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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
襲来
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ダンジョン最奥でボスとなったのは、カーナ姫の息子だと聞いていた。
これまで王都地下に、邪悪な古代生物の化石として埋まっていたものだ。
そして現在は、巨大な魚人の化け物から本来の人の姿に戻っている。
「あれ。魔法樹脂の中に入ったまま……だね?」
ルシウスが地下調査をしたとき、封入してそのままということだ。
とはいえカーナ姫の息子は既に死体。肉体の中に魂はない。
魔法樹脂の中の人は、まだ若い青年の姿をしている。年はアイシャと同じくらいか、もう少し上かぐらいだろう。
艶のある黒髪に白い肌。目の色は瞼が閉じていてわからない。ぞっとするほど美しい青年だ。
銀色のミスラル銀の鎧を身につけて、腹部には大穴が空いて向こう側が見えている。今にも血が滴りそうなほど生々しかった。
「し、死んでる……んだよな?」
「だ、だが、何やら魔法樹脂が振動してないか!?」
トオンとユーグレンは少しラスボスから離れて様子を窺っていた。怖いようで、互いに身を寄せ合って震えている。
アイシャはルシウスやジューアに並んで、カーナ姫の息子の亡骸を近くから覗き込んだ。
「本来の魂はもう抜けてますね。何か……うん、ルシウスさんが言ってたように外部から別の魂が入り込んでる。人間……ハイヒューマン……でもないわね。魔物の類いで間違いない」
何年もカーナ王国の聖女として魔物と戦い続けてきたアイシャの見立ては確かだ。
「で、でも、それ何か動いてない!?」
「死体に入った魔物の魂が、魔法樹脂を砕こうとしてるみたい」
「だが死体だからな。身動きできぬといったところか」
ルシウスが隣の姉を見ると、ジューアも頷いて弟と一緒にカーナ姫の息子に手を翳した。
「再封印だ。ついでに聖なる魔力を込めて、封入したまま魔物の魂を浄化してしまおう」
ルシウスの大きな手から、彼特有のネオンカラーに光る青い魔力が溢れ出し、魔法樹脂に染み込んでいった。
「助力します、ルシウスさん」
アイシャも魔法樹脂の上から手を翳した。腰回りに環が浮かび、光の円環にネオングリーンの魔力を帯びる。
「あ、来た来た」
トオンが嬉しげに呟いた。
ルシウスの聖なる魔力には松の重厚な芳香。
アイシャにはオレンジに似た柑橘系の爽やかな香りが出てくるのだ。
それらの香りに連動して、トオンとユーグレンの胸回りにも環が発現する。
香り自体が魔力なので、魔力のコントロールパネルにもなっている環が反応することはよくあることだった。
同じ場にいるだけなのに、魔力が満ちてくる。聖なる魔力持ちによる祥兆である。
「よし、ひとまず浄化完了。持ち運び……は大変なので一時的に環内のアイテムボックスに入れておこう」
そう言ってルシウスがカーナ姫の息子の亡骸を環に納め、「これでダンジョン踏破完了だ」と皆が安堵の息を吐いた次の瞬間。
突如として芳香が消失した。
次いで、ルシウス、アイシャ、それにトオンやユーグレンの環が光量を失って、発現停止し消えた。
「え、何これ」
突然の現象にトオンが首を傾げるより、ユーグレンの動きのほうが速かった。
「避けろ!」
ユーグレンはアイシャとトオン、二人まとめて後ろから抱き込んで床に倒れ込むように伏せた。
同時に、左腕に魔力で創り出した大楯で自分たちを守った。
盾の表面に金属質の鋭い音と、衝撃が繰り返し走る。何か刃物を投げつけられている。
「な、な、な、何っ!?」
すぐにユーグレンに起こされ、アイシャとトオンは彼の後ろに庇われた。
ユーグレンは大楯とともに、環から取り出した大剣を敵に向けて構えている。――敵!?
