アラサー女子、人情頼りでブラック上司から逃げきります!

真義あさひ

文字の大きさ
上 下
59 / 61

カレン、失意の帰国

しおりを挟む
 そこから日本では大騒ぎになったそうだ。

 カレンから辞めた勤め先の元上司だと確認したセイジは速攻で地元の警察署に駆け込んだ。
 警察署では最初、セイジがカレンの恋人ではあってもまだ結婚もしてない他人であることを理由に動くことを渋られたらしい。

「参ったよ、うちの所長に『そういうときは堂々と婚約者だって言わなきゃ!』って怒られちまった」

 だが、その後の数日間で飴田がカレンの部屋のポストに手を突っ込んでいる場面が他の住人に目撃された。
 ついには裏手のベランダ側から室内に侵入しようとしたところを近所の人に撮影され、通報されたことで逃げていった。

「逮捕はされなかったのね……」

 そこまで不審者として目撃されてしまったなら、さすがにもう地方に戻っていっただろうと思ったら、甘かった。

 カレンは飴田をブロックしていたが、恋人のセイジは警戒のため彼のアカウントをチェックしていた。
 すると翌日、飴田のアカウントにロサンゼルス国際空港内を出てすぐのエントランスの写真が投稿されたからだ。
 ご丁寧にもまさに現地にいるのだと証明せんばかりに、日付と時刻の表示された電光掲示板を背景に自撮り撮影していた。

「カレン、安全な場所はあるか!? 俺がいいって言うまで避難してろ!」

 そこからはセイジも仕事どころではない。
 まず、カレンの元勤め先に事情を話して、飴田が転勤させられた支社に連絡を取ると、本人の無断欠勤が続いているという。

 元部下カレンの東京のアパートまで来て、更に留学先のアメリカまでストーキングしてるようだと伝えると、飴田の家族に即座に連絡を取ってくれた。
 彼らも飴田が危険人物であることは把握していたようで、行動が早かった。

 飴田の実兄がすぐロサンゼルスまで飛んだ。
 セイジも、再び警察署に向かって助けを請うた。
 この時点で、警察は飴田がカレンのアパートの郵便物を盗もうとしたことや、部屋に侵入しようとしたことを把握している。
 さすがに留学先までストーカー行為を働く飴田には腰の重かった警察側も慌てて、すぐ成田空港の所轄の警察署に連絡を入れて、飴田が帰国するなり身柄を押さえる手配をしてくれた。

「まあ、こいつがアホで助かったといえば助かったな。自分が今どこにいるか、頻繁にFacebook投稿してやがるんだから」

 カレンは現地で世話役のミスター禅の自宅に保護されたそうだ。
 彼は現地のコミュニティで顔がきくそうで、カレンの滞在していた地域の警察も飴田確保に動いてくれている。



 事態の発覚から飴田が彼の兄に発見され、強制的に帰国させられるまで三日半。
 この間、セイジは日本でほとんど仕事どころではなかったし、ロサンゼルスのカレンもミスター禅の自宅で震えているしかできず、ろくに睡眠も取れなかった。

「俺も今すぐロサンゼルスに飛んで行きたいとこだけど……」

 弁護士事務所勤めの税理士のセイジはちょうど手放せない案件を抱えていた。
 ここ数日のトラブルは所員たちの助けを借りて奔走できたが、さすがにロサンゼルスまで渡米してとなると数日では済まず、穴を開けられなかった。

 カレンの実家、石垣島の家族とも連絡を取って、誰か一人でも現地に向かってカレンをフォローしようと話し合っていたところ。

 いつもカレンが通っていた東銀座のレジンアクセサリーの会の講師義明が、宿泊先のアパートを貸した叔父と一緒に渡米してくれることになった。
 わざわざ成田空港に行く前にセイジの勤め先の弁護士事務所まで来てくれて、セイジは所長の弁護士先生と一緒に挨拶を受けた。

 この二人、以前カレンから聞いていた通りの見事な美形系のイケメンとイケオジだったが、異常事態の今はセイジに他人の外見に構っている心の余裕がなかった。
 応接室にお茶を運んでくれた事務員のおばちゃんは眼福そうにはしゃいでいたけれど。

「カレン君のことはどうしましょうか。オレたちと一緒に帰国させますか?」
「現地で……あいつの様子を見て、そのほうが良さそうだったらお願いします」

 義明の叔父が申し訳なさそうな顔になっている。

「本来ならカレン君に貸したアパートに、うちの社員を駐在か巡回かさせておくべきだった。申し訳ない」
「いえ。いくら何でもこんなトラブル、誰も予想できないですよ」

 まさか辞めた会社の元上司が、留学先の海外までストーキングする。常識では考えられないことだ。

 それから一週間の後、カレンはロサンゼルスでの語学学校の退校手続きや大学へのゲストパスの返還、世話になったミスター禅や友人たちとの別れを済ませて日本に帰国した。

 本来なら三ヶ月の予定だった短期留学を半月以上早めての帰国となってしまった。
 英会話も大学での勉強も何もかも中途半端なまま、失意の帰国だった。


しおりを挟む
ツギクルバナー

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

実はこれ実話なんですよ

tomoharu
恋愛
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!1年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎ智伝説&夢物語】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎ智久伝説&夢物語】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【智久】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜

あきゅう
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】  姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。  だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。  夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。

砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎ 〜Romance in Abū Dhabī〜 【Alphapolis Edition】

佐倉 蘭
恋愛
都内の大手不動産会社に勤める、三浦 真珠子(まみこ)27歳。 ある日、突然の辞令によって、アブダビの新都市建設に関わるタワービル建設のプロジェクトメンバーに抜擢される。 それに伴って、海外事業本部・アブダビ新都市建設事業室に異動となり、海外赴任することになるのだが…… ——って……アブダビって、どこ⁉︎ ※作中にアラビア語が出てきますが、作者はアラビア語に不案内ですので雰囲気だけお楽しみ下さい。また、文字が反転しているかもしれませんのでお含みおき下さい。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...