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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
78:06 ラスボス戦闘不能……からの強制終了
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78:06
さて、あとは最奥部のラスボス攻略を残すのみ。
トオン特製のデストラップブリトーのバッドステータスから生還したアイシャは、気を取り直して先に進むことにした。
「ふふ、ルシウスさんも新しい装束を誂えたのよね? きっとすごく格好いいのでしょうね、楽しみだわ」
今回、アイシャが赤の軍服姿をお披露目するのに合わせて、ダンジョンボスのルシウスにも国から専用の新しい衣装を準備したと聞いていた。
(ん? ルシウス様ならリースト家の白い軍服ではないのか?)
(あ、そうそう。この国に来たとき着てたやつだね。あの形をベースに、ユキレラさんとジューアお姉様がデザインと仕立てを張り切ったみたいだよ)
(刺繍にたくさん付与魔法を込めてらしたなあ)
だが、しかし。
美しきクリスタルパレス最奥部、ラスボスの間にいたのは。
「やあああ……せっかくの晴れ舞台なのに、なんでこうなるのー!」
純白のラスボス衣装に埋もれていたのは青銀の髪の幼児、いや〝時を壊す〟を果たして肉体年齢がまだ不安定なルシウス本人だった。
今回は三歳児ぐらいの大きさといったところか。甲高い幼児の声で大騒ぎだ。
神人に覚醒したルシウスは、元々のネオンブルーの魔力に虹色の煌めきが加わっている。
虹色キラキラを帯びたネオンブルーの魔力を全身から四方八方に発して、ラスボスの間はさながら演劇の舞台上の如くだ。
いや、むしろダンスフロアのようなというべきか。
透明な魔法樹脂の空間に魔力の光が乱反射して、美しく幻想的な光景ではあったものの……
そこにルシウス特有の〝聖者の芳香〟である松の重厚で清浄な香りが充満して、すっかり空間が聖域化している。
(あーあ。こりゃ撮影は中止かな)
「ルシウスさん、まだ身体が安定してないのね」
仕方ないと溜め息をついたアイシャは、苦笑して装束ごとルシウスを抱き上げようとして、――ハッと気づいた。
慌てて辺りを見回す。
「ピアディちゃん? もう帰りますよ、どこですか?」
「ピアディ様? ポッケに入って一緒に帰りましょうー?」
アイシャとヨシュアが辺りを見回すも、どこからもあの空気の抜けるような「ぷぅ」との鳴き声が聞こえてこない。
食あたりで倒れたアイシャに回復魔法をかけた後、休憩を切り上げて皆がラスボスの間に向かっていた頃。
回復役お助けキャラの出番を終えて暇だったピアディは、よちよちと短い四肢で歩いて辺りを散策していた。
「ぷぅ(ここはキラキラしててキレイなのだ~)」
ダンジョンを構成している壁や床など、魔法樹脂は素材そのものが透明で発光していて美しく、とても目を喜ばせる。
「ぷぅ?」
アイシャをバッドステータスにかけたブリトーの残りがダンジョン内に残されている。スタッフがまだ回収していなかったようだ。
中身はサバ焼きだ。
まだ赤ちゃんに近くて幼く、あまり火の通った食べものは食べ慣れていないピアディだった。
けれど、ちょんちょんと短い前脚の先で突っついてみると、とても美味しそうな匂いがしたので、つい。
つい、魔が差してしまった。
「ぷぅ?」
ぱくっ。
こっそり、中身のサバの身だけ齧ってみると。
「ぷぅ!?」
その味わいは突き抜けるような不味さ、いや不毛さ。
「ぷぅ! ぷぅうううう!」
こてっ。
そしてピアディは、白目を剥いて泡を吐きながらひっくり返っているところを発見された。
「ぷぅ!(なんぞあれはー! われトラウマになった! トラウマー!)
「ピアディちゃん。どうして落ちてるものを食べたりしたんですか。めっですよ。めっ」
アイシャが食べて倒れただけだったなら、まだ良かった。
けれど、カーナ神国の支配者にして進化した種族、神人のピアディまでもが意識を失うほどの飯マズは只事ではない。
「まさか、俺の作ったものがトラウマ級の飯マズだなんて……」
ちょっとした悪戯が大事になってしまった。
「トオン君。ダンジョン出たらちょっと後でお話、しようか?」
中ボス鮭の人、――現在はカーナ神国の宰相に任命されたヨシュアに、にっこり麗しく微笑みかけられた。
「お、お説教タイムですか?」
「大丈夫だトオン。ヨシュアの説教は短いしあっさりしてるぞ。ただぐうの音も出ない正論で殴ってくるだけだからな」
「それのどこに大丈夫な要素があるの!?」
というわけで、撮影付きダンジョン踏破RTAはぐだぐだに終わってしまったのである。
とりあえず何かさばきたいですね🐟
さて、あとは最奥部のラスボス攻略を残すのみ。
トオン特製のデストラップブリトーのバッドステータスから生還したアイシャは、気を取り直して先に進むことにした。
「ふふ、ルシウスさんも新しい装束を誂えたのよね? きっとすごく格好いいのでしょうね、楽しみだわ」
今回、アイシャが赤の軍服姿をお披露目するのに合わせて、ダンジョンボスのルシウスにも国から専用の新しい衣装を準備したと聞いていた。
(ん? ルシウス様ならリースト家の白い軍服ではないのか?)
