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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
ドラゴンがあらわれた!
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ルシウス不在の理由が判明したなら、もう屋敷で待機している必要もない。
もう午後だったがこれからダンジョン探索を再開することにした。
とその前に、神人ジューアが綿毛竜たちにダンジョン探索の心得を教えていた。
「良いか、お前たち。これから行く場所はまだ設備が整っておらぬゆえ、その辺で粗相などしてはならぬ。もよおしたら清浄魔法で処理するように」
「ピュイッ(おっけーです!)」
ちなみに綿毛竜は草食で、しかも魔力の高い竜種のため糞は良い肥料や魔法薬の原料になる。
ルシウス邸では屋敷の外の竜舎で集めて薬師ギルドや魔道士ギルドに売却しているそうな。
清浄魔法は魔力持ちなら誰でも冒険者ギルドで初級を教えてもらえる一般的な魔法のひとつだ。
使用し続ければ中級までなら自動的にランクアップできる。
中級になると身体の清潔を保つだけでなく、体内の排泄物の処理も可能になる。
「ただ通常は三日が限度ね。身体に必要な栄養まで処理しちゃうから、やりすぎると体力を奪ってしまうの」
聖女アイシャ、経験者は語るだ。
清浄魔法が開発されて以降はダンジョンや、軍の駐屯地での衛生環境は劇的に向上した。
他人にも使えるからパーティーメンバーに魔力の低い者がいても問題ない。
「スタンピードのときは一週間連続で使ってたわ。クーツに婚約破棄されて追放されたときの私が弱ってたのはそのせいもあったかも」
体力や魔力はポーション頼みで、ほとんど食事も取っていなかった。
うぐ、と話を聞いていたトオンの喉が小さく呻くように鳴った。
その追放された直後のアイシャを保護したのが、宿屋のある古書店の店主トオンと宿泊客カズンだったわけで。
「そんな過酷な戦いを経て戻ってきた聖女様に、この国の王族は何て非道な真似をしやがったのか」
いい加減、出尽くしたと思っていたカーナ王家のクズエピソードはなかなか尽きない。
この話もそのうち新聞の〝聖女投稿〟に投稿しておこうと思った。
探索の準備を終えて、ルシウス邸の馬車で王城に向かった。綿毛竜たちは小型化してもらってそれぞれの膝の上だ。
王城内の庭園に着くなり、綿毛竜たちは我先にとダンジョン内に駆け込んでしまった。
「ピュイッ(いくぞベビーたち!)」
「えっ、ユキノ君、もふもふちゃんたちまで!?」
慌てて追いかけたアイシャたちが見たものとは。
「ピュイッ(待つがよい、冒険者たちよ)」
「「「「「ピュイッ(たちよー)」」」」」
【綿毛竜があらわれた!】
エントランスに設定した、入口からの階段を降りてすぐの広間の、次の空間に向かう回廊の前に綿毛竜たちが立ち塞がった。
中央にドドンと本来の巨体のユキノが。大きさはトオンの二階建ての古書店ほどある。
エントランスの天井付近まであった。
ユキノの前にはまだ幼い雛竜たちが五体。皆、自信ありげに胸を張って、ガーネットの大きな瞳でアイシャたちを睨みつけている。
雛竜が一体、アイシャたちに向かってきた。
まだ背中の翼が柔らかく小さいため、浮いてはいるが飛びかたがぎこちない。
「ギャー(かくごー!)」
小さいなりに爪と牙を剥き出しにしてきたので、トオンはぺしっと白い毛玉を叩き落とした。
「ピャッ」
ふわふわの毛玉ドラゴンはバウンドしながらユキノたちのところへ転がっていく。
「ピッピュイッ!(ふっ。こやつは我らの中でも最弱。これで勝った気になどなるなよ!)」
「「「「ピッピュイッ!(なるなよー!)」」」」
