26 / 129
再びのループ~真実の愛を破壊する
真実の愛を免罪符に、王配は女王を殺して破滅した
しおりを挟む
この話は、周囲にバルカスを諦めて新しい王配候補を探すよう勧められることの多かったマーゴットが、なかなかその踏ん切りがつけられなかった理由のひとつでもある。
女王となるマーゴットは、極論を言えば誰の子供を産んでも『国王の子供』であることが保証されている。
男の王と違って妊娠や出産は本人が行うから誤魔化しようがないためだ。
ただ、次世代に血筋順位の高い子供を作るなら、不特定多数の男性と関係を持つのはいけない。
相手の男性から受ける魔力の影響を考えると、やはり伴侶は一人のほうがいい。
たった一人を選ぶなら、マーゴットの身近にいる選択肢の中ではやはりバルカスになってしまう。
そしてマーゴットは、ループ前なら思ってはいても決して口に出さなかったことを、つい、ポロッと言ってしまった。
「他の女と婚前交渉した不潔な男を娶ってやったのよ。種馬の役目ぐらい果たしたらどうなの」
真実の愛のポルテとの関係を不潔と言われて、バルカスは怒りに目の前が真っ赤になった。
「マーゴット! 貴様! 貴様ァッ!」
その勢いのままマーゴットの首を絞めた。
「…………! ………………!!!」
酸欠で赤く紅潮するマーゴットの顔、抵抗する細い手足。
だが成人したばかりとはいえ大人の男であるバルカスにとっては、子供の手足を捻るようなものだった。難なく抵抗を抑えつけた。
やがて動かなくなったマーゴットを見て、ようやくバルカスは我に返った。
「あ、あ……嘘だ、嘘だ、こんなつもりはなかった!」
寝室の外が騒がしい。
「バルカス王配殿下? どうかなさいましたか?」
「来るな! 来るんじゃないぃッ!」
廊下から護衛や侍女たちの声がする。
寝室の中で何か異常事態が発生したと勘づいたのだろう。
バルカスは寝台の上で死体となって転がっているマーゴットを見た。
白いシーツに広がる赤い巻き毛。
半開きの唇。
片目の左目だけが見開かれたまま事切れている。
ネオングリーンに輝く始祖の瞳がバルカスを見つめている。ように見えた。
「なぜだ、マーゴット。お前は最初から知ってたんじゃないか。俺が王太子じゃないことも。王太子と呼ばれていい気になっていた俺の立場が本当はすごく危ういことも!」
そう、そして重要なのは。
「俺がポルテを愛していることだって知っていたはずだ!」
そのポルテを鞭打ち、追放までしたマーゴットを、なぜ愛することができようか?
この後、女王殺害が発覚した王配バルカスは、マーゴットとの婚姻無効の上で王族の身分を剥奪された。
反省の意をまるで見せなかったことから、情状酌量の余地なしと判断され、擁護する者もないまま絞首刑によってその命を終えた。
女王となるマーゴットは、極論を言えば誰の子供を産んでも『国王の子供』であることが保証されている。
男の王と違って妊娠や出産は本人が行うから誤魔化しようがないためだ。
ただ、次世代に血筋順位の高い子供を作るなら、不特定多数の男性と関係を持つのはいけない。
相手の男性から受ける魔力の影響を考えると、やはり伴侶は一人のほうがいい。
たった一人を選ぶなら、マーゴットの身近にいる選択肢の中ではやはりバルカスになってしまう。
そしてマーゴットは、ループ前なら思ってはいても決して口に出さなかったことを、つい、ポロッと言ってしまった。
「他の女と婚前交渉した不潔な男を娶ってやったのよ。種馬の役目ぐらい果たしたらどうなの」
真実の愛のポルテとの関係を不潔と言われて、バルカスは怒りに目の前が真っ赤になった。
「マーゴット! 貴様! 貴様ァッ!」
その勢いのままマーゴットの首を絞めた。
「…………! ………………!!!」
酸欠で赤く紅潮するマーゴットの顔、抵抗する細い手足。
だが成人したばかりとはいえ大人の男であるバルカスにとっては、子供の手足を捻るようなものだった。難なく抵抗を抑えつけた。
やがて動かなくなったマーゴットを見て、ようやくバルカスは我に返った。
「あ、あ……嘘だ、嘘だ、こんなつもりはなかった!」
寝室の外が騒がしい。
「バルカス王配殿下? どうかなさいましたか?」
「来るな! 来るんじゃないぃッ!」
廊下から護衛や侍女たちの声がする。
寝室の中で何か異常事態が発生したと勘づいたのだろう。
バルカスは寝台の上で死体となって転がっているマーゴットを見た。
白いシーツに広がる赤い巻き毛。
半開きの唇。
片目の左目だけが見開かれたまま事切れている。
ネオングリーンに輝く始祖の瞳がバルカスを見つめている。ように見えた。
「なぜだ、マーゴット。お前は最初から知ってたんじゃないか。俺が王太子じゃないことも。王太子と呼ばれていい気になっていた俺の立場が本当はすごく危ういことも!」
そう、そして重要なのは。
「俺がポルテを愛していることだって知っていたはずだ!」
そのポルテを鞭打ち、追放までしたマーゴットを、なぜ愛することができようか?
この後、女王殺害が発覚した王配バルカスは、マーゴットとの婚姻無効の上で王族の身分を剥奪された。
反省の意をまるで見せなかったことから、情状酌量の余地なしと判断され、擁護する者もないまま絞首刑によってその命を終えた。
13
お気に入りに追加
1,646
あなたにおすすめの小説
【完結】本当の悪役令嬢とは
仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。
甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。
『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も
公爵家の本気というものを。
※HOT最高1位!ありがとうございます!
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
【完結】身代わり令嬢の華麗なる復讐
仲村 嘉高
恋愛
「お前を愛する事は無い」
婚約者としての初顔合わせで、フェデリーカ・ティツィアーノは開口一番にそう告げられた。
相手は侯爵家令息であり、フェデリーカは伯爵家令嬢である。
この場で異を唱える事など出来ようか。
無言のフェデリーカを見て了承と受け取ったのか、婚約者のスティーグ・ベッラノーヴァは満足気に笑い、立ち去った。
「一応政略結婚だけど、断れない程じゃないのよね」
フェデリーカが首を傾げ、愚かな婚約者を眺める。
「せっかくなので、慰謝料たんまり貰いましょうか」
とてもとても美しい笑みを浮かべた。
あなたを忘れる魔法があれば
七瀬美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる