭で考える分には、バルカス王子にも、国王や王妃にも毅然とした態度で立ち向かうのがベストだとわかっていた。
けれど実際に彼らを前にすると、マーゴットはどうにも愚かな女に成り下がってしまう。
20
お気に入りに追加
1,651
あなたにおすすめの小説
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します

私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のジャンヌは、4年もの間ずっと婚約者で侯爵令息のシャーロンに冷遇されてきた。
オレンジ色の髪に吊り上がった真っ赤な瞳のせいで、一見怖そうに見えるジャンヌに対し、この国で3本の指に入るほどの美青年、シャーロン。美しいシャーロンを、令嬢たちが放っておく訳もなく、常に令嬢に囲まれて楽しそうに過ごしているシャーロンを、ただ見つめる事しか出来ないジャンヌ。
それでも4年前、助けてもらった恩を感じていたジャンヌは、シャーロンを想い続けていたのだが…
ある日いつもの様に辛辣な言葉が並ぶ手紙が届いたのだが、その中にはシャーロンが令嬢たちと口づけをしたり抱き合っている写真が入っていたのだ。それもどの写真も、別の令嬢だ。
自分の事を嫌っている事は気が付いていた。他の令嬢たちと仲が良いのも知っていた。でも、まさかこんな不貞を働いているだなんて、気持ち悪い。
正気を取り戻したジャンヌは、この写真を証拠にシャーロンと婚約破棄をする事を決意。婚約破棄出来た暁には、大好きだった騎士団に戻ろう、そう決めたのだった。
そして両親からも婚約破棄に同意してもらい、シャーロンの家へと向かったのだが…
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
よろしくお願いします。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる