237 / 292
第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
04:53 序盤バグのスルーポイント
しおりを挟む
04:53
「おっとお嬢さん。そこまでにしてもらいましょうか」
「!」
綿毛竜のお助けキャラを従え、赤い軍服姿でダンジョン内を疾走するアイシャの前に新たな敵が現れた!
背の高いダークスーツ姿の、青銀の髪のイケメンおじさんだ。
というより、ただの秘書ユキレラである。
一応リースト一族の魔法剣士なので、二本の金剛石の魔法剣を宙に浮かせ、切先をアイシャに向けて次のエリアへの入口を塞ぐ形で待ち受けていた。
「ユキレ……ケフケフンッ、――敵です。人型のモンスター……ではなさそうですが、魔法剣を扱うようです」
(身内だらけのお遊戯会だからなあ。頑張れ、アイシャー)
さも初めてダンジョン挑戦します、敵のことなんか何も知りませんでした、という顔をして踏破しなければならないアイシャも大変だ。
「ここがちょうど、クリスタルパレスの中間地点です。引き返すならここが最後のチャンスですよ~」
「隙あり!」
魔法剣を飛ばそうとユキレラが片手を上げた、まさにそこが隙だ。
そのままアイシャは小柄な体型を生かして、脇をすり抜けて次のエリアへと進んでいった。
あとはひたすら全力疾走だ。
「え? あー! ち、ちょっとアイシャ様! 戦闘! 戦ってくださいよ、せっかくの出番だったのにー!」
アイシャ様に一太刀でも浴びせることができたらボーナスだったのに! とユキレラががっくり項垂れている。
(まさかの戦闘スルー)
(攻略のバグポイントだな……)
(時短のためにあるような雑魚でしたね……。っと、それではいよいよオレの出番)
と鮭の人がいそいそと魔道士用の黒ローブを着込み始めたが、まだ早かった。
「くっ、こ、これは!?」
思いっきりスルーされてしまったユキレラの全身に、光る紐状の魔力が絡みついている。
ネオングリーン色の光だ。聖女アイシャの聖なる魔力の色だった。
(よっしゃ、練習の甲斐あったなアイシャ!)
彼氏のトオンが拳を握りしめて快哉を叫んでいる。
紐状の魔力はそのままユキレラを縛り上げていき、やがてきゅっと一際強く締め上げられたユキレラはその場に崩れ落ちた。
挑戦者、聖女アイシャの勝ち!
(小ボスにすらならぬとは……)
(これはボーナスどころか減給かな。ユキレラ、修行を一からやり直し!)
年下ながらユキレラの魔法剣の師匠だという、鮭の人のお言葉である。
08:05
「先程の雑魚敵のところがちょうど中間点だったようです。この先はもっと強い敵も出現するでしょう。――しかしこの聖女アイシャに油断はありません」
走りながらキリッと顔つきを引き締めるアイシャは、まだ十八歳の少女だが歴戦の猛者の雰囲気を漂わせている。
何年間も旧カーナ王国の聖女として、国を襲う魔物退治をしてきたのだ。今さらこんなヌルい出来レースダンジョンで醜態など晒すわけがない。
「ピュイッ(聖女よ、次の敵だ! 気をつけて!)」
「了解です!」
現れたのは黒いローブを羽織った人型の敵だった。
背格好からするとまだ若い男性のようだ。
(ヨシュアの晴れ舞台! これは次のファンクラブ会報は分厚くなるぞう!)
(何の、聖女アイシャファンクラブだって負けてませんよユーグレンさん!)
(……まあ見せ場だしな。写真を撮っておくとしよう)
エキサイトするユーグレンとトオンを横目に眺めつつ、カズンが自前の写真撮影用の魔導具を構えて、アイシャと中ボスの対戦を撮影していく。
この写真はまたしばらくは新聞の『聖女投稿』コーナーを賑わせることだろう。
「おっとお嬢さん。そこまでにしてもらいましょうか」
「!」
綿毛竜のお助けキャラを従え、赤い軍服姿でダンジョン内を疾走するアイシャの前に新たな敵が現れた!
