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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中

飯マズ解析用ではなかったらしい

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  * * *



 ゴリ、ゴリリ、ゴリ……

「確かにあったな。あれは結局どうなったのだ?」

 皆の視線が、テーブルの上でユキノと一緒に生のナッツをもぐもぐしているピアディに向いた。

「ぷぅ?(さいあい、どうなのだ?)」
「あの場はあれ以上揉めないように適当にユーグレン様に合わせたまでです」
「そうなのか!?」
「いえいえ、死刑の代替案が必須なのは同意見です。なかなか良い案が考えつかなかったんですけど、トオン君のお陰で何とかなりそうです」
「ぷぅ!」

 麗しく微笑みかけられ、胸キュンのウパルパは大きな青い目をキラキラに輝かせている。

 ゴリ……ゴリ、ゴリ……

 そういえば、ずっとコーヒーミルのガリゴリ豆を挽く音が食堂に響いていた。これはいったい?

「ヨシュアさん、ひとまずコーヒー豆ぜんぶ中細挽きにしておきました!」
「ご苦労様、トオン君」

 あれ? と皆が不思議そうな顔をする中、残っていた四百グラムほどのコーヒー豆を挽き終わったトオンから鮭の人がどっさり粉の入った袋を受け取っている。

 それをどうするのだろう? と思っていると、鮭の人は袋を素早く魔法樹脂で薄く覆うように封入し(鮮度保持のためだろう)、――床に落とした。

 いや、彼の足元が群青色に輝いている。
 鮭の人のリンクはアイシャたちとは違って、足元に出る珍しいタイプなのだ。
 落としたのではなく、自分のリンクの中のアイテムボックス領域に収納したようだ。

「ヨシュアさん。わざわざ普通味のコーヒーの粉、どうするの?」
「いえいえ、アイシャ様。これは祝福前のミルで挽いた豆ですから」
「待って! ならその粉は飯マズ付与されてるのでは?」
「そうですよ?」

 当然ですと言わんばかりに、麗しの顔ながら爽やかに笑って鮭の人は席を立った。

「ではオレはお先に官邸に戻ります。いやあ、助かりました。これで拷問用の薬剤や魔導具代が浮きそうだ」
「!?」

 とてつもなく不穏で皆の心を不安にさせる言葉を残して、転移魔導具で戻っていった。

「……今、拷問用って言ってた……わよね?」
「言ってましたね。オレもこの耳で確かに聞きました」

 アイシャは、こちらも驚いた顔のユキレラと顔を見合わせてしまった。

「どうしましょう。止めに行きます? でも犯罪者にとってみたら、死刑になるより飯マズの洗礼を受ける方がはるかにマシですよね?」
「待って、待って。まだ犯罪者たちに飯マズコーヒーを飲ませるって決まったわけじゃ」

 皆が混乱する中、ルシウスは厳かに口を開いた。

「まだ予想に過ぎぬ。ひとまず数日、様子を見ようではないか」



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