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じいじと姉妹で秘密の話し合い
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その後は祖父ダリオンの計らいでギルドマスターに話を通し、マリオンは姉妹の宿泊室から冒険者ギルドの使っていなかった研究室を借り受けることになった。
簡単な研究用の機材があるので、今後マリオンがまた研究学園に戻るか、故郷に帰還するかまでの短い間、利用させてもらう。
「一緒に国に帰ろうぜって言いたいとこだが、お前をこの国に呼んだ王子や王家との話し合いが終わるまで時間がかかるだろう。しばらくは姉ちゃんたちと一緒にいてくれや」
「はあい」
「ピュイッ」
ダリオンはさすがに冒険者ギルドのお偉いさんなので、ギルド側が王都のホテルのVIPルームを手配していた。
マリオンも誘われたが、この国に残っている間は冒険者活動しながらランクを上げておきたいので、冒険者ギルドに残ることにした。
そこでまた「孫ちゃんと離れるのつらい!」と祖父に泣かれたのは言うまでもない。
「やだ、ダリオン君たらエド君にそんなこと言ったのお!?」
「ミスラル1キロ持ってこい、か。鬼ね」
その日の夜、マリオンはもう冒険者ギルドの研究室から出ないと言うので、ルミナスに託してハスミンとガブリエラ姉妹はダリオンを宿泊するホテルまで訪ねに行った。
そしてそこで、マリオンと再会する前に彼がエドアルド王子とやり合った話を聞いて大いに呆れた。
「わしも、マリオンがあんなに気落ちするとは思わなんだ……」
「どうするの? あの様子だとマリオン君、エド君から後回しにされたって誤解してるわよ?」
「誤解したまま国に帰って縁が切れるなら、そのほうがいいかもしんねえなあ」
と髪と同じピンクブラウンの顎髭を撫でながらのダリオン。
マリオンとエドアルド王子は幼馴染みで、どうも両想いっぽいのだが、ダリオンとしては可愛い孫ちゃんを渡したくない。
「あいつらの間には障害山盛りじゃん? そもそもタイアド王国は同性愛者の結婚は認めてねえし。恋人ならともかく、わしは可愛いマリオンを既婚者になった王子の愛人にする気はねえのよ」
「あなたたちのアケロニア王国は同性結婚が可能だったっけ。エドアルド王子がアケロニアに来ればいいのでは?」
「それがさあ……」
姉ガブリエラの指摘に、ダリオンは短く刈り上げたピンクブラウンの髪を掻いた。
「エド君、ネオンカラーの魔力出してたわ。ネオンオレンジ。元々素質はあったけど、マリオンの苦境を知って元凶たち相手に覚醒したっぽい」
「ネオンオレンジ……まさか」
「エド君は剣士だから剣聖。間違いねえ。だとすると、タイアド王家がエド君を手放す可能性はゼロだろうよ」
この世界ではネオンカラー、蛍光色の光る魔力を持つ者は、聖なる魔力の術者だ。
聖なる魔力は、世界の理の擬人化存在と言われていて、代表は聖女や聖者だが、数が少ない。
大抵は各々の専門分野や得意なことを突き詰めた果てに世界の理とリンクした者が、聖なる魔力持ちとして覚醒する。
剣士なら剣聖、拳闘士なら拳聖、弓使いは弓聖、医療系の術者なら医聖といった具合だ。
例外は勇者だが、勇者は一時代にひとり出るか出ないかなので今回は無関係だろう。
百年前にひとり出たが、その良い影響がまだ残っているので出現はまだまだ先の時代になる。
「……ここ、タイアド王国は昔から揉めごとを起こしやすい国だわ。特に王族が」
「うちの国の王女様を早死にさせたってことで、両国の関係めちゃくちゃ悪かったんだよな」
もう百年以上も前のことだ。
エドアルド王子のタイアド王国に、マリオンの故郷アケロニア王国の王女様が輿入れして王妃になった。
だが王女様は粗末な扱いをされて、王子ひとりを残して早死にしてしまった。
以降ずっと両国の関係はいつ戦争になってもおかしくなかったのだが、その後、不遇の王女様が産んだ王子が王位を奪って悪徳の国王や王族たちを断罪したことで国交が正常化している。
今のタイアド王族はそのアケロニア王族の王女様の子孫でもあって、この血筋が王位を継ぐようになってからのタイアド王国はとても安定して豊かだ。
ただ残念ながら、現在の王妃はその血を引かない元々のタイアド王族の末裔だった。
まさか、その“やらかし”が自分の孫の上に降りかかるとは、ダリオンも夢にも思わなかったのだが。
「剣聖がひとりいれば、国の穢れを相当祓えるからな。芸術と虚飾の国タイアドは常に堕落と紙一重だ」
「しかも王族に剣聖が出たとなれば」
「……次期国王にって声は今でも出てるわけだしな」
あのエド君、いやエドアルド王子は低い身分の側室腹の第二王子でゆる~い気質の持ち主だが、国民に人気がある。
十代の早いうちから剣士の頭角を現して騎士団を率いて魔物の討伐に出向いており、民たちと接する機会が多かったためだ。
それでいて父親の国王と異母兄の王太子から溺愛されている。
仲が悪いのは義母の王妃ぐらいだ。
「まあ細かいこたぁ、諸々片付いてからだ。姉ちゃんたち、わしの可愛いマリオンちゃんを頼んだぞ!」
「「任された!」」
