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帰国前日はシンガポール
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その後、カレンはツアーの主催会社の担当者や他の参加者たちと一緒にビジネス展示会を周り、国や地域によっては新聞社やテレビ、ケーブルテレビ、ネットテレビなどの取材に追われた。
アメリカでは4カ所、その後はマレーシアとフィリピン、タイ、シンガポールと回って同じようなビジネス展示会でのスピーチや取材を受けた。
さすがにたった三週間でこの日程はきつい。
最終日には自由時間にホテルから出る気力もないぐらい消耗していたが、シンガポールでの打ち上げパーティーは五つ星ホテルのマリーナベイサンズの高層階レストランでのブッフェだった。
「よ、お疲れさん、カレンちゃん。ここのメシ美味いよ、あっちの赤いシーフード炒めもそんな辛くないしオススメ!」
「後藤さん、シンガポールよく来る人でしたっけ」
後藤はカレンと同じくクラウドファンディング成功者の、ベンチャー企業の若手氏だ。
一昔前の起業家っぽいエネルギッシュな男性で、これまでどの国と地域のホテルでもジムがあればせっせと通って、贅肉のない身体を更に鍛えていた。
「そ、金のない頃から株の先生の鞄持ちでね。自分の会社を立ち上げるのに、銀行や公庫からの借入考えてたら、先生からここのクラファンのこと紹介されたんだ」
彼の場合はSNSで流れてきたプロモーションでクラウドファンディングを知って、その場の思いつきでプロジェクトを立ち上げたカレンとは違う。
主催会社に近い情報源の側にいたことが成功のきっかけだったそうだ。
クラウドファンディングのプロジェクト立ち上げ時期はカレンと同じ。
ただし、支援金額200万円ほどのカレンとは違い、東北での地方創生事業の支援を募った彼は最終的に億超えの支援金を集めたトップだった。
一気に成功への道を駆け上がった人物だ。
「カレンちゃんは日本に帰ったらどうすんの? 確かアクセサリー事業だったよね」
「自分ひとりの趣味の延長線上ですからね……。クラファンも私の場合は偶然一発当たっただけですし。とりあえず再就職しないと生活できないんで」
「もったいないなあ。ロサンゼルスで大学見学行くって聞いたときは、海外大学と提携して何かやるのかと思ったのに」
(そんなサクサク物事進んだら苦労しないわー)
と思ったが差し障りのない感じで、ひたすらカレンは相手の話の聴き役に徹していた。
この手のタイプはバイタリティがあるだけあって、話したがり屋なのだ。
そしてカレンはビジネスや利殖の詳しい知識はあまり持っていないから、聞いているだけで勉強になる。
「やっぱり英語がネックです。後藤さんは学生時代から英会話、勉強されてたんですか?」
「俺? まさか。中高は赤点スレスレ、大学はダチのレポート丸写し。卒業旅行で行ったハワイじゃどこ行っても『ハローイラッシャイマセー』だよ、カタコト英語を使う機会もなかったね」
確か彼のプロフィールだと、大学卒業後は国内の玩具メーカー勤務で、海外支店への赴任経験もあったはずだ。
「自己紹介もろくすっぽできない状態で海外支社に転勤したんだ。そのとき上司から『半年で使い物にならなかったらクビ』宣告されて必死で覚えたわけ」
「それ半年で本当に覚えました?」
「意思の疎通に不自由感じなくなるまでは3年ぐらいかかったけど、仕事するだけなら半年で問題なかったよ。業務に必要な単語と言い回しって決まってるし」
「な、なるほど!?」
そうか、苦手意識があったが、カレンも自分の活動に必要な英語を考えたら、案外必要な範囲は限定的かもしれない。
明日は朝食後、すぐロビーに集合して帰国となる。
後藤にパーティー後、別フロアのバーに誘われたが、さすがにアルコールまで入れては明日の朝起きられる自信がない。
申し訳ないがと断って、部屋まで戻った。
「さすがに海外で、男の人からの誘いを受けるわけにはいかないわよね」
最終日はホテルのショップで購入した鮮やかな水色に滝登りの鯉の刺繍が入ったチャイナドレスでドレスアップして参加していたカレンだ。
カレンは胸はあまりないが脚のラインが自分でもちょっとだけ自慢だ。後藤がスリットから伸びるカレンの脚をちらちら見てくるのがちょっとだけ不快だった。
「彼氏持ちだと他の男の人に神経質になるわね。いやはや……」
ドレスを脱いで、化粧を落とすまでが限界だった。
「疲れた……しばらく海外はお腹いっぱい……」
服は日本から持って行ったスーツやジャケット、現地調達したスカーフなどを使い回して何とか乗り切った。
だが三週間の旅程ともなるとブラウスのクリーニングもホテルに依頼して出立まで間に合うかどうかやきもきしたし、洗面所で下着を洗って干しても翌日までに乾かなかったりと苦労した。