「………………かわいい。可愛いが過ぎるわ」
アイシャが感涙に咽んでいる。
ユキノだけならともかく、雛竜たちはルシウス邸の中や庭だけでは手狭なので遊びに来たということだろう。
もう午後だったがこれからダンジョン探索を再開することにした。
とその前に、神人ジューアが綿毛竜たちにダンジョン探索の心得を教えていた。
「良いか、お前たち。これから行く場所はまだ設備が整っておらぬゆえ、その辺で粗相などしてはならぬ。もよおしたら清浄魔法で処理するように」
「ピュイッ(おっけーです!)」
ちなみに綿毛竜は草食で、しかも魔力の高い竜種のため糞は良い肥料や魔法薬の原料になる。
ルシウス邸では屋敷の外の竜舎で集めて薬師ギルドや魔道士ギルドに売却しているそうな。
清浄魔法は魔力持ちなら誰でも冒険者ギルドで初級を教えてもらえる一般的な魔法のひとつだ。
使用し続ければ中級までなら自動的にランクアップできる。
中級になると身体の清潔を保つだけでなく、体内の排泄物の処理も可能になる。
「ただ通常は三日が限度ね。身体に必要な栄養まで処理しちゃうから、やりすぎると体力を奪ってしまうの」
聖女アイシャ、経験者は語るだ。
清浄魔法が開発されて以降はダンジョンや、軍の駐屯地での衛生環境は劇的に向上した。
他人にも使えるからパーティーメンバーに魔力の低い者がいても問題ない。
「スタンピードのときは一週間連続で使ってたわ。クーツに婚約破棄されて追放されたときの私が弱ってたのはそのせいもあったかも」
体力や魔力はポーション頼みで、ほとんど食事も取っていなかった。
うぐ、と話を聞いていたトオンの喉が小さく呻くように鳴った。
その追放された直後のアイシャを保護したのが、宿屋のある古書店の店主トオンと宿泊客カズンだったわけで。
「そんな過酷な戦いを経て戻ってきた聖女様に、この国の王族は何て非道な真似をしやがったのか」
いい加減、出尽くしたと思っていたカーナ王家のクズエピソードはなかなか尽きない。
この話もそのうち新聞の〝聖女投稿〟に投稿しておこうと思った。
探索の準備を終えて、ルシウス邸の馬車で王城に向かった。綿毛竜たちは小型化してもらってそれぞれの膝の上だ。
王城内の庭園に着くなり、綿毛竜たちは我先にとダンジョン内に駆け込んでしまった。
「ピュイッ(いくぞベビーたち!)」
「えっ、ユキノ君、もふもふちゃんたちまで!?」
慌てて追いかけたアイシャたちが見たものとは。
「ピュイッ(待つがよい、冒険者たちよ)」
「「「「「ピュイッ(たちよー)」」」」」
【綿毛竜があらわれた!】
エントランスに設定した、入口からの階段を降りてすぐの広間の、次の空間に向かう回廊の前に綿毛竜たちが立ち塞がった。
中央にドドンと本来の巨体のユキノが。大きさはトオンの二階建ての古書店ほどある。
エントランスの天井付近まであった。
ユキノの前にはまだ幼い雛竜たちが五体。皆、自信ありげに胸を張って、ガーネットの大きな瞳でアイシャたちを睨みつけている。
雛竜が一体、アイシャたちに向かってきた。
まだ背中の翼が柔らかく小さいため、浮いてはいるが飛びかたがぎこちない。
「ギャー(かくごー!)」
小さいなりに爪と牙を剥き出しにしてきたので、トオンはぺしっと白い毛玉を叩き落とした。
「ピャッ」
ふわふわの毛玉ドラゴンはバウンドしながらユキノたちのところへ転がっていく。
「ピッピュイッ!(ふっ。こやつは我らの中でも最弱。これで勝った気になどなるなよ!)」
「「「「ピッピュイッ!(なるなよー!)」」」」
「………………かわいい。可愛いが過ぎるわ」
アイシャが感涙に咽んでいる。
ユキノだけならともかく、雛竜たちはルシウス邸の中や庭だけでは手狭なので遊びに来たということだろう。
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