背の高いダークスーツ姿の、青銀の髪のイケメンおじさんだ。
というより、ただの秘書ユキレラである。
一応リースト一族の魔法剣士なので、二本の金剛石の魔法剣を宙に浮かせ、切先をアイシャに向けて次のエリアへの入口を塞ぐ形で待ち受けていた。
「ユキレ……ケフケフンッ、――敵です。人型のモンスター……ではなさそうですが、魔法剣を扱うようです」
(身内だらけのお遊戯会だからなあ。頑張れ、アイシャー)
さも初めてダンジョン挑戦します、敵のことなんか何も知りませんでした、という顔をして踏破しなければならないアイシャも大変だ。
「ここがちょうど、クリスタルパレスの中間地点です。引き返すならここが最後のチャンスですよ~」
「隙あり!」
魔法剣を飛ばそうとユキレラが片手を上げた、まさにそこが隙だ。
そのままアイシャは小柄な体型を生かして、脇をすり抜けて次のエリアへと進んでいった。
あとはひたすら全力疾走だ。
「え? あー! ち、ちょっとアイシャ様! 戦闘! 戦ってくださいよ、せっかくの出番だったのにー!」
アイシャ様に一太刀でも浴びせることができたらボーナスだったのに! とユキレラががっくり項垂れている。
(まさかの戦闘スルー)
(攻略のバグポイントだな……)
(時短のためにあるような雑魚でしたね……。っと、それではいよいよオレの出番)
と鮭の人がいそいそと魔道士用の黒ローブを着込み始めたが、まだ早かった。
「くっ、こ、これは!?」
思いっきりスルーされてしまったユキレラの全身に、光る紐状の魔力が絡みついている。
ネオングリーン色の光だ。聖女アイシャの聖なる魔力の色だった。
(よっしゃ、練習の甲斐あったなアイシャ!)
彼氏のトオンが拳を握りしめて快哉を叫んでいる。
紐状の魔力はそのままユキレラを縛り上げていき、やがてきゅっと一際強く締め上げられたユキレラはその場に崩れ落ちた。
挑戦者、聖女アイシャの勝ち!
(小ボスにすらならぬとは……)
(これはボーナスどころか減給かな。ユキレラ、修行を一からやり直し!)
年下ながらユキレラの魔法剣の師匠だという、鮭の人のお言葉である。
08:05
「先程の雑魚敵のところがちょうど中間点だったようです。この先はもっと強い敵も出現するでしょう。――しかしこの聖女アイシャに油断はありません」
走りながらキリッと顔つきを引き締めるアイシャは、まだ十八歳の少女だが歴戦の猛者の雰囲気を漂わせている。
何年間も旧カーナ王国の聖女として、国を襲う魔物退治をしてきたのだ。今さらこんなヌルい出来レースダンジョンで醜態など晒すわけがない。
「ピュイッ(聖女よ、次の敵だ! 気をつけて!)」
「了解です!」
現れたのは黒いローブを羽織った人型の敵だった。
背格好からするとまだ若い男性のようだ。
(ヨシュアの晴れ舞台! これは次のファンクラブ会報は分厚くなるぞう!)
(何の、聖女アイシャファンクラブだって負けてませんよユーグレンさん!)
(……まあ見せ場だしな。写真を撮っておくとしよう)
エキサイトするユーグレンとトオンを横目に眺めつつ、カズンが自前の写真撮影用の魔導具を構えて、アイシャと中ボスの対戦を撮影していく。
この写真はまたしばらくは新聞の『聖女投稿』コーナーを賑わせることだろう。
1
お気に入りに追加
3,953
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。
藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。
そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。
私がいなければ、あなたはおしまいです。
国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。
設定はゆるゆるです。
本編8話で完結になります。
破壊のオデット
真義あさひ
恋愛
麗しのリースト伯爵令嬢オデットは、その美貌を狙われ、奴隷商人に拐われる。
他国でオークションにかけられ純潔を穢されるというまさにそのとき、魔法の大家だった実家の秘術「魔法樹脂」が発動し、透明な樹脂の中に封じ込められ貞操の危機を逃れた。
それから百年後。
魔法樹脂が解凍され、親しい者が誰もいなくなった時代に麗しのオデットは復活する。
そして学園に復学したオデットには生徒たちからの虐めという過酷な体験が待っていた。
しかしオデットは負けずに立ち向かう。
※思春期の女の子たちの、ほんのり百合要素あり。
「王弟カズンの冒険前夜」のその後、
「聖女投稿」第一章から第二章の間に起こった出来事です。
【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる
櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。
彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。
だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。
私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。
またまた軽率に短編。
一話…マリエ視点
二話…婚約者視点
三話…子爵令嬢視点
四話…第二王子視点
五話…マリエ視点
六話…兄視点
※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。
スピンオフ始めました。
「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
あなたをかばって顔に傷を負ったら婚約破棄ですか、なおその後
アソビのココロ
恋愛
「その顔では抱けんのだ。わかるかシンシア」 侯爵令嬢シンシアは婚約者であるバーナビー王太子を暴漢から救ったが、その際顔に大ケガを負ってしまい、婚約破棄された。身軽になったシンシアは冒険者を志して辺境へ行く。そこに出会いがあった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。