任された後、何をどうするかはこっちのものだ。
ハスミンとガブリエラ姉妹は金髪と藍色の髪と髪色こそ違うが、同じ鮮やかな水色の瞳でにんまりと笑い合った。
簡単な研究用の機材があるので、今後マリオンがまた研究学園に戻るか、故郷に帰還するかまでの短い間、利用させてもらう。
「一緒に国に帰ろうぜって言いたいとこだが、お前をこの国に呼んだ王子や王家との話し合いが終わるまで時間がかかるだろう。しばらくは姉ちゃんたちと一緒にいてくれや」
「はあい」
「ピュイッ」
ダリオンはさすがに冒険者ギルドのお偉いさんなので、ギルド側が王都のホテルのVIPルームを手配していた。
マリオンも誘われたが、この国に残っている間は冒険者活動しながらランクを上げておきたいので、冒険者ギルドに残ることにした。
そこでまた「孫ちゃんと離れるのつらい!」と祖父に泣かれたのは言うまでもない。
「やだ、ダリオン君たらエド君にそんなこと言ったのお!?」
「ミスラル1キロ持ってこい、か。鬼ね」
その日の夜、マリオンはもう冒険者ギルドの研究室から出ないと言うので、ルミナスに託してハスミンとガブリエラ姉妹はダリオンを宿泊するホテルまで訪ねに行った。
そしてそこで、マリオンと再会する前に彼がエドアルド王子とやり合った話を聞いて大いに呆れた。
「わしも、マリオンがあんなに気落ちするとは思わなんだ……」
「どうするの? あの様子だとマリオン君、エド君から後回しにされたって誤解してるわよ?」
「誤解したまま国に帰って縁が切れるなら、そのほうがいいかもしんねえなあ」
と髪と同じピンクブラウンの顎髭を撫でながらのダリオン。
マリオンとエドアルド王子は幼馴染みで、どうも両想いっぽいのだが、ダリオンとしては可愛い孫ちゃんを渡したくない。
「あいつらの間には障害山盛りじゃん? そもそもタイアド王国は同性愛者の結婚は認めてねえし。恋人ならともかく、わしは可愛いマリオンを既婚者になった王子の愛人にする気はねえのよ」
「あなたたちのアケロニア王国は同性結婚が可能だったっけ。エドアルド王子がアケロニアに来ればいいのでは?」
「それがさあ……」
姉ガブリエラの指摘に、ダリオンは短く刈り上げたピンクブラウンの髪を掻いた。
「エド君、ネオンカラーの魔力出してたわ。ネオンオレンジ。元々素質はあったけど、マリオンの苦境を知って元凶たち相手に覚醒したっぽい」
「ネオンオレンジ……まさか」
「エド君は剣士だから剣聖。間違いねえ。だとすると、タイアド王家がエド君を手放す可能性はゼロだろうよ」
この世界ではネオンカラー、蛍光色の光る魔力を持つ者は、聖なる魔力の術者だ。
聖なる魔力は、世界の理の擬人化存在と言われていて、代表は聖女や聖者だが、数が少ない。
大抵は各々の専門分野や得意なことを突き詰めた果てに世界の理とリンクした者が、聖なる魔力持ちとして覚醒する。
剣士なら剣聖、拳闘士なら拳聖、弓使いは弓聖、医療系の術者なら医聖といった具合だ。
例外は勇者だが、勇者は一時代にひとり出るか出ないかなので今回は無関係だろう。
百年前にひとり出たが、その良い影響がまだ残っているので出現はまだまだ先の時代になる。
「……ここ、タイアド王国は昔から揉めごとを起こしやすい国だわ。特に王族が」
「うちの国の王女様を早死にさせたってことで、両国の関係めちゃくちゃ悪かったんだよな」
もう百年以上も前のことだ。
エドアルド王子のタイアド王国に、マリオンの故郷アケロニア王国の王女様が輿入れして王妃になった。
だが王女様は粗末な扱いをされて、王子ひとりを残して早死にしてしまった。
以降ずっと両国の関係はいつ戦争になってもおかしくなかったのだが、その後、不遇の王女様が産んだ王子が王位を奪って悪徳の国王や王族たちを断罪したことで国交が正常化している。
今のタイアド王族はそのアケロニア王族の王女様の子孫でもあって、この血筋が王位を継ぐようになってからのタイアド王国はとても安定して豊かだ。
ただ残念ながら、現在の王妃はその血を引かない元々のタイアド王族の末裔だった。
まさか、その“やらかし”が自分の孫の上に降りかかるとは、ダリオンも夢にも思わなかったのだが。
「剣聖がひとりいれば、国の穢れを相当祓えるからな。芸術と虚飾の国タイアドは常に堕落と紙一重だ」
「しかも王族に剣聖が出たとなれば」
「……次期国王にって声は今でも出てるわけだしな」
あのエド君、いやエドアルド王子は低い身分の側室腹の第二王子でゆる~い気質の持ち主だが、国民に人気がある。
十代の早いうちから剣士の頭角を現して騎士団を率いて魔物の討伐に出向いており、民たちと接する機会が多かったためだ。
それでいて父親の国王と異母兄の王太子から溺愛されている。
仲が悪いのは義母の王妃ぐらいだ。
「まあ細かいこたぁ、諸々片付いてからだ。姉ちゃんたち、わしの可愛いマリオンちゃんを頼んだぞ!」
「「任された!」」
任された後、何をどうするかはこっちのものだ。
ハスミンとガブリエラ姉妹は金髪と藍色の髪と髪色こそ違うが、同じ鮮やかな水色の瞳でにんまりと笑い合った。
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