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ルシウス君、覚醒編
お金がなくても楽しかった日々
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「一応、父様からは生活費もお小遣いも貰ってたんだけど。僕たちも節約しようねって兄さんと話し合って、自分たちのお昼は自炊することにしたの」
「まだ兄弟ふたりとも学生でしょ? 学校の食堂でも良かったんじゃあ?」
「毎日食堂でランチ食べる二人分のお金が、自炊だと三分の一以下で済んだんだよー」
なるほど、それなら確かに自炊のほうが節約になる。
最初は寮の簡易キッチンでサンドイッチなど簡単なものから作り始めたとのこと。
「兄さんは進学を控えて、新学期からの授業の準備があったから。僕はまだ小等部で毎日遊んでたし、代わりに頑張りました!」
「ええ話やな……」
「勉学に励む貧乏苦学生の兄と、そんな兄を支える可愛い弟。なるほどねえ~」
だが、お兄ちゃんが高等部に進学する頃の年齢というなら、今のルシウスより年上のはずだ。
経済的に困窮しているなら、それこそ冒険者登録して稼ぎに出ればいいと思うのだが。
「ルシウス君は次男、お兄さんは長男の跡継ぎでしょう。さすがにお父様が許可を出さなかったんじゃないでしょうか」
自分も貴族出身のサブギルマスのシルヴィスが苦笑している。
実際、ここココ村支部へもそのお兄ちゃんではなく、ルシウスが派遣されてやってきているわけだし。
なお、ルシウスの話はまだまだ続いている。
「毎日ランチ作るのは大変でしょって言って、奢ってくれようとする人もいたんだけどね。僕も兄さんも、その見返りにデートしてとか婚約してとか言われるから、自炊は防御策でもあったわけ」
「お前も兄貴も、可愛い女の子から手作りの菓子を山盛り貰えそうだもんな~」
「そうだよ、下心ある人には注意しなきゃなんだよ。宰相の嫌がらせのせいで、他の貴族家からの支援の申し出にも注意しなくちゃならなくなったし」
当時を思い出して、ルシウスの眉間に皺が寄っている。
「で、お菓子は貰えたの?」
「……昔から家ぐるみで付き合いがある人以外からは貰ってない。僕、鑑定スキル持ちだから。お菓子に鑑定かけると……」
「ああ……」
とルシウスと同じ貴族出身のシルヴィスが、苦い顔になった。
「物品鑑定スキル持ちなら、中身がわかっちゃいますよね」
「そう。材料の他に見えちゃうんだよね……髪の毛を燃やした灰とかよくわからないものが入ってるの」
「きついな……」
「きついよ……それで兄さんが一時期、女性不信になっちゃって。以降、差し入れ全部つっ返すようになったらクールなところがイイとか何とかって、余計モテたみたいだけど」
ルシウスが一緒にくっついていれば、弟が嫌がるのでと言って、プレゼントやデートなどの誘いを断りやすくなる。
あまり気分は良くなかったけれど、大好きなお兄ちゃんの役に立てることは嬉しかった。
「不自由はあったけど、楽しかったなあ。寮の狭い部屋で兄さんと二人っきり。夜寝るときも一緒だったし、兄さんが机で勉強してるときはベッドに寝っ転がって、兄さんの真剣な顔をずーっと見てられたんだよ」
本来の屋敷でなら、兄弟それぞれ別の部屋があったから、そのように長い時間ずっと一緒にいられることはなかったという。
「兄さんの先輩たちも、それぞれの領地の食材を差し入れに遊びに来てくれて、賑やかだったっけ。グレイシア王女様が寮まで来たときは騎士団全体が大騒ぎだったけど」
ルシウスのお兄ちゃんカイルは、アケロニア王国のグレイシア王女様とは学年が二つ下になる。
王女様は後輩カイルがお気に入りで、よく彼を振り回していたそうだ。
「あの頃、グレイシア様が兄さんのお嫁さんになったらどうしようって、夢でうなされるほど悩んだっけ。無事に同い年の婚約者が決まったって聞いたときには安心したよね……」
王女様の婚約にも一悶着あったようだが、まだ子供だからとルシウスは詳しくは教えられていなかった。
「ねえ。ルシウス君が料理できるなら、あのおいしくない臨時料理人の代わりに作ってもらうってできないのかしら?」
せめて一食分だけでも。
女魔法使いのハスミンが提案すると、料理人のオヤジさんも頷いた。
「坊主、料理できるってことは調理スキル持ってるんだろ? ならプラス持ちの俺の補助でなら……」
「ううん。調理スキルないよ。スキルが生えるほどまだ経験積んでないし、ステータスに表示されることもないと思う」
「へ?」
どういうこと?
「ルシウス君はステータス表示に謎のバグがあるんですよねえ。名前や出自、魔法剣士と魔法樹脂の使い手とは表示されるけど、その他のスキルや各数値がバグってて読めないって何でかしら?」
ここココ村支部に来た初日に、鑑定用の魔導具を使ってルシウスを鑑定した受付嬢のクレアも首を傾げている。
「そりゃ、僕は人類の古代種だもの。普通の人用のステータス鑑定テンプレートじゃ読み取れないよ」
「「「人類の古代種!???」」」
ここに来て、特大級の爆弾きた!
