265 / 306
第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
カズンが合流したときのこと
しおりを挟む
「この世に邪や魔、悪が蔓延るときに世界の理が地上に生み出すのが勇者、か。すごいよね」
じーっとトオンの蛍石の薄緑色の目で見つめられて、カズンはたじろいだ。
「な、なんだ? 言うな、わかってる。どうせ『こいつが勇者かよ』とでも思ってるのだろう!?」
「いや、別に。……羨ましいなあって。勇者、いいよね。格好いい」
だがそういう個人的な気持ちとは別に、トオンには懸念することがある。
「ユーグレンさんとも話してたんだけどね。今、このカーナ新国にはあまりにも重要人物が集まりすぎてる」
トオンの指摘に、はまぐりに夢中のピアディ以外の皆の視線が集まる。
「まず、聖女のアイシャ。聖者で進化した種族になったルシウスさん。そのお姉さんの魔王ジューアお姉様」
「アケロニア王国の王太子で賢者の資格持ちたる私。先王弟で勇者の可能性を得たカズン。魔法の大家リースト家の当主で大魔道士に覚醒したヨシュア」
今は永遠の国に一時的に戻っているビクトリノも加えると、更に増える。
トオンとユーグレンは、まだはまぐりの身をもぐもぐしているピアディを見た。
「ぷぅ?」
「古の魚人族にして歌聖たるピアディ殿。――そして永遠の国の進化した種族たちの長と言われるカーナ姫。あまりにも、あまりにも多すぎる」
確かにな、と皆は頷いた。
「しかも環使いの率が高い。何か時代の……意思のようなものを感じるのは私だけだろうか?」
「………………」
ユーグレンの指摘に皆は黙り込んだ。
確かに、今この国に集まる者たちの顔ぶれは豪華だった。聖女のアイシャ一人だけでも貴重で珍しいのに、他の聖者や神人までとなると、他国には例がないほどだ。
* * *
父親の仇を追って旅に出ていたカズンが、再び旧カーナ王国の地に戻ってきたのは四月のことだった。
ルシウスがうっかり地下に創り出してしまったダンジョンボスとなり、アイシャたちだけの救出は困難を極めた。
そこで助けを求めたのが、彼の甥の鮭の人ヨシュアだ。だが鮭の人は一年以上前に故郷アケロニア王国を出奔してカズンを探していたものの、なかなか追いつけていなかった。
ところが、ルシウスの秘書ユキレラが鮭の人に連絡を取ったと同時期に、彼はようやくカズンに辿り着いていたのだ。
旧カーナ王国には、そのカズンと一緒に駆けつけて、叔父ルシウスとこの国の危機を救ってくれたというわけである。
旧カーナ王国に合流したとき、カズンは既に鮭の人とは一緒だったが、ユーグレンとは五年、いや六年振りの再会だったそうだ。
普段から淡々とした、少し天然の入った態度のカズンしか知らなかったアイシャとトオンは、ユーグレン相手に涙ぐんだ彼に驚いたものだった。
「くそ、まさかこの僕がユーグレンの顔を見て泣きたくなるなんて、不覚!」
「お前な、ここは盛大にハグし合って再会を祝うところだろうが」
呆れるユーグレンのほうが背も高く体格も良いので、からかい顔で思いっきりハグられていた。
その様子を、鮭の人がとても良い笑顔で見守っていて、アイシャもトオンも胸に迫るような感動を覚えた。彼ら三人もアケロニア王国ではとても親しい間柄だったそうなので感慨もひとしおだろう。
落ち着いて我に返った頃、カズンはとてもばつの悪そうな、恥ずかしそうな様子だった。
誤魔化すように、自分を抱き締めていたユーグレンにつっけんどんな物言いで、
「そういえば、何でまだいるんだ、ユーグレン。国に帰れよ」
「お前もヨシュアもルシウス様までいるのに、私一人が帰れるわけがないだろう?」
「いや、帰れって。お前がこの国にいても、ぶっちゃけ大して役に立たなくないか?」
「うぐっ」
図星だ。なぜか相談役に収まって滞在しているが、それは旧カーナ王国時代の共和政実現会議においてだ。
神人ピアディをトップに戴く現在の新生カーナ神国に必要かといえば、居てもいなくても変わらないといったところだろう。
じーっとトオンの蛍石の薄緑色の目で見つめられて、カズンはたじろいだ。
「な、なんだ? 言うな、わかってる。どうせ『こいつが勇者かよ』とでも思ってるのだろう!?」
「いや、別に。……羨ましいなあって。勇者、いいよね。格好いい」