もうシャワーは明日、朝食前に浴びよう。
スマホの目覚ましアラームだけ設定して、カレンはベッドに倒れ込んだのだった。
アメリカでは4カ所、その後はマレーシアとフィリピン、タイ、シンガポールと回って同じようなビジネス展示会でのスピーチや取材を受けた。
さすがにたった三週間でこの日程はきつい。
最終日には自由時間にホテルから出る気力もないぐらい消耗していたが、シンガポールでの打ち上げパーティーは五つ星ホテルのマリーナベイサンズの高層階レストランでのブッフェだった。
「よ、お疲れさん、カレンちゃん。ここのメシ美味いよ、あっちの赤いシーフード炒めもそんな辛くないしオススメ!」
「後藤さん、シンガポールよく来る人でしたっけ」
後藤はカレンと同じくクラウドファンディング成功者の、ベンチャー企業の若手氏だ。
一昔前の起業家っぽいエネルギッシュな男性で、これまでどの国と地域のホテルでもジムがあればせっせと通って、贅肉のない身体を更に鍛えていた。
「そ、金のない頃から株の先生の鞄持ちでね。自分の会社を立ち上げるのに、銀行や公庫からの借入考えてたら、先生からここのクラファンのこと紹介されたんだ」
彼の場合はSNSで流れてきたプロモーションでクラウドファンディングを知って、その場の思いつきでプロジェクトを立ち上げたカレンとは違う。
主催会社に近い情報源の側にいたことが成功のきっかけだったそうだ。
クラウドファンディングのプロジェクト立ち上げ時期はカレンと同じ。
ただし、支援金額200万円ほどのカレンとは違い、東北での地方創生事業の支援を募った彼は最終的に億超えの支援金を集めたトップだった。
一気に成功への道を駆け上がった人物だ。
「カレンちゃんは日本に帰ったらどうすんの? 確かアクセサリー事業だったよね」
「自分ひとりの趣味の延長線上ですからね……。クラファンも私の場合は偶然一発当たっただけですし。とりあえず再就職しないと生活できないんで」
「もったいないなあ。ロサンゼルスで大学見学行くって聞いたときは、海外大学と提携して何かやるのかと思ったのに」
(そんなサクサク物事進んだら苦労しないわー)
と思ったが差し障りのない感じで、ひたすらカレンは相手の話の聴き役に徹していた。
この手のタイプはバイタリティがあるだけあって、話したがり屋なのだ。
そしてカレンはビジネスや利殖の詳しい知識はあまり持っていないから、聞いているだけで勉強になる。
「やっぱり英語がネックです。後藤さんは学生時代から英会話、勉強されてたんですか?」
「俺? まさか。中高は赤点スレスレ、大学はダチのレポート丸写し。卒業旅行で行ったハワイじゃどこ行っても『ハローイラッシャイマセー』だよ、カタコト英語を使う機会もなかったね」
確か彼のプロフィールだと、大学卒業後は国内の玩具メーカー勤務で、海外支店への赴任経験もあったはずだ。
「自己紹介もろくすっぽできない状態で海外支社に転勤したんだ。そのとき上司から『半年で使い物にならなかったらクビ』宣告されて必死で覚えたわけ」
「それ半年で本当に覚えました?」
「意思の疎通に不自由感じなくなるまでは3年ぐらいかかったけど、仕事するだけなら半年で問題なかったよ。業務に必要な単語と言い回しって決まってるし」
「な、なるほど!?」
そうか、苦手意識があったが、カレンも自分の活動に必要な英語を考えたら、案外必要な範囲は限定的かもしれない。
明日は朝食後、すぐロビーに集合して帰国となる。
後藤にパーティー後、別フロアのバーに誘われたが、さすがにアルコールまで入れては明日の朝起きられる自信がない。
申し訳ないがと断って、部屋まで戻った。
「さすがに海外で、男の人からの誘いを受けるわけにはいかないわよね」
最終日はホテルのショップで購入した鮮やかな水色に滝登りの鯉の刺繍が入ったチャイナドレスでドレスアップして参加していたカレンだ。
カレンは胸はあまりないが脚のラインが自分でもちょっとだけ自慢だ。後藤がスリットから伸びるカレンの脚をちらちら見てくるのがちょっとだけ不快だった。
「彼氏持ちだと他の男の人に神経質になるわね。いやはや……」
ドレスを脱いで、化粧を落とすまでが限界だった。
「疲れた……しばらく海外はお腹いっぱい……」
服は日本から持って行ったスーツやジャケット、現地調達したスカーフなどを使い回して何とか乗り切った。
だが三週間の旅程ともなるとブラウスのクリーニングもホテルに依頼して出立まで間に合うかどうかやきもきしたし、洗面所で下着を洗って干しても翌日までに乾かなかったりと苦労した。
もうシャワーは明日、朝食前に浴びよう。
スマホの目覚ましアラームだけ設定して、カレンはベッドに倒れ込んだのだった。
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