「まだ兄弟ふたりとも学生でしょ? 学校の食堂でも良かったんじゃあ?」
「毎日食堂でランチ食べる二人分のお金が、自炊だと三分の一以下で済んだんだよー」
なるほど、それなら確かに自炊のほうが節約になる。
最初は寮の簡易キッチンでサンドイッチなど簡単なものから作り始めたとのこと。
「兄さんは進学を控えて、新学期からの授業の準備があったから。僕はまだ小等部で毎日遊んでたし、代わりに頑張りました!」
「ええ話やな……」
「勉学に励む貧乏苦学生の兄と、そんな兄を支える可愛い弟。なるほどねえ~」
だが、お兄ちゃんが高等部に進学する頃の年齢というなら、今のルシウスより年上のはずだ。
経済的に困窮しているなら、それこそ冒険者登録して稼ぎに出ればいいと思うのだが。
「ルシウス君は次男、お兄さんは長男の跡継ぎでしょう。さすがにお父様が許可を出さなかったんじゃないでしょうか」
自分も貴族出身のサブギルマスのシルヴィスが苦笑している。
実際、ここココ村支部へもそのお兄ちゃんではなく、ルシウスが派遣されてやってきているわけだし。
なお、ルシウスの話はまだまだ続いている。
「毎日ランチ作るのは大変でしょって言って、奢ってくれようとする人もいたんだけどね。僕も兄さんも、その見返りにデートしてとか婚約してとか言われるから、自炊は防御策でもあったわけ」
「お前も兄貴も、可愛い女の子から手作りの菓子を山盛り貰えそうだもんな~」
「そうだよ、下心ある人には注意しなきゃなんだよ。宰相の嫌がらせのせいで、他の貴族家からの支援の申し出にも注意しなくちゃならなくなったし」
当時を思い出して、ルシウスの眉間に皺が寄っている。
「で、お菓子は貰えたの?」
「……昔から家ぐるみで付き合いがある人以外からは貰ってない。僕、鑑定スキル持ちだから。お菓子に鑑定かけると……」
「ああ……」
とルシウスと同じ貴族出身のシルヴィスが、苦い顔になった。
「物品鑑定スキル持ちなら、中身がわかっちゃいますよね」
「そう。材料の他に見えちゃうんだよね……髪の毛を燃やした灰とかよくわからないものが入ってるの」
「きついな……」
「きついよ……それで兄さんが一時期、女性不信になっちゃって。以降、差し入れ全部つっ返すようになったらクールなところがイイとか何とかって、余計モテたみたいだけど」
ルシウスが一緒にくっついていれば、弟が嫌がるのでと言って、プレゼントやデートなどの誘いを断りやすくなる。
あまり気分は良くなかったけれど、大好きなお兄ちゃんの役に立てることは嬉しかった。
「不自由はあったけど、楽しかったなあ。寮の狭い部屋で兄さんと二人っきり。夜寝るときも一緒だったし、兄さんが机で勉強してるときはベッドに寝っ転がって、兄さんの真剣な顔をずーっと見てられたんだよ」
本来の屋敷でなら、兄弟それぞれ別の部屋があったから、そのように長い時間ずっと一緒にいられることはなかったという。
「兄さんの先輩たちも、それぞれの領地の食材を差し入れに遊びに来てくれて、賑やかだったっけ。グレイシア王女様が寮まで来たときは騎士団全体が大騒ぎだったけど」
ルシウスのお兄ちゃんカイルは、アケロニア王国のグレイシア王女様とは学年が二つ下になる。
王女様は後輩カイルがお気に入りで、よく彼を振り回していたそうだ。
「あの頃、グレイシア様が兄さんのお嫁さんになったらどうしようって、夢でうなされるほど悩んだっけ。無事に同い年の婚約者が決まったって聞いたときには安心したよね……」
王女様の婚約にも一悶着あったようだが、まだ子供だからとルシウスは詳しくは教えられていなかった。
「ねえ。ルシウス君が料理できるなら、あのおいしくない臨時料理人の代わりに作ってもらうってできないのかしら?」
せめて一食分だけでも。
女魔法使いのハスミンが提案すると、料理人のオヤジさんも頷いた。
「坊主、料理できるってことは調理スキル持ってるんだろ? ならプラス持ちの俺の補助でなら……」
「ううん。調理スキルないよ。スキルが生えるほどまだ経験積んでないし、ステータスに表示されることもないと思う」
「へ?」
どういうこと?
「ルシウス君はステータス表示に謎のバグがあるんですよねえ。名前や出自、魔法剣士と魔法樹脂の使い手とは表示されるけど、その他のスキルや各数値がバグってて読めないって何でかしら?」
ここココ村支部に来た初日に、鑑定用の魔導具を使ってルシウスを鑑定した受付嬢のクレアも首を傾げている。
「そりゃ、僕は人類の古代種だもの。普通の人用のステータス鑑定テンプレートじゃ読み取れないよ」
「「「人類の古代種!???」」」
ここに来て、特大級の爆弾きた!
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