恐る恐るユーグレンの大きな身体の後ろから覗き込むと、そこにあった光景は。
神人ジューアは綿毛竜のユキノの胸元に庇われ。
そのユキノの周りには無数の剣が落ちている。魔力が満ちて密集した羽毛に弾かれたようだ。
そして、肩の辺りに剣先が突き刺さり、負傷しているルシウスの姿だった。
剣を持っているのは……
「ノーダ男爵!」
逃亡していた犯罪者のうち、主犯格の男だった。
これまで王都地下に、邪悪な古代生物の化石として埋まっていたものだ。
そして現在は、巨大な魚人の化け物から本来の人の姿に戻っている。
「あれ。魔法樹脂の中に入ったまま……だね?」
ルシウスが地下調査をしたとき、封入してそのままということだ。
とはいえカーナ姫の息子は既に死体。肉体の中に魂はない。
魔法樹脂の中の人は、まだ若い青年の姿をしている。年はアイシャと同じくらいか、もう少し上かぐらいだろう。
艶のある黒髪に白い肌。目の色は瞼が閉じていてわからない。ぞっとするほど美しい青年だ。
銀色のミスラル銀の鎧を身につけて、腹部には大穴が空いて向こう側が見えている。今にも血が滴りそうなほど生々しかった。
「し、死んでる……んだよな?」
「だ、だが、何やら魔法樹脂が振動してないか!?」
トオンとユーグレンは少しラスボスから離れて様子を窺っていた。怖いようで、互いに身を寄せ合って震えている。
アイシャはルシウスやジューアに並んで、カーナ姫の息子の亡骸を近くから覗き込んだ。
「本来の魂はもう抜けてますね。何か……うん、ルシウスさんが言ってたように外部から別の魂が入り込んでる。人間……ハイヒューマン……でもないわね。魔物の類いで間違いない」
何年もカーナ王国の聖女として魔物と戦い続けてきたアイシャの見立ては確かだ。
「で、でも、それ何か動いてない!?」
「死体に入った魔物の魂が、魔法樹脂を砕こうとしてるみたい」
「だが死体だからな。身動きできぬといったところか」
ルシウスが隣の姉を見ると、ジューアも頷いて弟と一緒にカーナ姫の息子に手を翳した。
「再封印だ。ついでに聖なる魔力を込めて、封入したまま魔物の魂を浄化してしまおう」
ルシウスの大きな手から、彼特有のネオンカラーに光る青い魔力が溢れ出し、魔法樹脂に染み込んでいった。
「助力します、ルシウスさん」
アイシャも魔法樹脂の上から手を翳した。腰回りに環が浮かび、光の円環にネオングリーンの魔力を帯びる。
「あ、来た来た」
トオンが嬉しげに呟いた。
ルシウスの聖なる魔力には松の重厚な芳香。
アイシャにはオレンジに似た柑橘系の爽やかな香りが出てくるのだ。
それらの香りに連動して、トオンとユーグレンの胸回りにも環が発現する。
香り自体が魔力なので、魔力のコントロールパネルにもなっている環が反応することはよくあることだった。
同じ場にいるだけなのに、魔力が満ちてくる。聖なる魔力持ちによる祥兆である。
「よし、ひとまず浄化完了。持ち運び……は大変なので一時的に環内のアイテムボックスに入れておこう」
そう言ってルシウスがカーナ姫の息子の亡骸を環に納め、「これでダンジョン踏破完了だ」と皆が安堵の息を吐いた次の瞬間。
突如として芳香が消失した。
次いで、ルシウス、アイシャ、それにトオンやユーグレンの環が光量を失って、発現停止し消えた。
「え、何これ」
突然の現象にトオンが首を傾げるより、ユーグレンの動きのほうが速かった。
「避けろ!」
ユーグレンはアイシャとトオン、二人まとめて後ろから抱き込んで床に倒れ込むように伏せた。
同時に、左腕に魔力で創り出した大楯で自分たちを守った。
盾の表面に金属質の鋭い音と、衝撃が繰り返し走る。何か刃物を投げつけられている。
「な、な、な、何っ!?」
すぐにユーグレンに起こされ、アイシャとトオンは彼の後ろに庇われた。
ユーグレンは大楯とともに、環から取り出した大剣を敵に向けて構えている。――敵!?
恐る恐るユーグレンの大きな身体の後ろから覗き込むと、そこにあった光景は。
神人ジューアは綿毛竜のユキノの胸元に庇われ。
そのユキノの周りには無数の剣が落ちている。魔力が満ちて密集した羽毛に弾かれたようだ。
そして、肩の辺りに剣先が突き刺さり、負傷しているルシウスの姿だった。
剣を持っているのは……
「ノーダ男爵!」
逃亡していた犯罪者のうち、主犯格の男だった。
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