(あ、そうそう。この国に来たとき着てたやつだね。あの形をベースに、ユキレラさんとジューアお姉様がデザインと仕立てを張り切ったみたいだよ)
(刺繍にたくさん付与魔法を込めてらしたなあ)
だが、しかし。
美しきクリスタルパレス最奥部、ラスボスの間にいたのは。
「やあああ……せっかくの晴れ舞台なのに、なんでこうなるのー!」
純白のラスボス衣装に埋もれていたのは青銀の髪の幼児、いや〝時を壊す〟を果たして肉体年齢がまだ不安定なルシウス本人だった。
今回は三歳児ぐらいの大きさといったところか。甲高い幼児の声で大騒ぎだ。
神人に覚醒したルシウスは、元々のネオンブルーの魔力に虹色の煌めきが加わっている。
虹色キラキラを帯びたネオンブルーの魔力を全身から四方八方に発して、ラスボスの間はさながら演劇の舞台上の如くだ。
いや、むしろダンスフロアのようなというべきか。
透明な魔法樹脂の空間に魔力の光が乱反射して、美しく幻想的な光景ではあったものの……
そこにルシウス特有の〝聖者の芳香〟である松の重厚で清浄な香りが充満して、すっかり空間が聖域化している。
(あーあ。こりゃ撮影は中止かな)
「ルシウスさん、まだ身体が安定してないのね」
仕方ないと溜め息をついたアイシャは、苦笑して装束ごとルシウスを抱き上げようとして、――ハッと気づいた。
慌てて辺りを見回す。
「ピアディちゃん? もう帰りますよ、どこですか?」
「ピアディ様? ポッケに入って一緒に帰りましょうー?」
アイシャとヨシュアが辺りを見回すも、どこからもあの空気の抜けるような「ぷぅ」との鳴き声が聞こえてこない。
食あたりで倒れたアイシャに回復魔法をかけた後、休憩を切り上げて皆がラスボスの間に向かっていた頃。
回復役お助けキャラの出番を終えて暇だったピアディは、よちよちと短い四肢で歩いて辺りを散策していた。
「ぷぅ(ここはキラキラしててキレイなのだ~)」
ダンジョンを構成している壁や床など、魔法樹脂は素材そのものが透明で発光していて美しく、とても目を喜ばせる。
「ぷぅ?」
アイシャをバッドステータスにかけたブリトーの残りがダンジョン内に残されている。スタッフがまだ回収していなかったようだ。
中身はサバ焼きだ。
まだ赤ちゃんに近くて幼く、あまり火の通った食べものは食べ慣れていないピアディだった。
けれど、ちょんちょんと短い前脚の先で突っついてみると、とても美味しそうな匂いがしたので、つい。
つい、魔が差してしまった。
「ぷぅ?」
ぱくっ。
こっそり、中身のサバの身だけ齧ってみると。
「ぷぅ!?」
その味わいは突き抜けるような不味さ、いや不毛さ。
「ぷぅ! ぷぅうううう!」
こてっ。
そしてピアディは、白目を剥いて泡を吐きながらひっくり返っているところを発見された。
「ぷぅ!(なんぞあれはー! われトラウマになった! トラウマー!)
「ピアディちゃん。どうして落ちてるものを食べたりしたんですか。めっですよ。めっ」
アイシャが食べて倒れただけだったなら、まだ良かった。
けれど、カーナ神国の支配者にして進化した種族、神人のピアディまでもが意識を失うほどの飯マズは只事ではない。
「まさか、俺の作ったものがトラウマ級の飯マズだなんて……」
ちょっとした悪戯が大事になってしまった。
「トオン君。ダンジョン出たらちょっと後でお話、しようか?」
中ボス鮭の人、――現在はカーナ神国の宰相に任命されたヨシュアに、にっこり麗しく微笑みかけられた。
「お、お説教タイムですか?」
「大丈夫だトオン。ヨシュアの説教は短いしあっさりしてるぞ。ただぐうの音も出ない正論で殴ってくるだけだからな」
「それのどこに大丈夫な要素があるの!?」
というわけで、撮影付きダンジョン踏破RTAはぐだぐだに終わってしまったのである。
とりあえず何かさばきたいですね🐟
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