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破壊のオデット
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そして、まさかの深窓の貴族令嬢ふたりによる対戦が始まる。
場所は校庭。
まだ午後の授業がある時間帯だから、校舎内の生徒たちは何ごとかと教室から校庭を見物している。
「えっ、嘘、あれリースト伯爵令嬢と……生徒会長じゃない!?」
見届け人の学園長エルフィンとオデットの養父ルシウス、そして授業どころではない生徒や教師の見守る中、ルシウスの合図とともにバトルが始まる。
貴族令嬢とはいえ、オデットもグリンダも魔力使い。
身を守るための護身術は基本で、それに加えて戦う術はどの家の貴族も、ある程度は叩き込まれるものだ。
手も出る足も出る。スカートから伸びるふたりの令嬢のしなやかな脚に、校舎の中から男たちの歓声があがった。
そして、この国は魔法と魔術の国だ。魔法も魔術も次々繰り出される。
オデットは魔法で生み出す、無数のダイヤモンドのレイピアで。
グリンダは魔法の杖に見立てた魔導具の扇子を媒介に防御魔術を展開しつつ、合間合間に攻撃魔術でオデットのレイピアを的確に落としては、本人にも弾丸のような魔力を打ち込んでいく。
校庭には嵐のような砂埃が舞う。
「ヤバい……ヤバいヤバいわ、このままだと大変なことに……」
そして学園長エルフィンの最も恐れていた事態が訪れる。
オデットのリースト伯爵家は魔法剣士の家だ。
特徴は、輝くダイヤモンドの剣を無数に魔力で生み出し、操り、それで戦うこと。
だが彼女オデットは、基本になるレイピア数十本の他に、その血筋特有の莫大な魔力でもって、己固有の武器を創り出した。
それが、他の剣と同じダイヤモンドの輝きを放つ棘付きメイスなのだから、意味がわからない。
「それもう“魔法剣士”じゃないわよね……?」
「いえいえ。彼女、ちゃんとステータスには『魔法剣士(レイピア、メイス)』って表示されてますから」
学園長エルフィンの突っ込みに答えてくれたルシウスの回答も、何だか微妙だった。
彼女はその超重量級の武器を身体強化の術を駆使して軽々と、まるでダンスを踊るかのような華麗な動きで操り、ありとあらゆるものを破壊する。
だから彼女は、麗しの美貌で知られるリースト伯爵家出身でありながら、美貌を讃える二つ名は付かなかった。
代わりに『破壊のオデット』と呼ばれて、騎士たちや冒険者たちを問わず、歴戦の猛者にも恐れられる存在だったのだ。
まだ弱冠16歳の乙女に付いて良い二つ名ではなかった。
これが、貴族学園の高等部に入学して、身勝手な男たちに辟易としたオデットが辿り着いた答えだ。
権謀術数を駆使するのは貴族ならば当たり前。
(舐めた態度を取られないよう、強い女にならなきゃね)
その上で文字通り、『強い女の子』となることを目指したわけだ。
--
強い女の子(物理)+魔法
これもう魔法少女といってよいのでは???
場所は校庭。
まだ午後の授業がある時間帯だから、校舎内の生徒たちは何ごとかと教室から校庭を見物している。
「えっ、嘘、あれリースト伯爵令嬢と……生徒会長じゃない!?」
見届け人の学園長エルフィンとオデットの養父ルシウス、そして授業どころではない生徒や教師の見守る中、ルシウスの合図とともにバトルが始まる。
貴族令嬢とはいえ、オデットもグリンダも魔力使い。
身を守るための護身術は基本で、それに加えて戦う術はどの家の貴族も、ある程度は叩き込まれるものだ。
手も出る足も出る。スカートから伸びるふたりの令嬢のしなやかな脚に、校舎の中から男たちの歓声があがった。
そして、この国は魔法と魔術の国だ。魔法も魔術も次々繰り出される。
オデットは魔法で生み出す、無数のダイヤモンドのレイピアで。
グリンダは魔法の杖に見立てた魔導具の扇子を媒介に防御魔術を展開しつつ、合間合間に攻撃魔術でオデットのレイピアを的確に落としては、本人にも弾丸のような魔力を打ち込んでいく。
校庭には嵐のような砂埃が舞う。
「ヤバい……ヤバいヤバいわ、このままだと大変なことに……」
そして学園長エルフィンの最も恐れていた事態が訪れる。
オデットのリースト伯爵家は魔法剣士の家だ。
特徴は、輝くダイヤモンドの剣を無数に魔力で生み出し、操り、それで戦うこと。
だが彼女オデットは、基本になるレイピア数十本の他に、その血筋特有の莫大な魔力でもって、己固有の武器を創り出した。
それが、他の剣と同じダイヤモンドの輝きを放つ棘付きメイスなのだから、意味がわからない。
「それもう“魔法剣士”じゃないわよね……?」
「いえいえ。彼女、ちゃんとステータスには『魔法剣士(レイピア、メイス)』って表示されてますから」
学園長エルフィンの突っ込みに答えてくれたルシウスの回答も、何だか微妙だった。
彼女はその超重量級の武器を身体強化の術を駆使して軽々と、まるでダンスを踊るかのような華麗な動きで操り、ありとあらゆるものを破壊する。
だから彼女は、麗しの美貌で知られるリースト伯爵家出身でありながら、美貌を讃える二つ名は付かなかった。
代わりに『破壊のオデット』と呼ばれて、騎士たちや冒険者たちを問わず、歴戦の猛者にも恐れられる存在だったのだ。
まだ弱冠16歳の乙女に付いて良い二つ名ではなかった。
これが、貴族学園の高等部に入学して、身勝手な男たちに辟易としたオデットが辿り着いた答えだ。
権謀術数を駆使するのは貴族ならば当たり前。
(舐めた態度を取られないよう、強い女にならなきゃね)
その上で文字通り、『強い女の子』となることを目指したわけだ。
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これもう魔法少女といってよいのでは???
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