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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
環《リンク》の制限、ペナルティの謎
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「基本は同世代の取りまとめ役だな。あとはそれぞれの環境において、可能な範囲で環使いを育てることだ」
そこで初めて、アイシャたちは魔術師フリーダヤと聖女ロータスに始まる、環オリジナルファミリーの実態を知ることになった。
「彼らは環の開発者でありながら、人を教え導く教導スキルを、まったく、何一つ、微塵たりとも持っておらんのだ。そのせいで親世代たる彼らと縁を持っても環使いにならないことが多い」
「でもルシウスさんはお二人の弟子なんでしょう?」
「出会った当初は強引にあれこれ教えてくる彼らが嫌で嫌で仕方がなかった。基本的に師に向いておらぬのだ。そもそも」
そこからの説明は、アイシャたちも薄々気づいていたことを裏付けるものだった。
「理論上、世界の理と繋がる環に不可能はないはずなのに、制限が多い。彼らが優れた師となれず環使いが広まりきらないのは、何か……世界から課されたペナルティなのかもしれぬ」
例えば、仕組みの理論上、無尽蔵に魔力をチャージできるはずの環だが、実際には術者の器を超える魔力を扱おうとすると誓約が必要になることが多い。
同じケースで、旧世代の魔力使いなら生贄を用意するところだが、誓約で済むのはメリットではあったが……
カズンはかつて『親の仇を取るまで故郷に戻らない』制限を誓いとして世界の理に立てたし、アイシャは『自分の骨をカーナ王国に埋める』と誓って旧王都地下の邪悪な古代生物を浄化する力を得た。
ただ、環の仕組みなら、なぜ誓約無しで必要な魔力調達ができないのか? の疑問は当然出る。
「……オレたちの世代では環のリミットやペナルティを研究しましょうか。アイシャ様、どうです?」
「異論はないわ。カズン絡みで魔の研究もするし、きっと全部が繋がってるのでしょうね。そんな気がするわ」
と地下ダンジョンからルシウスを救出した後にこのような話し合いがあったわけだ。
カズンが再び旅に出るのはアイシャと鮭の人が空間転移術をマスターした後とルシウスが決めた。
カズンは二人のうちどちらかを伴うべきだが、仮に同行できなくても、アイシャか鮭の人が空間転移でカズンをカーナ神国まで安全に連れ戻せる体制が整えば良しとした。
ただ、極めて魔力の高いアイシャと鮭の人でも、空間転移術のマスターには困難を極めた。
スキルだけならルシウスから伝授されたのだが、ステータスにはグレーの文字で表記されたままでなかなか有効化できなかったのだ。
それで結局、四月に旧カーナ王国入りしたカズンは五月、六月と月が変わっても新生カーナ神国から出ることは叶わなかった。それこそ料理人ゲンジの言葉ではないが「美味しいごはんを作って食べて休んでろ」と全方向から宥められて今に至る。
以前と同様、トオンの古書店二階の宿屋の部屋に陣取って、皆の食事やおやつの世話を渋々、いや嬉々として焼いているわけだ。
それにカズンだけでなく、ダンジョンボス化したルシウスと半月近くに渡って対峙したアイシャたちの消耗も軽視できなかった。
旧カーナ王国が神人ピアディによってカーナ神国に一気に塗り替えられていく中、関係者たちはそれらに関わりながらも、それぞれの場所で休養に努めることとなった。
そこで初めて、アイシャたちは魔術師フリーダヤと聖女ロータスに始まる、環オリジナルファミリーの実態を知ることになった。
「彼らは環の開発者でありながら、人を教え導く教導スキルを、まったく、何一つ、微塵たりとも持っておらんのだ。そのせいで親世代たる彼らと縁を持っても環使いにならないことが多い」
「でもルシウスさんはお二人の弟子なんでしょう?」
「出会った当初は強引にあれこれ教えてくる彼らが嫌で嫌で仕方がなかった。基本的に師に向いておらぬのだ。そもそも」
そこからの説明は、アイシャたちも薄々気づいていたことを裏付けるものだった。
「理論上、世界の理と繋がる環に不可能はないはずなのに、制限が多い。彼らが優れた師となれず環使いが広まりきらないのは、何か……世界から課されたペナルティなのかもしれぬ」
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同じケースで、旧世代の魔力使いなら生贄を用意するところだが、誓約で済むのはメリットではあったが……
カズンはかつて『親の仇を取るまで故郷に戻らない』制限を誓いとして世界の理に立てたし、アイシャは『自分の骨をカーナ王国に埋める』と誓って旧王都地下の邪悪な古代生物を浄化する力を得た。
ただ、環の仕組みなら、なぜ誓約無しで必要な魔力調達ができないのか? の疑問は当然出る。
「……オレたちの世代では環のリミットやペナルティを研究しましょうか。アイシャ様、どうです?」
「異論はないわ。カズン絡みで魔の研究もするし、きっと全部が繋がってるのでしょうね。そんな気がするわ」
と地下ダンジョンからルシウスを救出した後にこのような話し合いがあったわけだ。
カズンが再び旅に出るのはアイシャと鮭の人が空間転移術をマスターした後とルシウスが決めた。
カズンは二人のうちどちらかを伴うべきだが、仮に同行できなくても、アイシャか鮭の人が空間転移でカズンをカーナ神国まで安全に連れ戻せる体制が整えば良しとした。
ただ、極めて魔力の高いアイシャと鮭の人でも、空間転移術のマスターには困難を極めた。
スキルだけならルシウスから伝授されたのだが、ステータスにはグレーの文字で表記されたままでなかなか有効化できなかったのだ。
それで結局、四月に旧カーナ王国入りしたカズンは五月、六月と月が変わっても新生カーナ神国から出ることは叶わなかった。それこそ料理人ゲンジの言葉ではないが「美味しいごはんを作って食べて休んでろ」と全方向から宥められて今に至る。
以前と同様、トオンの古書店二階の宿屋の部屋に陣取って、皆の食事やおやつの世話を渋々、いや嬉々として焼いているわけだ。
それにカズンだけでなく、ダンジョンボス化したルシウスと半月近くに渡って対峙したアイシャたちの消耗も軽視できなかった。
旧カーナ王国が神人ピアディによってカーナ神国に一気に塗り替えられていく中、関係者たちはそれらに関わりながらも、それぞれの場所で休養に努めることとなった。
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