破壊のオデット

真義あさひ

文字の大きさ
上 下
4 / 53

プロローグ3 ※ほんのり百合回

しおりを挟む
 そしてお転婆という言葉では言い表せないほどオデットが学園でやんちゃするようになって、しばらくした頃。
 その行動がさすがに目に余ると、生徒会室に彼女を呼び出したのが、何とオデットの憧れてやまない生徒会長だったのだ。

 窓から夕陽の差す教室で、生徒会室は一面オレンジ色だった。

(ああ。何だろう、とても切ないような、悲しいような。不思議な気分)

 オデットを呼び出した生徒は、学園の3年生で生徒会長のグレイシア。
 この国、アケロニア王国の王女殿下だった。
 豊かな波打つ黒髪、輝く黒い瞳。
 一見すると男性的な端正な顔立ちだが、ビリジアングリーンの制服のブレザーの上からでもわかる豊満な胸元や括れたウエストと相俟って、とてもセクシーな女性だった。

 オデットはたんまりと日頃のやんちゃ行為へのお説教を頂戴し、しまいには不貞腐れて横を向いてしまった。
 そんな彼女を見て、王女殿下は仕方なさそうに笑った。
 そしてオデットの艶のある青銀の長い髪を一房手にとって、

「綺麗な髪だな」

 と言った。
 そして髪に口づけた。

 多分、ふたりきりのシチュエーションが良かったのだと思う。
 オデットは深いことは何も考えずに、黒髪黒目の先輩に詰め寄った。

「先輩、キスしてもいい?」

(どういう反応するのかな。……あの男みたいに、気持ち悪いって言われてしまうかしら)

 だがそんなオデットの心配とは裏腹に、王女殿下は驚いてその黒い瞳を見開きはしたものの、すぐに笑ってオデットの細い顎に指をかけて顔を上げさせた。

「悪い子だ、オデット。……内緒だぞ?」

 音も何もたてず、そっとオデットの小さな唇に口づけたのだった。

 オデットは思った。
 ああ、もう死んでもいい。




しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

失礼な人のことはさすがに許せません

四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」 それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。 ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。

戦いから帰ってきた騎士なら、愛人を持ってもいいとでも?

新野乃花(大舟)
恋愛
健気に、一途に、戦いに向かった騎士であるトリガーの事を待ち続けていたフローラル。彼女はトリガーの婚約者として、この上ないほどの思いを抱きながらその帰りを願っていた。そしてそんなある日の事、戦いを終えたトリガーはフローラルのもとに帰還する。その時、その隣に親密そうな関係の一人の女性を伴って…。

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!

甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

処理中です...