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ルシウス君、覚醒編
お昼ごはん作ります
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頭を落としたデビルズサーモンはそのまま厨房へ運び込む前に、まずは下処理をするためルシウスはギルドの建物隣の解体場へと入っていった。
「デビルズサーモン、皮おいしくないんだよね。骨も硬いから全部取らないと」
素早く魔法樹脂で使い慣れた鮭切り包丁を創り、作業台の上のデビルズサーモンをさーっとお腹から切り開き、内臓や魚卵は廃棄。身は手早く三枚おろしにしていく。
そこから皮側を更に半分におろして五枚おろしだ。
食用に向かない皮はべりっと全部剥がしてしまう。
ふつうのお魚さんなら小骨でも、巨体のデビルズサーモンの場合はひとつひとつが結構大きい。それも全部ペンチで引っこ抜いた。
「“物品鑑定”! ……うん、変な寄生虫や病気はいないね。加熱するなら問題なし!」
五枚おろしたうち、食べやすそうな一枚を魔法樹脂のトレイに載せ、残りは氷魔法を付与した魔法樹脂の中に封入しておいた。
こうして冷凍しておけば、解凍した後は生食も可能になる。
「デビルズサーモンで何作るんです?」
「ベイクドサーモン!」
カウンター席に座って、受付嬢のクレアがワクワクした顔で厨房を覗いてくる。
その隣には女魔法使いのハスミンが。
調理スキルもないし、一般的な料理もそれほど得意ではないふたりだったが、手伝えないなりに見守り隊となった。
出来上がった後、料理の配膳だけでも手伝うつもりでいる。
カウンター席からは厨房の作業台やコンロなど調理するところを見ることができる。
作業台は大人向けの高さなので、まだ小柄な子供のルシウスにはかなり高い。
本人、自前の魔法樹脂でブーツの底上げをして対応したようだ。厨房で動くたびにカツカツと樹脂が床に当たる音が鳴っている。
作業台のまな板でデビルズサーモンのサーモンピンクの巨大な身を一人前ずつカットして、バットに並べている。
カットは分厚めだ。何せデビルズサーモンは巨大なお魚さんで、可食部はたんまりある。食い放題!
全体に軽く塩を振って余計な水分を抜いている間にお野菜の下ごしらえだ。
魔力を使ってじゃがいもの皮をするする大量に剥いていく。
「え? え? それどうやって剥いてるんです!?」
「魔力を皮の数ミリ下に流すんだよ。じゃがいもの形に合わせて。これは僕の兄さんの得意技」
ごつごつした形のじゃがいもを手に取り、数秒ルシウスがその湖面の水色の瞳で見つめると、するっと服を脱ぐように皮だけが取れる。
ブロッコリーは小房に。インゲンはこの地域のものは特に筋などもないのでカットせずそのまま茹でる。
「付け合わせに茹でたじゃがいも、インゲン、ブロッコリーってどうですかー?」
「「いいと思いまーす!」」
大きめの鍋に沸かした湯で野菜類を時間差で茹でていく。
そろそろご飯も炊けるので混ぜ込み用のワカメもカットしておかねば。
さささっと水洗いした塩蔵ワカメを細かくみじん切りしてボウルへ。
程よく水分が浮き出てきたデビルズサーモンはペーパーで表面を拭き取ってから、ブラックペッパーをミルでガリゴリ削って振りかける。
熱したフライパンに多めのバターを溶かして、そーっと身を入れていく。
あとは中火で、溶けたバターを大きめのスプーンでサーモンに回しかけながら焼いていく。
途中でみじん切りにしたニンニクをフライパンに投入。
ぶわーっと広がるバターとニンニクの匂いに、クレアとハスミン、それに食堂で待機している冒険者たちからも歓声が上がった。
「ニンニク入れちゃったけど臭いとか大丈夫?」
「大丈夫です! 口内清浄剤ばっちり持参してますから!」
「そっかあ」
口内清浄剤とは、小型の携帯缶に入ったミント味のタブレットのことだ。
魔法薬の一種で、食後に一粒口に含めば、本人の魔力と反応して口の中全体を清浄に保ってくれる。うがいや歯磨きの代わりになる。
何日もダンジョン探索にこもる冒険者活動ではうがいや歯磨きに水を使えないことも多いので、こちらを使う者が多い。
フライパンの中で身を引っくり返してまたバターを回しかけながら焼いていく。
「あー! お鍋持てない! ヘルプ! 男の人ヘルプー!」
野菜を茹でていた鍋はルシウスの胴体より大きかった。身体強化で重いフライパンは使えても、自分の身体に余る大きさの鍋を持つのは難しい。
