上 下
18 / 61

皆さんに会社を辞めたご報告

しおりを挟む
 翌日、昼過ぎまで布団の中でボーっとしたり、涙ぐんだり、怒ったりしながら時間を過ごしたカレンは1時過ぎ頃にようやく起き出した。

「……ほんとムカつく。何であたしがこんな目に……」

 いきなり首にされた身としては、この怒りや恨みをどこへ持っていけばいいのか。

 総務部の女性課長は、不当解雇の件は弁護士に相談するように助言をくれた。
 他には、労基、労働基準監督署に告発もできるとも教えてもらっている。

「労基の調査、入ったほうがいいと思うわ。あの会社」

 少し落ち着いたら元職場の地域の労基に相談に行ってみようと思う。



 軽く冷凍ご飯で炒飯を作り、ストックしてあったインスタントスープで遅い昼食を取った後、まず田舎の家族に電話を入れた。

 パワハラとセクハラで、被害者の自分が責任を取らされて首にされたことを説明していたら、何だか情けなくて涙が滲んできた。

「うん、うん……こっちの同級生に弁護士事務所勤めの人がいて、相談するつもり。あたしも泣き寝入りとか嫌だからさ。どうなるかまた電話するね」

 家にいた母親と話をしたら、案の定ものすごい怒りようだった。
 わかる。カレンもこの理不尽な境遇をどうしたらいいかわからないぐらい怒っている。



 次は区民会館のレジンアクセサリーの会のグループへのメッセージだ。

 次回からは参加を再開するので、そこで話を聞いてくれると嬉しい、とメッセージを送った。
 すると講師の義明や会員たちから次々慰めと心配の返信が入った。
 彼らの気遣いが胸に沁みる。



 そして、元同級生のセイジだ。

 彼も午後のこの時間ならまだ仕事中のはず。
 電話ではなくメッセージアプリに、昨日のうちに即日解雇されたことを伝えると、1分もしないうちに電話がかかってきた。


『青山、大丈夫か?』

「……大丈夫じゃないい……」

 もうほとんど泣いてしまっているカレンだ。

『今日はちょっと残業があるんだけど、8時頃で良かったらひまらや行かないか? 話聞かせてよ。奢るからさ』

「奢りなら喜んで行くわ……」

 店主のオヤジさんの目利きが良くて、あの店は何を食べてもおいしい。
 自炊もするカレンは行くたびにレパートリーが増える良い店だった。



 通話を切った後、夜にひまらやへ出かける時間まで不貞寝することにした。

 ハローワークに行くのも何をするのも明日からだ。
 今日はもう何も考えたくはなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する

真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

処理中です...