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お野菜モンスターの元凶
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「ぜんぶ王妃が悪いってのは確定なのねえ」
「……王妃の所業は他にもありそうよ」
姉妹が研究室の壁に貼られている、タイアド王国の国内地図を指す。
赤ペンでバツ印が付いている場所は、お野菜モンスターが大発生した地域だ。
姉妹がタイアド王国入りして冒険者ギルドで受けた指名依頼が、国内で大繁殖していたお野菜モンスターの調査だった。
特に妹のハスミンは占い師で、ペンデュラムを使った探索スキルが使える。
繁殖の原因を解明してほしいというのが、ここ冒険者ギルドのタイアド王国王都支部からの依頼である。
国内はあらかた調査し終わって、ちょうどマリオンが研究学園を追放される前後にお野菜モンスターの出現は収束していた。
王族として、春から騎士団を率いて討伐任務にあたっていたエドアルド王子が目ぼしい繁殖地を叩き終わったからだ。
ところが、ここに来てまた続々と国内で大繁殖を始めつつあるときた。
机の上にあらかじめ想定される発生原因を書き出した紙を置いて、ハスミンは一件一件、原因をチェックしていった。
使うペンデュラムのトップには究極の浄化作用を持つアダマンタイトの珠を用い、先端部には聖女と聖者の祝福を受けたミスラル銀を使っている。
一般的なペンデュラムでは、人の悪意や邪気の絡む現象をチェックするとペンデュラム自体が穢れてすぐ使い物にならなくなるが、これはいつでも常に浄化された安全な護符でもある。
何ならこのペンデュラムだけで物品の浄化や邪気抜き、魔力チャージもできるぐらいだ。
お野菜モンスターは自然発生か? ノー。
元からタイアド王国の国内に生息していたものか? ノー。
人為的に仕掛けられたものか? イエス。
仕掛け人は国内の人物か? 国外の人物か? →国内人物である。
それは王族か? 貴族か? 平民か? →王族。
「国王、王太子、エド君、王妃、王弟二人……うん、やっぱり王妃ね」
「え、この国の王妃がお野菜モンスターを繁殖させてたってこと? なんで?」
王妃が自国に魔物を繁殖させる理由がわからない。
「お野菜モンスター出現時期は今年の春から。以降、エドが討伐に出てる間ずっと国内に出没し続けてたそうよ。……まあ、野菜だから畑や野原限定なんだけど」
「ピュイッ」
研究室の作業台の上のカゴの中に、マリオンたちが採集してきたお野菜モンスターが山と積まれている。
草食の綿毛竜のルミナスは、太めの顔のあるズッキーニをおやつ代わりに齧っていた。
「時期を考えると、エドとマリオンを会わせたくなかったのかしら」
「それもあるだろうし、エド君を王都から追い払いたくてわざと魔物を繁殖させたんじゃない? あの子、剣バカなとこあるから子供の頃から喜んで討伐任務に出てたもの」
姉妹が今後を話し合っている間にマリオンは今朝の新聞と地図を交互に見ては考え込んでいた。
(エド、今度はタイアドの第7号ダンジョンに行ってるのか。その近隣でもまたお野菜モンスター再発……)
新聞には『今日のエドアルド王子』コーナーがあって、人気王子の活動報告代わりになっている。
先日まで自領の鉱山でミスラルスライム相手に戦闘を続けてようやく帰還したかと思えば、またすぐ王都から出立してしまった。
(エドアルド王子、キングミスラルスライム相手に名刀匠の剣を数振り潰す、か)
マリオンは魔導具師だから、刀鍛冶のような武器は作れない。既にある武器に仕掛けを施すのは得意なのだが。
ただ、マリオンは錬金魔導具師といって、魔導具に組み込む魔石や鉱物、あるいは魔法樹脂という魔力で作る透明な樹脂に、錬金スキルを用いて様々な属性付与する能力があった。
(本当ならじいじから貰ったアダマンタイトを使って、エドに錬金剣を作りたかったんだよね。タイアドは芸術の国だから、装飾のカッコいい剣を調達してさ)
研究学園にはエドアルド王子も学生として通学すると聞いていたから、一緒に開発していこうと思ったら、あの偽王子からの虐げと追放だ。本当にツイてない。
(じいじは先に国に帰りなさいって言ってくれたけど……)
すれ違ってばかりだし、この間の大衆浴場でも素知らぬ振りでエドアルド王子とはほとんど話もできなかった。
(エド、すごく格好良くなってた。ああして間近で見ると偽王子とは全然顔つきも違かったよね。もっと真面目に対応してたら今頃とっくにエドと再会できてたのかな……)
