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まさかの即日解雇
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警察での事情聴取後、会社へはタクシーで戻り、事情を知る社内カウンセラー、総務の女性課長を交えて更に話し合いをすることになった。
「飴田君。君、これでこの手のトラブルは何回目? さすがに警察沙汰にまでなっては、僕も会長を誤魔化せないよ」
専務はひとまず飴田課長に自宅に帰るよう指示を出した。
(ようやく片付いた……のよね?)
ところが残ったカレンが専務に叱責されることになった。
「君、クビね。こんな問題を起こすなんて、ほんと堪ったもんじゃないよ」
「なっ!? 何でですか! 原因は飴田課長ですよ!?」
さすがに納得がいかずカレンは専務に食ってかかった。
「あのね、君は知ってるか知らないけど、彼は会長の……我が社の創業者一族なんだよ。何があっても彼の解雇はできないんだ」
「そんな……」
専務に、しっしっと野良犬のように追いやられ、仕方なくカレンは総務の女性課長と一緒に総務部へ向かうことになる。
解雇ならこの会社での事務手続きは総務部で行うからだ。
カレン、女性の総務課長、男性の総務部長とで別の会議室で話し合いをすることになった。
既に警察沙汰になったことを把握していた総務部長はもう呆れ果てていた。
「年に何回かあるんだ、飴田絡みでこの手のトラブルが。しかし、専務がクビと言ったなら撤回させるのは難しいと思う」
「幸い、クビと言っただけで、青山さんも咄嗟に反論したのが良かったですね。これなら退職は自己都合でなく会社都合で処理できます」
「総務課長さん……」
てっきり機械的に事務手続きをそのままされるかと思いきや、総務部の二人からはどちらかといえば手厚い対応を受けることになった。
ちょっと意外だ。
「失業手当も最短で貰えるように、パンフレットまとめておきますからね」
「総務部から紹介状も出しておこう。再就職まで可能な限り相談も乗るから」
「……はい」
解雇はもう確定のようだった。
総務課長と部長は親身に対応してくれたが、独身一人暮らしのカレンには今後を考えると気が重い。
一通り退職と退職後の手続きの説明を受け、必要書類も受け取って、カレンは庶務課へ挨拶だけしておくことにした。
「えっ。青山さんが辞めるの!?」
「あはは……そういうことにされちゃいました」
「そんな……」
庶務課の同僚たちは皆、絶句していた。
(ははは……皆、もう経緯知ってるもんね……)
パトカーが来て、カレンも飴田課長も連れて行かれたことは、とっくに知れ渡っているようだ。
「め、メッセージ送るから! アドレス消さないでおいてよ、青山さん!」
「はい、こちらこそ。あたしが辞めた後のこと、どうなったか教えてもらえると嬉しいです」
「もちろんよ!」
親しかった同僚がそう必死になってくれたことが、ちょっとだけ救いだった。
その後は簡単にデスク周りの私物を回収して片付けて終わりだ。
庶務課の面々に頭を下げて、そのままカレンは退社した。
「飴田君。君、これでこの手のトラブルは何回目? さすがに警察沙汰にまでなっては、僕も会長を誤魔化せないよ」
専務はひとまず飴田課長に自宅に帰るよう指示を出した。
(ようやく片付いた……のよね?)
ところが残ったカレンが専務に叱責されることになった。
「君、クビね。こんな問題を起こすなんて、ほんと堪ったもんじゃないよ」
「なっ!? 何でですか! 原因は飴田課長ですよ!?」
さすがに納得がいかずカレンは専務に食ってかかった。
「あのね、君は知ってるか知らないけど、彼は会長の……我が社の創業者一族なんだよ。何があっても彼の解雇はできないんだ」
「そんな……」
専務に、しっしっと野良犬のように追いやられ、仕方なくカレンは総務の女性課長と一緒に総務部へ向かうことになる。
解雇ならこの会社での事務手続きは総務部で行うからだ。
カレン、女性の総務課長、男性の総務部長とで別の会議室で話し合いをすることになった。
既に警察沙汰になったことを把握していた総務部長はもう呆れ果てていた。
「年に何回かあるんだ、飴田絡みでこの手のトラブルが。しかし、専務がクビと言ったなら撤回させるのは難しいと思う」
「幸い、クビと言っただけで、青山さんも咄嗟に反論したのが良かったですね。これなら退職は自己都合でなく会社都合で処理できます」
「総務課長さん……」
てっきり機械的に事務手続きをそのままされるかと思いきや、総務部の二人からはどちらかといえば手厚い対応を受けることになった。
ちょっと意外だ。
「失業手当も最短で貰えるように、パンフレットまとめておきますからね」
「総務部から紹介状も出しておこう。再就職まで可能な限り相談も乗るから」
「……はい」
解雇はもう確定のようだった。
総務課長と部長は親身に対応してくれたが、独身一人暮らしのカレンには今後を考えると気が重い。
一通り退職と退職後の手続きの説明を受け、必要書類も受け取って、カレンは庶務課へ挨拶だけしておくことにした。
「えっ。青山さんが辞めるの!?」
「あはは……そういうことにされちゃいました」
「そんな……」
庶務課の同僚たちは皆、絶句していた。
(ははは……皆、もう経緯知ってるもんね……)
パトカーが来て、カレンも飴田課長も連れて行かれたことは、とっくに知れ渡っているようだ。
「め、メッセージ送るから! アドレス消さないでおいてよ、青山さん!」
「はい、こちらこそ。あたしが辞めた後のこと、どうなったか教えてもらえると嬉しいです」
「もちろんよ!」
親しかった同僚がそう必死になってくれたことが、ちょっとだけ救いだった。
その後は簡単にデスク周りの私物を回収して片付けて終わりだ。
庶務課の面々に頭を下げて、そのままカレンは退社した。
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