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冒険者ギルドで金策
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「……って格好良く逃げ出してきたのは良かったんだけどね……」
大空を飛んで、ほどほどのところまで逃げてから地面に降りた。
そしてマリオンは仔竜サイズに戻った綿毛竜を抱えて、こそこそっと王都の建物の間を移動していた。
「お財布も魔導具開発に必要な道具も素材も、みーんな置いてきちゃったし。さすがに取りに戻るのは無理だよねー」
「ピューイ!」(だよね。しばらく危ないから近寄らないほうがいいよ!)
仔竜の鳴き声と重なるようにして、言葉が頭の中に聞こえる。
これこそが、綿毛竜が知性ある高度に進化した竜種と言われる所以だ。
信頼関係が築けると意思の疎通が可能になるのである。
「ピュアッ」(僕の羽毛を何枚か売ればしばらくしのげるよ)
「いいの?」
「ピュイッピュ!」(困ったときはおたがいさま!)
適当にルミナスをもふってみると、首の辺りから数枚の羽毛が抜けたので、それを換金することにした。
幸い、複数持っている身分証は紐付きのカードケースに入れて首から下げてシャツの下にある。
「魔導具師はやめておこ。やっぱり冒険者ギルドかな」
素材の買い取りの基本だ。
冒険者ギルドは、この世界では各国どこでも冒険者たちがすぐ見つけられるよう、建物の外観は同じ赤レンガの三階建てになっている。
内部の設備もほぼ同じだ。
一階は受付と依頼掲示板。
武器防具や備品など冒険者活動に必要な物品の売店、事務室、討伐品の売却・換金所、食堂を兼ねた酒場がある。
二階は会議室とギルド職員の仕事場、休憩所を兼ねた宿直室、三階はギルドマスターら支部の責任者の執務室と倉庫だ。
素材の買い取りをお願いしたところ、羽1枚が小金貨1枚(約1万円)。
綿毛竜のふわふわの白い羽は魔力防御付与の防具や魔法薬の材料になる。
3枚抜かせてもらった羽根はそのまま小金貨3枚(約3万円)になった。
ここは王国の王都だから物価が高いが、贅沢しなければ一週間は保つ。
「お昼前に飛び出してきちゃったからお腹減ったね。ごはん食べよう、ルミナス」
「ピューイッ」(はーい!)
さっそく手に入れた金貨を使いやすく銀貨や銅貨に崩してもらい、冒険者ギルド内の食堂に入ったところで声をかけられた。
黒いフード付きの長いローブ姿で、顔を隠した女の人だ。声からすると、まだ若い。
というよりその甘やかな声には聞き覚えがあった。
「そこの可愛いお兄さん。ちょっと占いやってかない?」
「ハスミンさん!?」
「はーい、その通り! お久し振りね、マリオン君」
ばさっとローブのフードを取ると、そこにはマリオンの遠縁にあたるお姉さんが。
黄金のような色の濃い緩い癖のある金髪を編み込み入りのポニーテールにして、マリオンと同じ鮮やかな水色の瞳を持った、可憐なお人形さんみたいな美女だ。
占いが得意な魔女で、いつもは旅をしているか、この世界の北部の国を本拠地にして冒険者活動をしているはずだった。
大空を飛んで、ほどほどのところまで逃げてから地面に降りた。
そしてマリオンは仔竜サイズに戻った綿毛竜を抱えて、こそこそっと王都の建物の間を移動していた。
「お財布も魔導具開発に必要な道具も素材も、みーんな置いてきちゃったし。さすがに取りに戻るのは無理だよねー」
「ピューイ!」(だよね。しばらく危ないから近寄らないほうがいいよ!)
仔竜の鳴き声と重なるようにして、言葉が頭の中に聞こえる。
これこそが、綿毛竜が知性ある高度に進化した竜種と言われる所以だ。
信頼関係が築けると意思の疎通が可能になるのである。
「ピュアッ」(僕の羽毛を何枚か売ればしばらくしのげるよ)
「いいの?」
「ピュイッピュ!」(困ったときはおたがいさま!)
適当にルミナスをもふってみると、首の辺りから数枚の羽毛が抜けたので、それを換金することにした。
幸い、複数持っている身分証は紐付きのカードケースに入れて首から下げてシャツの下にある。
「魔導具師はやめておこ。やっぱり冒険者ギルドかな」
素材の買い取りの基本だ。
冒険者ギルドは、この世界では各国どこでも冒険者たちがすぐ見つけられるよう、建物の外観は同じ赤レンガの三階建てになっている。
内部の設備もほぼ同じだ。
一階は受付と依頼掲示板。
武器防具や備品など冒険者活動に必要な物品の売店、事務室、討伐品の売却・換金所、食堂を兼ねた酒場がある。
二階は会議室とギルド職員の仕事場、休憩所を兼ねた宿直室、三階はギルドマスターら支部の責任者の執務室と倉庫だ。
素材の買い取りをお願いしたところ、羽1枚が小金貨1枚(約1万円)。
綿毛竜のふわふわの白い羽は魔力防御付与の防具や魔法薬の材料になる。
3枚抜かせてもらった羽根はそのまま小金貨3枚(約3万円)になった。
ここは王国の王都だから物価が高いが、贅沢しなければ一週間は保つ。
「お昼前に飛び出してきちゃったからお腹減ったね。ごはん食べよう、ルミナス」
「ピューイッ」(はーい!)
さっそく手に入れた金貨を使いやすく銀貨や銅貨に崩してもらい、冒険者ギルド内の食堂に入ったところで声をかけられた。
黒いフード付きの長いローブ姿で、顔を隠した女の人だ。声からすると、まだ若い。
というよりその甘やかな声には聞き覚えがあった。
「そこの可愛いお兄さん。ちょっと占いやってかない?」
「ハスミンさん!?」
「はーい、その通り! お久し振りね、マリオン君」
ばさっとローブのフードを取ると、そこにはマリオンの遠縁にあたるお姉さんが。
黄金のような色の濃い緩い癖のある金髪を編み込み入りのポニーテールにして、マリオンと同じ鮮やかな水色の瞳を持った、可憐なお人形さんみたいな美女だ。
占いが得意な魔女で、いつもは旅をしているか、この世界の北部の国を本拠地にして冒険者活動をしているはずだった。
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