とりあえずもうちょっとだけ、マリオンは知らんぷりを続けるつもりでいる。
「……王妃の所業は他にもありそうよ」
姉妹が研究室の壁に貼られている、タイアド王国の国内地図を指す。
赤ペンでバツ印が付いている場所は、お野菜モンスターが大発生した地域だ。
姉妹がタイアド王国入りして冒険者ギルドで受けた指名依頼が、国内で大繁殖していたお野菜モンスターの調査だった。
特に妹のハスミンは占い師で、ペンデュラムを使った探索スキルが使える。
繁殖の原因を解明してほしいというのが、ここ冒険者ギルドのタイアド王国王都支部からの依頼である。
国内はあらかた調査し終わって、ちょうどマリオンが研究学園を追放される前後にお野菜モンスターの出現は収束していた。
王族として、春から騎士団を率いて討伐任務にあたっていたエドアルド王子が目ぼしい繁殖地を叩き終わったからだ。
ところが、ここに来てまた続々と国内で大繁殖を始めつつあるときた。
机の上にあらかじめ想定される発生原因を書き出した紙を置いて、ハスミンは一件一件、原因をチェックしていった。
使うペンデュラムのトップには究極の浄化作用を持つアダマンタイトの珠を用い、先端部には聖女と聖者の祝福を受けたミスラル銀を使っている。
一般的なペンデュラムでは、人の悪意や邪気の絡む現象をチェックするとペンデュラム自体が穢れてすぐ使い物にならなくなるが、これはいつでも常に浄化された安全な護符でもある。
何ならこのペンデュラムだけで物品の浄化や邪気抜き、魔力チャージもできるぐらいだ。
お野菜モンスターは自然発生か? ノー。
元からタイアド王国の国内に生息していたものか? ノー。
人為的に仕掛けられたものか? イエス。
仕掛け人は国内の人物か? 国外の人物か? →国内人物である。
それは王族か? 貴族か? 平民か? →王族。
「国王、王太子、エド君、王妃、王弟二人……うん、やっぱり王妃ね」
「え、この国の王妃がお野菜モンスターを繁殖させてたってこと? なんで?」
王妃が自国に魔物を繁殖させる理由がわからない。
「お野菜モンスター出現時期は今年の春から。以降、エドが討伐に出てる間ずっと国内に出没し続けてたそうよ。……まあ、野菜だから畑や野原限定なんだけど」
「ピュイッ」
研究室の作業台の上のカゴの中に、マリオンたちが採集してきたお野菜モンスターが山と積まれている。
草食の綿毛竜のルミナスは、太めの顔のあるズッキーニをおやつ代わりに齧っていた。
「時期を考えると、エドとマリオンを会わせたくなかったのかしら」
「それもあるだろうし、エド君を王都から追い払いたくてわざと魔物を繁殖させたんじゃない? あの子、剣バカなとこあるから子供の頃から喜んで討伐任務に出てたもの」
姉妹が今後を話し合っている間にマリオンは今朝の新聞と地図を交互に見ては考え込んでいた。
(エド、今度はタイアドの第7号ダンジョンに行ってるのか。その近隣でもまたお野菜モンスター再発……)
新聞には『今日のエドアルド王子』コーナーがあって、人気王子の活動報告代わりになっている。
先日まで自領の鉱山でミスラルスライム相手に戦闘を続けてようやく帰還したかと思えば、またすぐ王都から出立してしまった。
(エドアルド王子、キングミスラルスライム相手に名刀匠の剣を数振り潰す、か)
マリオンは魔導具師だから、刀鍛冶のような武器は作れない。既にある武器に仕掛けを施すのは得意なのだが。
ただ、マリオンは錬金魔導具師といって、魔導具に組み込む魔石や鉱物、あるいは魔法樹脂という魔力で作る透明な樹脂に、錬金スキルを用いて様々な属性付与する能力があった。
(本当ならじいじから貰ったアダマンタイトを使って、エドに錬金剣を作りたかったんだよね。タイアドは芸術の国だから、装飾のカッコいい剣を調達してさ)
研究学園にはエドアルド王子も学生として通学すると聞いていたから、一緒に開発していこうと思ったら、あの偽王子からの虐げと追放だ。本当にツイてない。
(じいじは先に国に帰りなさいって言ってくれたけど……)
すれ違ってばかりだし、この間の大衆浴場でも素知らぬ振りでエドアルド王子とはほとんど話もできなかった。
(エド、すごく格好良くなってた。ああして間近で見ると偽王子とは全然顔つきも違かったよね。もっと真面目に対応してたら今頃とっくにエドと再会できてたのかな……)
とりあえずもうちょっとだけ、マリオンは知らんぷりを続けるつもりでいる。
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