慌てて冒険者の男たちに助けてもらったりしながら、何とかお昼ごはんは完成したのだった。
「デビルズサーモン、皮おいしくないんだよね。骨も硬いから全部取らないと」
素早く魔法樹脂で使い慣れた鮭切り包丁を創り、作業台の上のデビルズサーモンをさーっとお腹から切り開き、内臓や魚卵は廃棄。身は手早く三枚おろしにしていく。
そこから皮側を更に半分におろして五枚おろしだ。
食用に向かない皮はべりっと全部剥がしてしまう。
ふつうのお魚さんなら小骨でも、巨体のデビルズサーモンの場合はひとつひとつが結構大きい。それも全部ペンチで引っこ抜いた。
「“物品鑑定”! ……うん、変な寄生虫や病気はいないね。加熱するなら問題なし!」
五枚おろしたうち、食べやすそうな一枚を魔法樹脂のトレイに載せ、残りは氷魔法を付与した魔法樹脂の中に封入しておいた。
こうして冷凍しておけば、解凍した後は生食も可能になる。
「デビルズサーモンで何作るんです?」
「ベイクドサーモン!」
カウンター席に座って、受付嬢のクレアがワクワクした顔で厨房を覗いてくる。
その隣には女魔法使いのハスミンが。
調理スキルもないし、一般的な料理もそれほど得意ではないふたりだったが、手伝えないなりに見守り隊となった。
出来上がった後、料理の配膳だけでも手伝うつもりでいる。
カウンター席からは厨房の作業台やコンロなど調理するところを見ることができる。
作業台は大人向けの高さなので、まだ小柄な子供のルシウスにはかなり高い。
本人、自前の魔法樹脂でブーツの底上げをして対応したようだ。厨房で動くたびにカツカツと樹脂が床に当たる音が鳴っている。
作業台のまな板でデビルズサーモンのサーモンピンクの巨大な身を一人前ずつカットして、バットに並べている。
カットは分厚めだ。何せデビルズサーモンは巨大なお魚さんで、可食部はたんまりある。食い放題!
全体に軽く塩を振って余計な水分を抜いている間にお野菜の下ごしらえだ。
魔力を使ってじゃがいもの皮をするする大量に剥いていく。
「え? え? それどうやって剥いてるんです!?」
「魔力を皮の数ミリ下に流すんだよ。じゃがいもの形に合わせて。これは僕の兄さんの得意技」
ごつごつした形のじゃがいもを手に取り、数秒ルシウスがその湖面の水色の瞳で見つめると、するっと服を脱ぐように皮だけが取れる。
ブロッコリーは小房に。インゲンはこの地域のものは特に筋などもないのでカットせずそのまま茹でる。
「付け合わせに茹でたじゃがいも、インゲン、ブロッコリーってどうですかー?」
「「いいと思いまーす!」」
大きめの鍋に沸かした湯で野菜類を時間差で茹でていく。
そろそろご飯も炊けるので混ぜ込み用のワカメもカットしておかねば。
さささっと水洗いした塩蔵ワカメを細かくみじん切りしてボウルへ。
程よく水分が浮き出てきたデビルズサーモンはペーパーで表面を拭き取ってから、ブラックペッパーをミルでガリゴリ削って振りかける。
熱したフライパンに多めのバターを溶かして、そーっと身を入れていく。
あとは中火で、溶けたバターを大きめのスプーンでサーモンに回しかけながら焼いていく。
途中でみじん切りにしたニンニクをフライパンに投入。
ぶわーっと広がるバターとニンニクの匂いに、クレアとハスミン、それに食堂で待機している冒険者たちからも歓声が上がった。
「ニンニク入れちゃったけど臭いとか大丈夫?」
「大丈夫です! 口内清浄剤ばっちり持参してますから!」
「そっかあ」
口内清浄剤とは、小型の携帯缶に入ったミント味のタブレットのことだ。
魔法薬の一種で、食後に一粒口に含めば、本人の魔力と反応して口の中全体を清浄に保ってくれる。うがいや歯磨きの代わりになる。
何日もダンジョン探索にこもる冒険者活動ではうがいや歯磨きに水を使えないことも多いので、こちらを使う者が多い。
フライパンの中で身を引っくり返してまたバターを回しかけながら焼いていく。
「あー! お鍋持てない! ヘルプ! 男の人ヘルプー!」
野菜を茹でていた鍋はルシウスの胴体より大きかった。身体強化で重いフライパンは使えても、自分の身体に余る大きさの鍋を持つのは難しい。
慌てて冒険者の男たちに助けてもらったりしながら、何とかお昼ごはんは完成したのだった。
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