16 / 62
side 王子 王子様は仕事が早い
しおりを挟む
『エドアルド王子様は幼い頃に一度会ったきりの私のことなどすっかり忘れてしまわれたようです。
数年前までは親しく手紙のやりとりもしていたのに……
あんなに仲が良かったのに、僕のことを“田舎の泥臭い下民が!”と罵りました。僕はもう耐えられそうにありません』
そして、次に何かされたらもう研究学園を出てしまおうと思っていたら、学期末集会でエドアルド王子から退学追放を言い渡されたという。
『私は本国ではまだ未成年の17歳ですが、タイアド王国の研究学園には魔導具師の特別講師として招かれていたはずです。
なぜ、講師が学生と勘違いされたのか?
タイアド王国と私の故郷アケロニア王国の国交が回復して百年。
一魔導具師に過ぎない私の境遇如きで両国の関係が再び悪化することを、私は望みません。
タイアド王国には速やかな事態の調査を願っています』
以降、研究学園での滞在時、誰にどのような態度や仕打ちを受けたかの名前と出来事が列挙されている。
筆頭はエドアルド第二王子だが、補足に「変装用の姿変え魔導具の装着を視認している。別人である可能性高し」と書かれていた。
そして元の人物の髪や目の色、顔立ちの特徴なども。
「意味がわからないです。俺は父上のご命令で討伐任務に出てて学園を休学中だったじゃないですか?」
「う、うむ。そのはずだな」
「じゃあ、俺のいない間に研究学園でマリオンを虐げたエドアルド王子って誰なんです!?」
ここに真・エドアルド王子がいるのだから、研究学園にいた偽王子はいったい誰なのか?
と散々溜めに溜めて緊張感を作った後で、エドアルド王子はフッと笑うと、自分が謁見室まで引いてきた荷車を蹴り飛ばして中身を床にぶち撒けた。
「!?」
すると、たくさんの顔のある大型野菜に紛れて、両手両足首を身体の前でまとめて拘束され、猿ぐつわで口を塞がれた学生服の男子生徒三人が転がり落ちてくるではないか。
「さて、ここでご報告が。研究学園で第二王子エドアルドの名を騙って好き勝手していた罪人たちを捕らえております。この三名は王子の取り巻きだったそうで」
ピューッとダリオンが小さく口笛を吹いた。仕事が早いと感心しているようだ。
「エドアルド。お前の偽物はおらんのか?」
「一歩遅かったようで逃げられてしまいました。でもご安心ください!」
げしっと男子生徒のひとりの背中に足を乗せて、父親の国王の隣に、にっこり笑いかけた。
「既に自白魔法を用いて黒幕の名前が判明しております。誰の名前を白状したと思いますか? ねえ、王妃殿下?」
「ひっ!?」
王妃が小さく悲鳴をあげて、目に見えて震え出す。
誰の目にも真犯人が明らかになった瞬間だった。
数年前までは親しく手紙のやりとりもしていたのに……
あんなに仲が良かったのに、僕のことを“田舎の泥臭い下民が!”と罵りました。僕はもう耐えられそうにありません』
そして、次に何かされたらもう研究学園を出てしまおうと思っていたら、学期末集会でエドアルド王子から退学追放を言い渡されたという。
『私は本国ではまだ未成年の17歳ですが、タイアド王国の研究学園には魔導具師の特別講師として招かれていたはずです。
なぜ、講師が学生と勘違いされたのか?
タイアド王国と私の故郷アケロニア王国の国交が回復して百年。
一魔導具師に過ぎない私の境遇如きで両国の関係が再び悪化することを、私は望みません。
タイアド王国には速やかな事態の調査を願っています』
以降、研究学園での滞在時、誰にどのような態度や仕打ちを受けたかの名前と出来事が列挙されている。
筆頭はエドアルド第二王子だが、補足に「変装用の姿変え魔導具の装着を視認している。別人である可能性高し」と書かれていた。
そして元の人物の髪や目の色、顔立ちの特徴なども。
「意味がわからないです。俺は父上のご命令で討伐任務に出てて学園を休学中だったじゃないですか?」
「う、うむ。そのはずだな」
「じゃあ、俺のいない間に研究学園でマリオンを虐げたエドアルド王子って誰なんです!?」
ここに真・エドアルド王子がいるのだから、研究学園にいた偽王子はいったい誰なのか?
と散々溜めに溜めて緊張感を作った後で、エドアルド王子はフッと笑うと、自分が謁見室まで引いてきた荷車を蹴り飛ばして中身を床にぶち撒けた。
「!?」
すると、たくさんの顔のある大型野菜に紛れて、両手両足首を身体の前でまとめて拘束され、猿ぐつわで口を塞がれた学生服の男子生徒三人が転がり落ちてくるではないか。
「さて、ここでご報告が。研究学園で第二王子エドアルドの名を騙って好き勝手していた罪人たちを捕らえております。この三名は王子の取り巻きだったそうで」
ピューッとダリオンが小さく口笛を吹いた。仕事が早いと感心しているようだ。
「エドアルド。お前の偽物はおらんのか?」
「一歩遅かったようで逃げられてしまいました。でもご安心ください!」
げしっと男子生徒のひとりの背中に足を乗せて、父親の国王の隣に、にっこり笑いかけた。
「既に自白魔法を用いて黒幕の名前が判明しております。誰の名前を白状したと思いますか? ねえ、王妃殿下?」
「ひっ!?」
王妃が小さく悲鳴をあげて、目に見えて震え出す。
誰の目にも真犯人が明らかになった瞬間だった。
46
お気に入りに追加
584
あなたにおすすめの小説
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
【完結】ただの狼です?神の使いです??
野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい?
司祭×白狼(人間の姿になります)
神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。
全15話+おまけ+番外編
!地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください!
番外編更新中です。土日に更新します。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる