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陰謀に巻き込まれてたみたいです
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「「王子様の偽物!?」」
研究学園から友達の綿毛竜と逃げ出してきた経緯を聞いて、ハスミンとガブリエラ姉妹は声をあげて驚いた。
「しー、しー! 他の人に聞こえちゃうでしょ!」
マリオンはここに来るまでの経緯をふたりに簡単に説明した。
ハスミンからルミナスを受け取ってもふりながら、まずは国ひとつ跨いだ同盟国から、魔導具師の自分がここ、タイアド王国に招聘される経緯を。
特別講師として招かれたはずが、学園に行ってみると生徒と勘違いされた上に、職員寮にも学生寮の利用許可も下りなくて、倉庫代わりの小屋にルミナスとこっそり隠れて住んでいたこと。
赴任期間中、講義を開いたが教室には誰も生徒が参加せず、参加しようとした生徒がいれば王子の率いる生徒会長が阻害したこと。
研究学園を通じて発表したマリオンが新規開発した魔導具師の設計図が、なぜか途中で盗まれて、この王都の魔導具師ギルドの別の魔導具師たちの成果として発表されることが続いた、などだ。
「いちばん酷かったのは、食堂を使わせてくれなかったことだよ……仕方ないからこっそり抜け出して冒険者登録して食費を稼いでたんだ」
「ピューイッ」
これら不遇な扱いの原因をマリオンなりに調べてみたのだが、どうもよくわからない。
マリオンを研究学園に招いた当のエドアルド王子がマリオンをまったく知らず、よくわからない言いがかりや、理不尽な扱いばかりしてくる。
本人は取り付く島もないし、かといって責任者の学園長は長期で留守にしている。
留守を預かる副学園長は王子たちとグルで、マリオンを虐げる側。
「それ、今年の春からでしょ? なんですぐ逃げてこないの」
「せめて故郷の家族に助けを求めるとか」
と姉妹に叱られるも、マリオンにだって言い分はある。
「研究学園、お金かけてるだけあって設備は良かったんだー。お陰で研究は捗ったよ」
「もう。技術屋はこれだから……。その情熱を陰謀の解明に使いなさいよね!」
「陰謀?」
とルミナスをもふりながら一緒に小首を傾げると、ガブリエラが食堂内のラックから新聞を持ってきた。
「あなたの知り合いだという王子は今、魔物の討伐任務に就いてるのよ。王族だから責任者ね。このマンドラゴラもどきを含めた植物の魔物が広がってる地域を片っ端から巡ってる」
新聞を受け取ると、確かにエドアルド第二王子の活躍が日報として掲載されている。
「ちょうど春頃から。マリオン君がこの国に来たのもその頃でしょ?」
「……エドが。でも、だって、そんなこと手紙にも全然書いてなかったのに……」
実はマリオンは筆まめで、この国に来てからも週一で王宮宛に手紙を書いているのだ。
だが、言われてみれば研究学園に入ってから返事は来ていない。相手は王子だし、何かと忙しいと聞いていたからそんなものだと軽く考えていた。
わざわざ他国からマリオンを呼び寄せるぐらいだから、時間ができたときにお茶を飲むぐらいできるだろうと思っていたら、春からあっという間に冬になってしまった。
時間が経つのは早いなー。
研究学園から友達の綿毛竜と逃げ出してきた経緯を聞いて、ハスミンとガブリエラ姉妹は声をあげて驚いた。
「しー、しー! 他の人に聞こえちゃうでしょ!」
マリオンはここに来るまでの経緯をふたりに簡単に説明した。
ハスミンからルミナスを受け取ってもふりながら、まずは国ひとつ跨いだ同盟国から、魔導具師の自分がここ、タイアド王国に招聘される経緯を。
特別講師として招かれたはずが、学園に行ってみると生徒と勘違いされた上に、職員寮にも学生寮の利用許可も下りなくて、倉庫代わりの小屋にルミナスとこっそり隠れて住んでいたこと。
赴任期間中、講義を開いたが教室には誰も生徒が参加せず、参加しようとした生徒がいれば王子の率いる生徒会長が阻害したこと。
研究学園を通じて発表したマリオンが新規開発した魔導具師の設計図が、なぜか途中で盗まれて、この王都の魔導具師ギルドの別の魔導具師たちの成果として発表されることが続いた、などだ。
「いちばん酷かったのは、食堂を使わせてくれなかったことだよ……仕方ないからこっそり抜け出して冒険者登録して食費を稼いでたんだ」
「ピューイッ」
これら不遇な扱いの原因をマリオンなりに調べてみたのだが、どうもよくわからない。
マリオンを研究学園に招いた当のエドアルド王子がマリオンをまったく知らず、よくわからない言いがかりや、理不尽な扱いばかりしてくる。
本人は取り付く島もないし、かといって責任者の学園長は長期で留守にしている。
留守を預かる副学園長は王子たちとグルで、マリオンを虐げる側。
「それ、今年の春からでしょ? なんですぐ逃げてこないの」
「せめて故郷の家族に助けを求めるとか」
と姉妹に叱られるも、マリオンにだって言い分はある。
「研究学園、お金かけてるだけあって設備は良かったんだー。お陰で研究は捗ったよ」
「もう。技術屋はこれだから……。その情熱を陰謀の解明に使いなさいよね!」
「陰謀?」
とルミナスをもふりながら一緒に小首を傾げると、ガブリエラが食堂内のラックから新聞を持ってきた。
「あなたの知り合いだという王子は今、魔物の討伐任務に就いてるのよ。王族だから責任者ね。このマンドラゴラもどきを含めた植物の魔物が広がってる地域を片っ端から巡ってる」
新聞を受け取ると、確かにエドアルド第二王子の活躍が日報として掲載されている。
「ちょうど春頃から。マリオン君がこの国に来たのもその頃でしょ?」
「……エドが。でも、だって、そんなこと手紙にも全然書いてなかったのに……」
実はマリオンは筆まめで、この国に来てからも週一で王宮宛に手紙を書いているのだ。
だが、言われてみれば研究学園に入ってから返事は来ていない。相手は王子だし、何かと忙しいと聞いていたからそんなものだと軽く考えていた。
わざわざ他国からマリオンを呼び寄せるぐらいだから、時間ができたときにお茶を飲むぐらいできるだろうと思っていたら、春からあっという間に冬になってしまった。
時間が経つのは早いなー。
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