だがそういう個人的な気持ちとは別に、トオンには懸念することがある。
「ユーグレンさんとも話してたんだけどね。今、このカーナ新国にはあまりにも重要人物が集まりすぎてる」
トオンの指摘に、はまぐりに夢中のピアディ以外の皆の視線が集まる。
「まず、聖女のアイシャ。聖者で進化した種族になったルシウスさん。そのお姉さんの魔王ジューアお姉様」
「アケロニア王国の王太子で賢者の資格持ちたる私。先王弟で勇者の可能性を得たカズン。魔法の大家リースト家の当主で大魔道士に覚醒したヨシュア」
今は永遠の国に一時的に戻っているビクトリノも加えると、更に増える。
トオンとユーグレンは、まだはまぐりの身をもぐもぐしているピアディを見た。
「ぷぅ?」
「古の魚人族にして歌聖たるピアディ殿。――そして永遠の国の進化した種族たちの長と言われるカーナ姫。あまりにも、あまりにも多すぎる」
確かにな、と皆は頷いた。
「しかも環使いの率が高い。何か時代の……意思のようなものを感じるのは私だけだろうか?」
「………………」
ユーグレンの指摘に皆は黙り込んだ。
確かに、今この国に集まる者たちの顔ぶれは豪華だった。聖女のアイシャ一人だけでも貴重で珍しいのに、他の聖者や神人までとなると、他国には例がないほどだ。
* * *
父親の仇を追って旅に出ていたカズンが、再び旧カーナ王国の地に戻ってきたのは四月のことだった。
ルシウスがうっかり地下に創り出してしまったダンジョンボスとなり、アイシャたちだけの救出は困難を極めた。
そこで助けを求めたのが、彼の甥の鮭の人ヨシュアだ。だが鮭の人は一年以上前に故郷アケロニア王国を出奔してカズンを探していたものの、なかなか追いつけていなかった。
ところが、ルシウスの秘書ユキレラが鮭の人に連絡を取ったと同時期に、彼はようやくカズンに辿り着いていたのだ。
旧カーナ王国には、そのカズンと一緒に駆けつけて、叔父ルシウスとこの国の危機を救ってくれたというわけである。
旧カーナ王国に合流したとき、カズンは既に鮭の人とは一緒だったが、ユーグレンとは五年、いや六年振りの再会だったそうだ。
普段から淡々とした、少し天然の入った態度のカズンしか知らなかったアイシャとトオンは、ユーグレン相手に涙ぐんだ彼に驚いたものだった。
「くそ、まさかこの僕がユーグレンの顔を見て泣きたくなるなんて、不覚!」
「お前な、ここは盛大にハグし合って再会を祝うところだろうが」
呆れるユーグレンのほうが背も高く体格も良いので、からかい顔で思いっきりハグられていた。
その様子を、鮭の人がとても良い笑顔で見守っていて、アイシャもトオンも胸に迫るような感動を覚えた。彼ら三人もアケロニア王国ではとても親しい間柄だったそうなので感慨もひとしおだろう。
落ち着いて我に返った頃、カズンはとてもばつの悪そうな、恥ずかしそうな様子だった。
誤魔化すように、自分を抱き締めていたユーグレンにつっけんどんな物言いで、
「そういえば、何でまだいるんだ、ユーグレン。国に帰れよ」
「お前もヨシュアもルシウス様までいるのに、私一人が帰れるわけがないだろう?」
「いや、帰れって。お前がこの国にいても、ぶっちゃけ大して役に立たなくないか?」
「うぐっ」
図星だ。なぜか相談役に収まって滞在しているが、それは旧カーナ王国時代の共和政実現会議においてだ。
神人ピアディをトップに戴く現在の新生カーナ神国に必要かといえば、居てもいなくても変わらないといったところだろう。
18
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
『スキルなし』だからと婚約を破棄されましたので、あなたに差し上げたスキルは返してもらいます
七辻ゆゆ
恋愛
「アナエル! 君との婚約を破棄する。もともと我々の婚約には疑問があった。王太子でありスキル『完全結界』を持つこの私が、スキルを持たない君を妻にするなどあり得ないことだ」
「では、そのスキルはお返し頂きます」
殿下の持つスキル『完全結界』は、もともとわたくしが差し上げたものです。いつも、信じてくださいませんでしたね。
(※別の場所で公開していた話を手直ししています)
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。