アラサー女子、人情頼りでブラック上司から逃げきります！

講義の見学

　その後、ミスター禅の友人講師と挨拶して、さっそく午前中の一コマだけ講義に参加してみた。

　ミスター禅の通訳を通してだったが、これがなかなか面白い。

　見学だからレポート提出の義務はないし、見学や聴講生でも、希望するなら参加者たちに混ざっての質疑応答も可能で、ディスカッションにも参加できる。
　残念ながら、英語はヒアリングがせいぜいのカレンは生徒たちに混ざれなかった。

　それでも講義内容はレジュメがPDFファイルで配布されたから、英語に不慣れなカレンでもWebの翻訳サービスを利用しながら学習しやすかった。

「うーん……量子論……フリーエネルギー……」

　カレンが参加したのは量子工学の研究者の講義だ。
　ミスター禅の友人の講師は元々、別の大学でフリーエネルギー研究に従事していた学者だが、量子論に可能性を見出してカリフォルニア大学の量子工学の教授に弟子入りした人物だという。

「そもそも量子論がよくわからない……」

　今カレンたちが使っているスマホも量子論が応用されて開発されたものだと言われている。
　けれどカレンの学生時代は量子論の分野は日本ではほとんど専門家だけの分野だったし、そもそもカレンは文系だったので縁がなかった。

　ただその辺りは参考文献や大学のWeb上データベースが充実していて、講師から初心者が理解しやすいものをいくつかピックアップしてもらえた。

　ちなみに、カレンのようなど素人の一般人が見学に来たことについてはといえば。

「『興味を持ってもらえて嬉しい。これから間違いなく伸びる分野だから、学んで損はない』だそうです」

　講義の後、講師に誘われ大学内でランチをご馳走になり、ミスター禅の通訳を交えて頂戴したコメントだった。

「下調べも何もなしに参加してしまって、申し訳なかったです」
「『見学はいつでも歓迎だよ。事前準備するならこの辺を参考に……』」

　講師はその場でテーブルのナプキンにペンでさらさらっと追加資料を書いてくれた。
　Webの論文が主体だ。

　可能なら巻末の参考資料も辿ると良いと言われて、その日の大学見学を終え、午後にはミスター禅にホテルまで送ってもらって別れた。