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番外編 異世界板前ゲンジ、ルシウス君と再会す
ゲンジ、アルバイトが決まる
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ルシウスの兄伯爵からは泊まっていくよう言われたが、ヴァシレウス大王を見送った後はルシウスと一緒に子爵邸まで帰ってきたゲンジだった。
「いやはや、緊張したよ……」
「またまたあ。オヤジさん、結構堂々としてたじゃない」
「そりゃ場慣れはしてるからね」
王族の皆さんからは、グレイシア王女の妊娠中に送られてきたお魚さんや、お魚さんを使った料理の礼を一番言われた。
ルシウスがまだ冒険者ギルドのココ村支部にいたときのことだ。
あの頃、ルシウスの兄嫁とグレイシア王女はほぼ同時期に妊娠していて、ココ村支部から送ったゲンジの料理はつわりの辛い時期でも美味しく食べられてとても助かったらしい。
それに、その数年前に大病を患って年相応に弱っていたヴァシレウス大王も、同じ料理を食べて元気に回復し、若い後添えを迎えて、息子まで得た。
これもまた、ものすごい感謝されたわけだ。
「でもそういう元気づけの効果は、坊主の聖剣で処理されたお魚さんを使ったからじゃなかったのかねえ」
「オヤジさんたら謙虚すぎ。自分が調理スキル特級ランクで、飯ウマ属性持ちだって忘れてるでしょ」
「あ、そうか」
「今は薬師スキルもあるんでしょ? 今日の食事を食べた皆も明日から元気になりそうだよね」
「特に薬師スキルは使わないで調理したけど、初級ポーションぐらいの効果はあるかねえ」
ココ村支部にいたとき、聖女のロータスから「エリクサー」なる霊薬を調合する課題を出されたゲンジだ。
あれから数年。頑張って上級ポーションまでなら調合できるようになったが、さすがにランク番外のエリクサーは何をどうしたら作れるのかわからない。
(多分、材料が既存の薬品や薬草じゃないんだろうな)
ゲンジは冒険者として戦うスキルがないから、市販されている材料を使うしかないのが歯痒いところだ。
「それで異世界の情報を記録って、レポートにでもまとめればいいのかねえ?」
夜も遅いのでノンカフェインのハーブティーを飲みながら、寝る前に少しだけルシウスと台所のテーブルで話し合った。
王家に提出する書式など、ゲンジにはまったく知識がないのだが。
「ヴァシレウス様のお子様の転生者は、僕が相談乗ってるんだ。ある程度まとめてくれたら、僕が確認しながら体裁を整えて提出するよ」
「そりゃ助かる」
とはいえ、すぐ集落に向かうつもりで、現地や周辺の町や村で次の職を探すつもりだった。
宿はルシウスの子爵邸で厄介になるにしても、王都に留まる間の生活費ぐらいは稼ぎたかった。
「オヤジさんなら臨時雇いでも引く手数多だろうけど。王族の皆さんに頼まれた料理ストックや異世界レポまとめには後から報酬出るよ?」
「それもそうか」
なら、空いた時間で王都の食べ歩きでもやるかなと思っていると、思いついたとばかりにルシウスが手を打った。
「リースト伯爵家、王都に領地の名物サーモンパイ専門店があるんだ。王家の依頼を優先させてほしいから、客数の少ない夕方からディナー時間のアルバイトどう?」
「乗った!」
ゲンジはまだまだ出立できそうにない。
「いやはや、緊張したよ……」
「またまたあ。オヤジさん、結構堂々としてたじゃない」
「そりゃ場慣れはしてるからね」
王族の皆さんからは、グレイシア王女の妊娠中に送られてきたお魚さんや、お魚さんを使った料理の礼を一番言われた。
ルシウスがまだ冒険者ギルドのココ村支部にいたときのことだ。
あの頃、ルシウスの兄嫁とグレイシア王女はほぼ同時期に妊娠していて、ココ村支部から送ったゲンジの料理はつわりの辛い時期でも美味しく食べられてとても助かったらしい。
それに、その数年前に大病を患って年相応に弱っていたヴァシレウス大王も、同じ料理を食べて元気に回復し、若い後添えを迎えて、息子まで得た。
これもまた、ものすごい感謝されたわけだ。
「でもそういう元気づけの効果は、坊主の聖剣で処理されたお魚さんを使ったからじゃなかったのかねえ」
「オヤジさんたら謙虚すぎ。自分が調理スキル特級ランクで、飯ウマ属性持ちだって忘れてるでしょ」
「あ、そうか」
「今は薬師スキルもあるんでしょ? 今日の食事を食べた皆も明日から元気になりそうだよね」
「特に薬師スキルは使わないで調理したけど、初級ポーションぐらいの効果はあるかねえ」
ココ村支部にいたとき、聖女のロータスから「エリクサー」なる霊薬を調合する課題を出されたゲンジだ。
あれから数年。頑張って上級ポーションまでなら調合できるようになったが、さすがにランク番外のエリクサーは何をどうしたら作れるのかわからない。
(多分、材料が既存の薬品や薬草じゃないんだろうな)
ゲンジは冒険者として戦うスキルがないから、市販されている材料を使うしかないのが歯痒いところだ。
「それで異世界の情報を記録って、レポートにでもまとめればいいのかねえ?」
夜も遅いのでノンカフェインのハーブティーを飲みながら、寝る前に少しだけルシウスと台所のテーブルで話し合った。
王家に提出する書式など、ゲンジにはまったく知識がないのだが。
「ヴァシレウス様のお子様の転生者は、僕が相談乗ってるんだ。ある程度まとめてくれたら、僕が確認しながら体裁を整えて提出するよ」
「そりゃ助かる」
とはいえ、すぐ集落に向かうつもりで、現地や周辺の町や村で次の職を探すつもりだった。
宿はルシウスの子爵邸で厄介になるにしても、王都に留まる間の生活費ぐらいは稼ぎたかった。
「オヤジさんなら臨時雇いでも引く手数多だろうけど。王族の皆さんに頼まれた料理ストックや異世界レポまとめには後から報酬出るよ?」
「それもそうか」
なら、空いた時間で王都の食べ歩きでもやるかなと思っていると、思いついたとばかりにルシウスが手を打った。
「リースト伯爵家、王都に領地の名物サーモンパイ専門店があるんだ。王家の依頼を優先させてほしいから、客数の少ない夕方からディナー時間のアルバイトどう?」
「乗った!」
ゲンジはまだまだ出立できそうにない。
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