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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
7.〝しごでき〟の系譜~リースト家の男たち
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新生カーナ神国の宰相に抜擢された鮭の人はとにかくフットワークの軽い男だった。
住居は叔父ルシウスの屋敷と、旧王城をそのまま転用した官邸に一室ずつ。
神人ピアディの本拠地となった海上神殿ポセイディアを中心として、小さなウーパールーパーの主な活動範囲にはそれぞれを結ぶ空間転移装置が設置されている。
その装置を利用して、設置場所である海上神殿、官邸、王都神殿、ルシウス邸、そしてトオンの古書店へと鮭の人は自由に動いていた。
しかも、足元には彼特有の群青の魔力を帯びた環を常に出しながらだ。
この国の首脳部、新宰相は環使いだぞと周知させるために。
神人ピアディの大きな目の色と同じ鮮やかなウルトラマリンカラーの軍服は、彼の青銀の髪や白い肌によく映えた。
今の首脳部でこの色をまとっているのは鮭の人だけだ。支配者ピアディの寵愛を全身で表しているともいえる。
その姿を周囲に余すことなく見せつけ、ついでに神人ピアディと主だった国内有力者たちとの面通しをどんどん進めていった。
かと思えば、トオンの古書店まで来ては一階の食堂でお茶を飲み、アイシャやカズンが作った菓子や軽食を摘む優雅な姿を見せている。
アイシャやトオンはもちろん大歓迎だった。何せ実際に会う前から好感度が上に振り切れていたぐらいなので。
「ヨシュアさん。無理してない? あまり忙しいようなら私もトオンもできる限り助けになるわ」
とアイシャが心配げに尋ねると、鮭の人は軍服のジャケットを脱いだ白いシャツ姿の両肩を軽くすくめて見せた。
「忙しそうに見えますか? アイシャ様」
「今はリラックスして見えるけど……」
何せ彼はほぼ毎日、トオンの古書店に来ている。
日によっては早朝から来て、厨房の主カズンと一緒に昼食を作っていたりする。
それどころか、夕方前に食材持参で来てはやはりカズンと一緒に皆の夕飯の手伝いをしていることも多かった。
アイシャたちが神殿やルシウス邸に赴いたときも大抵その場にいる。
もちろん官邸や騎士団を訪れたときも、気づいたらなぜかいる。
不思議そうなアイシャに、幼馴染みだというカズンは言う。
「アイシャ、そいつなら大丈夫だ。リースト家の人間は基本的に〝しごでき〟だからな。やることやって自由時間を確保するなんてのはお手の物だ」
「「しごでき!?」」
「仕事ができるの略だ」
「斬新な略し方するね……」
読書家のトオンも知らなかった略し方のようで驚いている。
「ええ、〝しごでき〟です。自分で言うのもなんですが、我がリースト家の者は本家から末端の分家まで優秀ですよ。秘密、があるんです」
秘密、のところを殊更ゆっくり声を落としてゆっくり言う鮭の人に、アイシャたちはワクワクした気分になった。
何か、ものすごい秘せられた奥義が語られる予感がする!
「ヨシュア、そこ詳しく」
鮭の人ファンクラブ会長のユーグレンがすかさず懐から手帳とペンを出してスタンバイした。
「リースト家の者たちの秘密はですね……」
住居は叔父ルシウスの屋敷と、旧王城をそのまま転用した官邸に一室ずつ。
神人ピアディの本拠地となった海上神殿ポセイディアを中心として、小さなウーパールーパーの主な活動範囲にはそれぞれを結ぶ空間転移装置が設置されている。
その装置を利用して、設置場所である海上神殿、官邸、王都神殿、ルシウス邸、そしてトオンの古書店へと鮭の人は自由に動いていた。
しかも、足元には彼特有の群青の魔力を帯びた環を常に出しながらだ。
この国の首脳部、新宰相は環使いだぞと周知させるために。
神人ピアディの大きな目の色と同じ鮮やかなウルトラマリンカラーの軍服は、彼の青銀の髪や白い肌によく映えた。
今の首脳部でこの色をまとっているのは鮭の人だけだ。支配者ピアディの寵愛を全身で表しているともいえる。
その姿を周囲に余すことなく見せつけ、ついでに神人ピアディと主だった国内有力者たちとの面通しをどんどん進めていった。
かと思えば、トオンの古書店まで来ては一階の食堂でお茶を飲み、アイシャやカズンが作った菓子や軽食を摘む優雅な姿を見せている。
アイシャやトオンはもちろん大歓迎だった。何せ実際に会う前から好感度が上に振り切れていたぐらいなので。
「ヨシュアさん。無理してない? あまり忙しいようなら私もトオンもできる限り助けになるわ」
とアイシャが心配げに尋ねると、鮭の人は軍服のジャケットを脱いだ白いシャツ姿の両肩を軽くすくめて見せた。
「忙しそうに見えますか? アイシャ様」
「今はリラックスして見えるけど……」
何せ彼はほぼ毎日、トオンの古書店に来ている。
日によっては早朝から来て、厨房の主カズンと一緒に昼食を作っていたりする。
それどころか、夕方前に食材持参で来てはやはりカズンと一緒に皆の夕飯の手伝いをしていることも多かった。
アイシャたちが神殿やルシウス邸に赴いたときも大抵その場にいる。
もちろん官邸や騎士団を訪れたときも、気づいたらなぜかいる。
不思議そうなアイシャに、幼馴染みだというカズンは言う。
「アイシャ、そいつなら大丈夫だ。リースト家の人間は基本的に〝しごでき〟だからな。やることやって自由時間を確保するなんてのはお手の物だ」
「「しごでき!?」」
「仕事ができるの略だ」
「斬新な略し方するね……」
読書家のトオンも知らなかった略し方のようで驚いている。
「ええ、〝しごでき〟です。自分で言うのもなんですが、我がリースト家の者は本家から末端の分家まで優秀ですよ。秘密、があるんです」
秘密、のところを殊更ゆっくり声を落としてゆっくり言う鮭の人に、アイシャたちはワクワクした気分になった。
何か、ものすごい秘せられた奥義が語られる予感がする!
「ヨシュア、そこ詳しく」
鮭の人ファンクラブ会長のユーグレンがすかさず懐から手帳とペンを出してスタンバイした。
「リースト家の者たちの秘密はですね……」
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