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番外編 異世界板前ゲンジ、ルシウス君と再会す
ついに王族の皆さんと会食
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事前に聞いていた通り、アケロニア王族の皆さんは特に身分をかさに着た傲慢さもなく、むしろ初対面のゲンジを気遣ってもらって大変恐縮することになった。
「ああ、そうそう、この味この味」
「うむ。舌が忘れてなかったですね、父上」
テオドロス国王とグレイシア王女は大喜びで懐石料理の数々を食してくれたし、手配していたライスワイン数種との組み合わせも気に入ってくれたようでゲンジは胸を撫で下ろしていた。
「しみじみ美味いな。この歳になると古今東西の美味には飽いておるのだが、まだ感動できるものに出会えるとは」
この国どころか、広大な円環大陸の王族でいま一番の大物、ヴァシレウス大王。
この世界、大柄な人間が多かったが、中でも2メートル近い巨躯の彼は群を抜いている。
今回、3人のアケロニア王族は皆、黒髪黒目で、とても端正な顔立ちが共通していた。
一見すると日本人と言われても通る容貌だ。
テオドロス国王は成人男子の平均より僅かに上ぐらいの体格だ。直毛の髪は短く整えられていて、髭のない穏やかな表情は一見すると学者にも見える。
その娘、グレイシア王女は成人女子より明らかに背が高い。会食には王家の貴色の黒いイブニングドレス姿で、真珠のネックレスが彩る豊満な胸元や括れた腰、肩にかかる豊かで艶やかな黒髪にはゲンジもドキッとした。
美しいが、見るからに気の強そうな女性である。
次期女王として間もなく王太女になる彼女には伴侶がいるが、少々出身の身分が低いそうで本人の意思で王族には入らなかったそうだ。
よって今宵の会食にも来ていない。
ヴァシレウス大王は緩い癖のある髪質で、耳よりちょっとだけ髪を伸ばしている。
髪と顎髭には白髪が混じっているが、本数は少ない。もう80歳を超えていると聞いているのに、下手すると60代でも通るぐらい若々しい男だった。
というより、老齢でありながら男のゲンジでもうっとりするような色気がある。これは女性が放っておかないだろうなと。
彼にも後添えの伴侶がいるのだが、まだ幼い子どもがいるため今回は欠席となったそうだ。
(噂にゃ聞いてたが皆いい男だし、いい女だ)
ココ村支部にいたとき読んでいた新聞にも、アケロニア王族の話題はよく載っていて、業績だけでなく黒の王族として整った容貌はよく讃えられていた。
写真機に相当する魔導具はあるが高価なので新聞に要人の写真が掲載されることはまずない。
誇張だろうと思っていたが、実物のほうがずっと見目の良い人々だった。
ある程度、全員に酒が入ったところで、ゲンジが聞きたかった話題をあちらから振ってくれた。
そう、以前ルシウスからの手紙に書いてあった、異世界からの来訪者たちの集落のことだ。
「異世界からの来訪者は有用な知識やスキルを持っていることが多いので、我が国では保護する方針を取っておる」
吸い物を一口、出汁の繊細な風味にヴァシレウス大王が相好を崩した。
「だがこのスープは初めての体験だ。椀の底が見えるほど透き通っていて、単純な味なのに奥深い」
「乾燥させた海藻から引いた出汁なんです。和食の真髄がわかるものの一つですね」
それからヴァシレウス大王と酒を飲み飲み、例の集落について教えてもらった。
異世界、特に地球という星の日本なる国から転生や転移してきた者たちが集まっている小さな山裾の村だそうだ。
様々な時代からやってきているが、大きな戦争後の時代からの者が多い。
独自の、特に食文化を持っていて試行錯誤しながらアケロニア王国でも再現している。他国にも似たようなコミュニティがあるので、情報交換しながら酒や味噌、醤油などの彼らのソウルフードに必要な食材を開発してきたという。
「ああ、そうそう、この味この味」
「うむ。舌が忘れてなかったですね、父上」
テオドロス国王とグレイシア王女は大喜びで懐石料理の数々を食してくれたし、手配していたライスワイン数種との組み合わせも気に入ってくれたようでゲンジは胸を撫で下ろしていた。
「しみじみ美味いな。この歳になると古今東西の美味には飽いておるのだが、まだ感動できるものに出会えるとは」
この国どころか、広大な円環大陸の王族でいま一番の大物、ヴァシレウス大王。
この世界、大柄な人間が多かったが、中でも2メートル近い巨躯の彼は群を抜いている。
今回、3人のアケロニア王族は皆、黒髪黒目で、とても端正な顔立ちが共通していた。
一見すると日本人と言われても通る容貌だ。
テオドロス国王は成人男子の平均より僅かに上ぐらいの体格だ。直毛の髪は短く整えられていて、髭のない穏やかな表情は一見すると学者にも見える。
その娘、グレイシア王女は成人女子より明らかに背が高い。会食には王家の貴色の黒いイブニングドレス姿で、真珠のネックレスが彩る豊満な胸元や括れた腰、肩にかかる豊かで艶やかな黒髪にはゲンジもドキッとした。
美しいが、見るからに気の強そうな女性である。
次期女王として間もなく王太女になる彼女には伴侶がいるが、少々出身の身分が低いそうで本人の意思で王族には入らなかったそうだ。
よって今宵の会食にも来ていない。
ヴァシレウス大王は緩い癖のある髪質で、耳よりちょっとだけ髪を伸ばしている。
髪と顎髭には白髪が混じっているが、本数は少ない。もう80歳を超えていると聞いているのに、下手すると60代でも通るぐらい若々しい男だった。
というより、老齢でありながら男のゲンジでもうっとりするような色気がある。これは女性が放っておかないだろうなと。
彼にも後添えの伴侶がいるのだが、まだ幼い子どもがいるため今回は欠席となったそうだ。
(噂にゃ聞いてたが皆いい男だし、いい女だ)
ココ村支部にいたとき読んでいた新聞にも、アケロニア王族の話題はよく載っていて、業績だけでなく黒の王族として整った容貌はよく讃えられていた。
写真機に相当する魔導具はあるが高価なので新聞に要人の写真が掲載されることはまずない。
誇張だろうと思っていたが、実物のほうがずっと見目の良い人々だった。
ある程度、全員に酒が入ったところで、ゲンジが聞きたかった話題をあちらから振ってくれた。
そう、以前ルシウスからの手紙に書いてあった、異世界からの来訪者たちの集落のことだ。
「異世界からの来訪者は有用な知識やスキルを持っていることが多いので、我が国では保護する方針を取っておる」
吸い物を一口、出汁の繊細な風味にヴァシレウス大王が相好を崩した。
「だがこのスープは初めての体験だ。椀の底が見えるほど透き通っていて、単純な味なのに奥深い」
「乾燥させた海藻から引いた出汁なんです。和食の真髄がわかるものの一つですね」
それからヴァシレウス大王と酒を飲み飲み、例の集落について教えてもらった。
異世界、特に地球という星の日本なる国から転生や転移してきた者たちが集まっている小さな山裾の村だそうだ。
様々な時代からやってきているが、大きな戦争後の時代からの者が多い。
独自の、特に食文化を持っていて試行錯誤しながらアケロニア王国でも再現している。他国にも似たようなコミュニティがあるので、情報交換しながら酒や味噌、醤油などの彼らのソウルフードに必要な食材を開発してきたという。
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